唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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私の従者が可愛すぎる。

お父様へのプレゼンテーション開始です。

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    お父様、前回のお祖父様へのお願いの件もそうだったけど、やはりやり手の商人と言うべきか、手配の類いはとにかく早い。

    お願いした日の昼食の席で、お父様から早速紹介していただける商会の話があった。

    「ウチと直接の商取引は無いが、良質な商品を取り揃え良心的な値で売ると評判の商会だ。そこが経営する店舗は土日も営業している。大量発注をかけるなら直接商会に話を通す必要があるが、しばらくは店で用は足りるだろう。職休めの後で行って来るといい」
    お母様も糸の買い置きが心もとないそうで、一緒に行って下さるらしい。

    「そのお店というのは遠いのですか?」
    出掛けようと玄関を出れば、馬車の支度が整えられていて。
    「商業ギルドの近くだから遠くはないけれど、アンリの足だとちょっと距離があるわね。それに帰りは荷物もあるし」
    前回と違ってお父様が居ないから、普通に座席に座ったけど……。
    今、決めた。すぐには予算的に無理だけど、可及的速やかに揺れない・お尻の痛くならない馬車を作って売りまくろう。
    お貴族様必須アイテムだから、間違い無く売れる、儲かる。

    ……。
    まあ、その為にも今はお父様の審査に合格しなければ……!

    と、言うわけでやって来ました手芸店。
    本当に商業ギルド前の広場のすぐ向こうにあったよ。

    ちなみに商業ギルドの建物は、職人ギルドとは対照的なシンプルでシュッとしたお洒落なデザイン。
    円柱型のビルの四回部分までの表側半分は総ガラス張り。天辺には乾電池の+極の凸部の様な五階部分は階下に比べて二回り以上小さく作られ、屋上テラスは緑が溢れる。

    まあ今肝心なのはギルドではなく店。買い出しをしなければ。
    色とりどりの生地や糸を見てると楽しくて、何時間でも居られそうに思うけど、今日ばかりはさっさと買って帰って作業がしたい。

    必要な物を店員に言って揃えて貰う。
    総額5万リル。
    単位の名前は円ではないし、貨幣も金貨や銀貨だけど、そこは乙女ゲームの世界。
    鉄貨-1リル
    銅貨-10リル 
    銀貨-100リル 
    金貨-1000リル
    白金貨-10000リル
    とまあ日本の通貨と似た感じになっている。
    ……ゲームでもお小遣い制で月々収入が得られて買い物する設定だったからね。
    まあ覚えやすく計算も楽だからありがたいし。

    色違いのフェルト生地と無地の布、ゴム紐と刺繍糸を買えるだけ。

    ……結果、帰りの馬車の私の席が侵食され、お母様の膝に座ることになった。
    そうして判明した事実。
    お母様は着痩せするタイプだった様で……。ご立派なメロンの持ち主ですた。メロンは凶器!
    でも、私も将来メロンの持ち主になれるかも……。
    うふ、ふふふふふ。
    絶対奴には触れさせないから。

    こうして素材を手に入れた私は早速作業に取りかかった。

    まずはゴム紐。
    色違いのゴムを取り合わせを考えより分け、相性の良い色を組み合わせて編み、輪にする。
    ミサンガの要領だけど、長さは髪ゴムにするのに丁度良いサイズで、色違い、模様違いを数作り。
    また組紐を結び合わせ、花の飾りをデザインと色を変えて作り、先に作った髪ゴムと合わせる。

    ゴム紐は1mで100リル。大体1本200リルで売れば十分に利益が出る。
    ゴムは消耗品だからいずれ新しいのが必要になるはず。

    更についで買いを狙って壁掛け式の小物入れも作る。
    実際売るときはポケットの幾つかに商品の髪ゴムを入れて見せる形で商品を並べた横で売るのだ。
    沢山買っても置き場に困ることはありませんよ、という体で。
    ――という戦略を企画書に纏める。

    更に髪ゴム用に作った物より長めに作った物に合わせるブックカバーを作る。
    基本無地の色違いの布を使い、フェルトや刺繍で装飾を施す。
    これと合わせて栞を買って貰うのだ。
    こちらは髪ゴムに比べれば消耗率は低いけど、色やデザインの豊富さの演出にはなる。
    少し値段設定を高めにして、相対的に髪ゴムを安く見せる作戦だ。
    これも企画書にしっかり明記する。

    企画書以外の作業はどれも前世で何度も作り慣れている物だったけど、流石に数を揃えるにはきっちり一日がかり。でも頑張った!

    私はその頑張りを結果に繋げるべく、お父様本丸執務室に乗り込んだ。
    いざ、たのもー!
    ……。コホン。
    うん、取り敢えず一度落ち着いて深呼吸。

    「お父様、今お時間よろしいですか?」
    「アンリかい?    良いよ、入りなさい」
    「お父様、例の商品見本と企画書をお持ちしました。ご確認をお願いしますわ」

    大量の本が詰め込まれた壁一面の本棚を背景に、大きな執務机に向かうお父様の前に、色のグラデーションに気を使いながら作品を並べ、企画書を直接手渡す。

    「……アンリ、これは本当に昨日の今日で君が作った物なのか?」
    「はい、間違いなく昨日お母様と買いに行った道具と材料のみで作りました」

    お父様はしばらく書類と机上の品とを見比べて、大きなため息を吐きながら椅子の背もたれに寄りかかり脱力した。

    「商品の――作品の出来は申し分無い。露天で売るのに丁度良い品質で、しかもこのような細工は私も初めて見た」
    天井を仰ぎ見たまま唸るお父様。
    「企画書の方は私から見ればまだまだ甘い部分はあるが、企画会議の叩き台としてなら十分使える」
    お父様は少し困った様な顔で私を見下ろした。
    「全く、この歳でウチの見習い上がりの新人より使えるとはね。他所にやるのが惜しくてたまらなくなるじゃないか」

    お父様は机を離れ、私の前に膝を付いた。
    ぐりぐりと少し乱暴な位に頭を撫で回される。
    「お、お父様……?」
    「アンリ、明日は先生達との顔合わせだけで、午後はお休みだ。お昼を食べたらレイフレッド君を迎えに行ってやると良い」
    「お父様……!」
    嬉しさに思わず頬が緩む。
    「それとアンリ、この髪飾りを幾つかとブックカバーと栞のセット一つ、お父様に売ってくれるかい?    後でお母様のプレゼントしたくてね」
    「勿論良いですよ!    お母様に使っていただけたら良い宣伝になります!」

    にやけそうなのを堪えるのに精一杯で、その時の私はお父様の複雑な表情に気づくことが出来なかった。

    「来週までには手配を済ませよう」
    そう言ったお父様の笑顔だけを見て喜んでいた。

    精神年齢こそ二十歳を過ぎ大人にカテゴライズされるとは言え、世間一般から見ればまだまだ「青い」と言われる事もしばしばある未熟なものだと、私はすっかり忘れていた。
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