唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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雌伏の時

獣人族皇帝サマから指名依頼入りました

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    「よーし、んじゃ今日からお前ら銅級Dランクな!」
    ――冒険者ギルドに登録して半年少々。めでたく超ベテランランクに最年少記録を大幅に縮めて出世致しました……。
    「今回の依頼は一応冒険者ギルドからの指名依頼って体裁にゃなってるが、流石に身内の依頼だけじゃ銀級に上げてはやれねぇからな」
    わはははは、と豪快に笑いながら機嫌良く私達の肩をバンバン叩くギルマス。

    「いやー、どこでどうしてお前達の名を知ったか知らんが、とんでもないお人から依頼が入ったぜ。勿論、指名依頼だ。これこなしたらすぐ銀級Cランクに上げてやるからな!」
    その、依頼主の名は。
    「獣人族の皇帝様直々のご依頼だ。気ィ引き締めてかかれやぁ」
    えーと。私、一応人間族のいち平民でしかないんですけど。
    魔族といい獣人族といい、皇帝サマともあろう御方がこんな小娘に何の御用デスのん!
    「それで……私達は何をすればよろしいので……?」
    「――森に棲息する魔物と、有害な獣の討伐、約三ヶ月の長期依頼だ」
    場所は、各帝国の国境が交差する緩衝地帯近くの無人の森だ。
    「近く開拓予定の地らしいが、まあその調査の前の露払いの依頼だな」
    つまりは。
    三ヶ月丸々、無人の森で人目も気にせず好き放だ――げふん、極力自然の恵みには被害を出さない方向で暴れられる、修行し放題のステキ依頼!
    「受けます、その話受けますよ!」
    いぇーい!    今度こそ存分にストレス解消してやるぞ!

    ……てな訳で。
    誰の目も気にせず済む今回はまた暇を見ては馬車を進める日々。
    期限は三ヶ月貰ったけど、目的地に着くまでにほぼ一月費やしてしまう上、報告は獣人族の皇都の支部へと指定された以上そこへの移動時間も含めると、実質一月半程で片付けなくてはならない。
    「フロス、リルフィ、期待してるわよ!」
    「ご主人様、フロスにお任せ下さい!」
    「グゥワッ」
    そうして辿り着いた地は。
    「凄い……見事な森ね」
    実のなる木も多く、日差しも多く入る浅い森には花が咲き、貴重な薬草も種類も数も豊富に生え。
    肥えた土は緑と枯れ葉に空きなく埋もれる。
    「採集もはかどりそうね」
    そんな豊かな森でぬくぬく育った大柄な獣と魔物。
    「――さあ、覚悟なさい!」
    筋肉の塊みたいな身体にいくら通常の矢を撃ちこんだところで刺が刺さった程度のダメージしか期待できない。
    ここは魔法矢のバリエーションを増やす良い機会だ。
    場所柄炎系の魔術はまたご法度なのだけはちょっぴり不満だけど。
    ゴブリンにオーク、オーガ。ウルフにボアにアイアンベア。
    スネークにスパイダーにバット。
    おおよそ定番のモンスターは大抵の種類が揃うここは、たった一月半でも得るものは大きい。
    レイフレッドとの連携もずいぶんとツーカーの利くスムーズなものになっていく。
    こうなると、本当に楽しくなってくる。
    いや、これまでが楽しくなかった訳じゃないけどね?
    前世では本当にスポーツもアウトドアは全滅だったから、体を動かすのが楽しいこの感覚は初めてで。
    何よりレイフレッドとのコンビネーションが決まる爽快さは他では味わえない喜びで溢れていて。
    一月半なんて、あっという間に過ぎ去っていた。
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