巻き込まれ召喚された賢者は追放メンツでパーティー組んで旅をする。

彩世幻夜

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ざまぁのその後

16-7 吸血鬼になりました?

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    「――ああ、これはもう良いだろう。これ以上の投薬はもう要らんから、次の段階へ進め」
    三日おきの投薬の苦痛がだいぶ和らぎ、上顎の犬歯(勿論永久歯)が途中乳歯のようにポロリと抜けて、新しくまた生えてきたそれが以前のより鋭さと丈夫さを増したけど、ステータスアップの方は少しずつ少しずつの変化とあって、これまで冒険者として鍛えてきた延長線上の成長との違いがよく分からなかった。
    いや、以前に比べて確実に上がっている自覚はあるんだけどね?
    人間より優れた――って言うけど、人間には絶対不可能な域のレベルなのかって言われると……違うんだよね。
    確かに一般的な普通の人間よりかは間違いなく優れている。けど、ギネス記録に残るような超人レベルの人間なら出来るんじゃない?    ――そのレベルの事を当たり前に一般的な吸血鬼はこなせる。
    既に冒険者として、普通の女子高生じゃあり得ない魔物退治なんかを当たり前にこなせるようになってた私にとっては大した変化の内にカウントされない程度の違いだったから。
    「え?    もういいの?」
     と、魔王陛下の見立てにびっくりしてしまった。
     いや、式までもうそう間もないし間に合って良かったという安堵はあったけどね。
    因みにそれは、また陛下が仕事中のイマルの部屋に押し掛けてきた時に交わした会話である。ええ、雑談ついでにさらりと言われましたよ……。
   「ああ。……多分、イマルに求愛かませば嫌でも実感できるだろうさ」
    ニヤニヤ楽しそうに笑う陛下を睨み付けるイマルは苦虫を噛み潰したような顔でため息を吐いた。
    「はぁ。その辺察しているなら、今日は勿論いつぞやの様に長居はせず今すぐ部屋へお戻りになられるのですよね?」
    「さぁて。それこそ別に今日でなくとも……最悪式の前日とかでも間に合わん事ではないしなぁ」
    チラチラとイマルの執務室の戸棚を見やりながら陛下が悪い笑みを浮かべる。
    ここでイマルの仕事を手伝う私はそこに何があるのかもう知っている。
    ……冒険の旅の最中は街の宿に泊まって酒場で食事をする時くらいしか呑んでなかったから知らなかったけど、イマルは結構お酒好きな人だった。
    ただし、安酒をガブガブ飲みたがる酔いどれタイプの酒好きではなく、良い酒を楽しみたい人。
    居酒屋でワイワイ飲み食いするんじゃなく、バーでバーテンダーおすすめの酒とつまみを一人でのんびり楽しむのが好きらしい。
    ……冒険中に立ち寄るのはいつも冒険者御用達の騒がしくて質より量!    ってな店ばかりだったし、イマルもそんなに量を呑む事もなかったから。
    あの中に仕舞われてるのはお高いお酒ばかりなんだけど、私も何度かご相伴に預からせて貰ってる。
    陛下はそれをご所望らしい。
    こういう事は珍しくないらしく、イマルは機嫌を損ねつつも、今日は酒を質に陛下を帰す事を優先したらしい。
    舌打ちしながら瓶ごと一本酒を渡す。
    ――大量の書類と一緒に。
  「さて、では残りの仕事は陛下が請け負ってくれるそうだからな。とっとと帰るぞ」
   「あ、おいこら待て!」
    慌てる陛下を華麗に無視したイマルはさっさと侯爵家の馬車に乗り込み、御者に命じて帰途についたのだった。
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