唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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領主のお仕事

一つの区切り

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    カイルの鑑定式も終わり、家庭教師の手配もすんだ頃。城に招待状が届いた。……差出人はマティス様。勿論用件は……ビルの処刑日時が正式に決定したとの通知とその場への招待だ。
    私とレイフレッドは二人でその前日にシレイド入りをした。
    「やあ。今回はあまり愉快でないイベントなのが残念だが……」
    「いえ。ご招待いただき感謝致します」
    「なら、良い。……取り調べたところ、随分とケチな――けれど胸の悪くなるような事を多数やらかしていたらしい。詳しい罪状は明日処刑の前に陛下から発表される」
    「そう……ですか」
    「我が国どころかヒューリア帝国では保証しきれん所にばかり被害者が居てな。……法整備の見直しの必要性を陛下と再確認したところだ」
    ……そう言えば、以前捨て駒にした奴隷は皆、獣人や魔族だったっけ。
   「必要になったらいつでもご連絡下さい。……その考え方は、三国の友好を願う我が領地としても是非後押しをしたいと思うので」
   「それはありがたいな。……では、私はここで。明日までゆるりと休んでくれ」
   「はい」
    レイフレッドと同じ客間に通された私は、さっさと着替えて寝仕度を整える。
   「ねぇ、レイフレッド。あの男、ビルを取り返しに来たりしないかしら」
   「……どうでしょうね。よほどアレが有能だというなら分かりませんが、元々人を道具のように扱って何とも思わないような奴ですから。ただ……それが俺達のダメージになると思えば、やるかもしれない。――正直予想がつきません」
   「……やっぱりそうか」
   「でも。もしも来たなら今度こそきっちり捕まえてやれば良いんですよ」
    レイはそう言って私に噛みついた。吸血を済ませると、口元を手で拭い、笑う。
   「――今度は失敗しません」
   「ん。そだね」
    ――そして、夜が明けた翌日。
    城の前の広場にギロチンが持ち出され、騎士と役人とがそれを取り囲む。
    城のバルコニーからそれを見下ろす陛下。
    ……学生時代の少年らしさはすっかり消え失せ、彼の父に良く似た面差しになっていた。
    その彼が一枚の紙をかざし、読み上げる。
    王族らしいよく通る声が響き、ビルの罪状をつらつらと述べていく。
    窃盗、強盗、強姦、人身売買に薬物取引。それらをまんべんなく、何度もやらかしてきた小物ながら十分悪辣な犯罪者に成り果てていた。
   「よって、この者を極刑に処す!」
    その声を合図に、ビルはギロチンにかけられる。
   「……処刑方法がギロチンなのは……温情なのかしらね?」
   「温情、ですか……?」
   「見た目は派手で残虐に見えるけど、受刑者的には苦しまずに死ねる楽な処刑方法なのよ、アレ」
   「……どうでしょうね。首は後程さらされるそうですし、見た目を重視したんでは?」
    陛下の手が上がるのを見ながらレイフレッドは言った。
    ビルの悲鳴が聞こえ――
    ロープが、切られた。……刃が落ちる音、首が飛ぶ音と共に声が途切れ、場に血の臭いが漂う。
    ……私の元婚約者が、今、死んだ。
   あの男は来そうにない。
   「終わりましたね」
   「……そうね」
    首の無くなった死体を騎士達が片付ける様を見下ろしながら、一つの区切りがついたのを実感したのだった。
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