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2章 仕事仲間が出来ました。

第5話 まずはオリエンテーションからですよね。

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 「それでは改めて、今日からよろしくお願いします」

 翌朝。一先ず落ち着きはしたものの、まだ良く分かっていない様子の彼、ユージーン君を連れて畑を案内する。

 学校にしろ仕事場にしろ、最初はやっぱりオリエンテーションからだよね。
 それに費やす暇さえ惜しむブラックな職場にするつもりはありませんからね!
 目指す基本方針は長閑なスローライフなんだから。

 「こちらが、春の畑になります。アグリ様のお力で、常に春の陽気となっておりますので、春の間のみに育つ作物を植えてあります。
 他に夏の陽気を保つ夏の畑、同じく秋の畑、冬の畑があります」

 「この、甘酸っぱい匂いは……?」
 「はい、いちごですね。……味見してみますか? うん、これなんか赤く熟して食べ頃ですよ」

 本当は少し冷やしてから食べた方が良いのだけど、採れたての良さというのもあるからね。

 「なっ、これが植物の実だと……? このように甘い果実は初めて食べた」

 一口で食べられるサイズのいちごを口に入れ、咀嚼した途端ユージーン君は驚愕に目を見張った。
 すぐに飲み込んでしまったら勿体無いとばかりに随分長い事咀嚼した後、名残惜しそうに飲み込み、ションボリする。

 「あの、もう一個食べます? それとも夏の畑や秋の畑で別の果物の味見をしますか?」
 果物の種類ならやはり夏や秋の畑の方が多い。
 果樹はまだ実を付ける段階ではないので、桃やらブドウやらはまだ出せないけど。

 夏の畑に行く前に家に寄って包丁を持ち出してたら、何故だかユージーンに若干怯えられたんだけど……何でだ。
 彼から見たら私は異世界の、とはいえただの人間、それも戦う術など知らない小娘だというのに。

 しかし、夏の畑でメロンとパイナップルを味見させたら……泣いた。特にメロンに号泣してた。
 なぜ砂糖もかけてないのに、果実のみでこんなに甘いんだ、と。

 まぁ、ね。日本の果物は美味しいけど、お祖母ちゃんに聞くと昔はここまで甘い果物なんかなかったって言うもんね。

 アグリ様に聞くこの世界の環境を考えると、異世界あるあるで砂糖が高いって、その環境すら贅沢に思えそうな程ひっ迫してそうだもんね。
 感動に打ち震えるのも仕方ないか。

 普段日本のスーパーの安売り果物しか口にしない私が、いつだったか天下の千疋屋の果物を口にする機会がたまたまあって、その甘さに感動した事を思い出す。
 ああ、あれは普段食べてる果物とはまるで違う味がした。

 その数倍の感動となれば……まあ、泣くのも分からなくもないか。
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