屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜

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第二章

パエリアが繋いだ縁

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 「これは……、元々軍などで多くの調理をする為にと用意した品が、この様に使われるとは」

 次から次へと客がやって来ててんてこ舞いしている中、これまた裕福そうな身なりの客がやって来た。
 その段階では、他の客と変わらない、その他大勢の中の一人だったのだけど。

 ふとそんな台詞が私の耳に入って来る。
 どうやらこのパエリアを作っているこの鍋を購入した店の旦那らしい。

 話題の店が、自分の店で扱う品を使っていると聞いて見に来たらしい。

 「元々質より量を求められ作った商品だったが、使い様によってはこの様に華やかな料理を作る事も可能なのだな」

 ……鍋が巨大な分、体力は必要だけど。

 レシピとしてはそんなに難しい料理じゃない。
 材料も、こだわれば何処までも凝れる料理だけど、最悪アサリとか、最悪鶏肉なんかでも作れないことはない。
 基本使う調味料も、サフランや塩コショウにワインくらい。

 それでいて、サフランの黄色が華やかで、具材によってはさらに彩り豊かになるパエリアは、パーティー料理としても映える見栄えの料理。
 それを大鍋で作れば迫力もあるだろう。

 このサイズの鍋を扱っているのは、この港町では彼の店しかなかったからな……。

 「この様なパフォーマンスをすれば、鍋の売上げも上がりそうです。そのレシピ、私に売ってはいただけませんか?」

 へぇ、儲かってそうな大商人ぽいのに、礼儀正しい。
 小物の成金商人でない、大物の器を感じる人だ。

 けど……残念。

 「ごめんなさい、ここの領主の伯爵様にレシピの提供を求められているの。だから、もし欲しいなら伯爵様と交渉をお願いします」

 「……? そのレシピ、貴女が考案したのでは?」
 「そうですが。すでに権利は伯爵様がお持ちで……」
 「ん? つまり専売の権利ごとお譲りに……?」
 「半ば、命令まがいの依頼でしたが、多分そういう意味なのかと。私達もこのレシピで料理できるのは、この港にいるうちだけなので」
 「……そう、ですか。では、せめて交渉の参考にこのレシピの売価をお教え願えませんか? それ次第で交渉の価格付けなど考えたく……」
 「えーと、まだ今日の売上が確定していないので……なんとも……」

 「は?」
 「その、今日の売上金以外の報酬はありません」

 ついでに詳しく伯爵様との契約をお話すると。
 「……つまり、伯爵様は我らの様な御用商人と同じ感覚で、貴女方に依頼したと。そういう事ですか」

 「……私達のようなしがない行商人には、大商人と呼ばれる程の方々の取引など関わる事も御座いませんので、定かでは御座いませんが。少なくとも、経営として厳しいと言わざるを得ないのは間違いございませんね」
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