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目指せ勝ち組!~君と歩む花道~
研修 ~トラブル発生~
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翌朝。いつもの習慣から早々に目覚めた私は、朝食の調理にかかるべく起き出し、魔法で出した水で顔を洗った。
「お早うございます」
いつも私より早く起きるレイフレッドがタオルを差し出してくれる。
「お早う、レイフレッド。タオルありがと」
夕べ一度消したかまどに火を入れ直し、昨夜一晩中焚いていたたき火はしっかり消火する。……この確認を怠ると、山火事からスタンピート、果ては山の実りが失われ、この付近の町や村の人々が困り果てる事態となりうるのだから、いい加減な事はできない。
あ、ちなみに朝食は簡易保存食の干し肉で旨味と塩気をプラスしたおじやだ。
他班では米を炊いておにぎりにしたりしてるけど、夏とはいえ朝は涼しいからね。体を温められるものの方が良い。
「うわ……、またあの班の飯だけ旨そうなんだが……」
と、周囲からはまた羨ましそうなしせんを感じるけれど、既に昨日大盤振る舞いをしてしまったからね。甘やかしすぎはよくないし、朝御飯くらいは自分でなんとかなさいな! と、追い返す。
まあ、アドバイスくらいならいいか、と支給された食材で割りと手軽にできるアレンジ料理を教えたりはしたけど、手までは貸さないし、私達のご飯も分けてあげたりはしない。
ここに居るのは成績最優秀のSクラスメンバーだ。夏休みに入ってこっち、研修の参加者を監督しながら共に居た生徒会メンバーを基準に考えて、アドバイスさえ与えれば充分、後は自分たちでどうとでも出きるだろう。
……仮に多少失敗したとしてもそれも経験。私も前世の遠足でやった飯ごう炊さんで作った焼おにぎり、醤油塗りすぎて焦がしちゃった事くらいあるし。それを友達とからかい合いながら食べた記憶は……まぁ良い思い出だし。
だけど。
彼らは確かに成績優秀だけど、所詮それは机の上、ペーパーテスト上の成果に過ぎない事。
それ故の昨日からのままならなさを突きつけられた者の心理。
更に貴族優位で平民が見下されて当たり前の国で、私という平民が注目された事。
それらが引き起こす事態を予見出来なかったのは、私が前世まで含めて庶民感覚のままで居すぎたせいだったのか。……将来に向けて貴族としてのお勉強もしているつもりだったのに、私自身もただ机の上で勉強した知識だけで分かった気になって、実感が伴っていなかったのかもしれない、と。
あとで考えたら、多分そういう事だったんだろう。
だけど、その時は大丈夫だろうと油断していた。
……いや、念のため警戒はしていたけれど、その対象はあくまで魔物や、あのバカ共のように故意でなくともうっかり迷ったりはぐれたりする者が居ないかという方向でのものだったから。
「この……っ、平民風情が!」
不意に至近距離から放たれた火魔法に対して、つい咄嗟にいつも通りの対処を――手加減など思い付く前に、私は水と土の混合魔法を放っていた。
放った後で目に入った光景を理解し、私は血の気が引いていく音を聞いた。
「お早うございます」
いつも私より早く起きるレイフレッドがタオルを差し出してくれる。
「お早う、レイフレッド。タオルありがと」
夕べ一度消したかまどに火を入れ直し、昨夜一晩中焚いていたたき火はしっかり消火する。……この確認を怠ると、山火事からスタンピート、果ては山の実りが失われ、この付近の町や村の人々が困り果てる事態となりうるのだから、いい加減な事はできない。
あ、ちなみに朝食は簡易保存食の干し肉で旨味と塩気をプラスしたおじやだ。
他班では米を炊いておにぎりにしたりしてるけど、夏とはいえ朝は涼しいからね。体を温められるものの方が良い。
「うわ……、またあの班の飯だけ旨そうなんだが……」
と、周囲からはまた羨ましそうなしせんを感じるけれど、既に昨日大盤振る舞いをしてしまったからね。甘やかしすぎはよくないし、朝御飯くらいは自分でなんとかなさいな! と、追い返す。
まあ、アドバイスくらいならいいか、と支給された食材で割りと手軽にできるアレンジ料理を教えたりはしたけど、手までは貸さないし、私達のご飯も分けてあげたりはしない。
ここに居るのは成績最優秀のSクラスメンバーだ。夏休みに入ってこっち、研修の参加者を監督しながら共に居た生徒会メンバーを基準に考えて、アドバイスさえ与えれば充分、後は自分たちでどうとでも出きるだろう。
……仮に多少失敗したとしてもそれも経験。私も前世の遠足でやった飯ごう炊さんで作った焼おにぎり、醤油塗りすぎて焦がしちゃった事くらいあるし。それを友達とからかい合いながら食べた記憶は……まぁ良い思い出だし。
だけど。
彼らは確かに成績優秀だけど、所詮それは机の上、ペーパーテスト上の成果に過ぎない事。
それ故の昨日からのままならなさを突きつけられた者の心理。
更に貴族優位で平民が見下されて当たり前の国で、私という平民が注目された事。
それらが引き起こす事態を予見出来なかったのは、私が前世まで含めて庶民感覚のままで居すぎたせいだったのか。……将来に向けて貴族としてのお勉強もしているつもりだったのに、私自身もただ机の上で勉強した知識だけで分かった気になって、実感が伴っていなかったのかもしれない、と。
あとで考えたら、多分そういう事だったんだろう。
だけど、その時は大丈夫だろうと油断していた。
……いや、念のため警戒はしていたけれど、その対象はあくまで魔物や、あのバカ共のように故意でなくともうっかり迷ったりはぐれたりする者が居ないかという方向でのものだったから。
「この……っ、平民風情が!」
不意に至近距離から放たれた火魔法に対して、つい咄嗟にいつも通りの対処を――手加減など思い付く前に、私は水と土の混合魔法を放っていた。
放った後で目に入った光景を理解し、私は血の気が引いていく音を聞いた。
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