ヒロイン？ 玉の輿？ 興味ありませんわ！ お嬢様はお仕事がしたい様です。

幕間⑤

まさかのクラスメイト - グレスト視点 -

    それは、入学式の後の事。

    クラスでオリエンテーションを受け、その一環として自己紹介の時間がとられていた。……と言ってもせいぜい名前を言う位のもの。

    しかし、どんなビジネスをするにしろ、人の顔と名前はなるべく覚えていた方が良い。
    この実力主義の学校ではこの自己紹介一つ取ってもそこからどれだけ自分の力に出来るかの競争がある。

   「アークです、よろしくお願いします」

    ……うん。凄く見覚えのある顔だ。声も聞き覚えがある。でも、名前は違う――けど、それが偽名なんだろう事位は察する。僕は脳筋バカのアクアとは違うからね。

    に、しても……。
    ちらりとこちらを振り向いて、「しー」と口に人差し指を当てる姿は男ながら様になっていて綺麗な人だと同性の僕でも思う。

    まぁ、この場で彼の正体を声高にバラす様な真似はしない。
    だけど、今の僕はお嬢様の使用人でもあるからね。報連相は基本中の基本。こんな大事な話はちゃんとお嬢様に通しておかないと。

    その後。あのバカ王子とその側近候補がやらかした話をお嬢様から聞かされて。
    僕は本気で「ノア様がお嬢様の婚約者なら良かったのに」と思ってしまった。