16 / 66
旅立ち
魔法?
しおりを挟む
……夜が明けて、朝が来る。――朝、のはずだ。
少なくとも真夜中よりは明るい。
けど、吹雪くばかりの外の景色は薄暗く、けれど雪の白が目に痛いくらいに眩しい。
ピュウピュウとすきま風が絶えず吹き荒れる室内で、暖を取れるのが囲炉裏の火だけって……。
おしんか!
……え。今時の若い子はおしんを知らない? ――まあ、そうよね。私だってじっくり観たことは無いもの。
ならネロでも……シンデレラでもいいわ。
「……い……い、わね……。そろそろ……いいがんじ……に……死ねそうよ」
夜。
途中の山小屋みたいなとこで一晩夜明かしさせられたけど、寒すぎて逆に寝れない。……眠くなってきたらヤバいんだろうけどね。
「ああ、面倒臭ぇな。服なんざ王都まで行かなきゃ手に入んねぇぞ」
「……ぞの、おうどまでなんにぢががるの」
「距離で言ったら一週間以上かかるぜ? 行かねぇけどよ」
「――ですが、本当にここで死なれてしまっては困った事になりますよ?」
「むぅ、民に頼むにも、流石に一から頼むとなれば一日二日では足りぬでしょうからなぁ……」
「それじゃ目的地に着くのいつになっちゃうのさぁ」
「――ハァ、仕方ねぇ。面倒臭ぇが世に腹は代えられねぇ」
囲炉裏の回りに座り込んでいた和貴が不意に立ち上がり、私に近付いてくる。
「ほれ、口開けろ」
……警戒対象からのそんな言葉に私が従うと思――
「ほれ」
くっ、鼻を摘まむとか卑怯な!
悔しいけど体が凍えて強ばって上手く動かない。
呼吸のためにやむなく開けた口に、ぽいとその人差し指に灯った火の玉の塊を口の中へと放り込まれた。
「!!??」
体は動かなくても、頭ははっきりしてるから。
――問い。
口に火の玉含んだらどうなりますか?
――答え。
口内大火傷、しばらく口から物を食べられなくなる。……で、この世界の医療技術に点滴って選択肢、ある?
当然パニックになった私が暴れようとするも、動きの鈍い私からさっさと距離をとった野郎め、こんちくしょう、何しやがる……!
――ん?
熱くも痛くもない?
てゆーか……あれ、震えが止まった?
「どうやら効いた様だな」
芯まで凍っていた体の中心に熱源が生まれ、そこから血管を通して全身に熱が回る。
「炎を操る俺の術だ」
得意気に微笑む和貴。
「んじゃ、出発すんぞ」
流石に強ばった体まで即座には解けない。
それを知ってか知らずか、奴は荷物の様に私を小脇に抱えて吹雪く表へ連れ出し馬車へと放り込んだ。
――寒いはずなのに、暖かい。
……って。これ、奴の力と言ってたな? 代償寄越せとか言われるのか?
猜疑心たっぷりの目を和貴に向ければ馬鹿にしたように鼻で笑われた。
「この程度の術で一々吸血を必要としてたらいくら血税払って貰っても足りねーっつの」
今日は和貴が中の人役らしく、一緒に馬車に乗り込んでくる。
「それとも――いざという時の予行練習に一回吸われてみるか?」
「お断りよ! 決まってるでしょ!」
「……俺、割りと人気あるんだけどなー。痛くしないぜ?」
「い、や、よ!」
「はあ、お前みたいに気が強くて自分の意見を曲げねぇ女は初めてだよ」
「ああ、そう。私、男という生き物全般大嫌いだけど、あんたみたいなタイプの男は特に嫌いなのよ」
あいつに……あの暴君がそういうヤツで……似てるから。
ようやく全身に熱が行き渡り、体の強ばりも解けてきた頃。
「――来ましたね」
御者席に居た嶺仙が、鋭い警告を発した。
少なくとも真夜中よりは明るい。
けど、吹雪くばかりの外の景色は薄暗く、けれど雪の白が目に痛いくらいに眩しい。
ピュウピュウとすきま風が絶えず吹き荒れる室内で、暖を取れるのが囲炉裏の火だけって……。
おしんか!
……え。今時の若い子はおしんを知らない? ――まあ、そうよね。私だってじっくり観たことは無いもの。
ならネロでも……シンデレラでもいいわ。
「……い……い、わね……。そろそろ……いいがんじ……に……死ねそうよ」
夜。
途中の山小屋みたいなとこで一晩夜明かしさせられたけど、寒すぎて逆に寝れない。……眠くなってきたらヤバいんだろうけどね。
「ああ、面倒臭ぇな。服なんざ王都まで行かなきゃ手に入んねぇぞ」
「……ぞの、おうどまでなんにぢががるの」
「距離で言ったら一週間以上かかるぜ? 行かねぇけどよ」
「――ですが、本当にここで死なれてしまっては困った事になりますよ?」
「むぅ、民に頼むにも、流石に一から頼むとなれば一日二日では足りぬでしょうからなぁ……」
「それじゃ目的地に着くのいつになっちゃうのさぁ」
「――ハァ、仕方ねぇ。面倒臭ぇが世に腹は代えられねぇ」
囲炉裏の回りに座り込んでいた和貴が不意に立ち上がり、私に近付いてくる。
「ほれ、口開けろ」
……警戒対象からのそんな言葉に私が従うと思――
「ほれ」
くっ、鼻を摘まむとか卑怯な!
悔しいけど体が凍えて強ばって上手く動かない。
呼吸のためにやむなく開けた口に、ぽいとその人差し指に灯った火の玉の塊を口の中へと放り込まれた。
「!!??」
体は動かなくても、頭ははっきりしてるから。
――問い。
口に火の玉含んだらどうなりますか?
――答え。
口内大火傷、しばらく口から物を食べられなくなる。……で、この世界の医療技術に点滴って選択肢、ある?
当然パニックになった私が暴れようとするも、動きの鈍い私からさっさと距離をとった野郎め、こんちくしょう、何しやがる……!
――ん?
熱くも痛くもない?
てゆーか……あれ、震えが止まった?
「どうやら効いた様だな」
芯まで凍っていた体の中心に熱源が生まれ、そこから血管を通して全身に熱が回る。
「炎を操る俺の術だ」
得意気に微笑む和貴。
「んじゃ、出発すんぞ」
流石に強ばった体まで即座には解けない。
それを知ってか知らずか、奴は荷物の様に私を小脇に抱えて吹雪く表へ連れ出し馬車へと放り込んだ。
――寒いはずなのに、暖かい。
……って。これ、奴の力と言ってたな? 代償寄越せとか言われるのか?
猜疑心たっぷりの目を和貴に向ければ馬鹿にしたように鼻で笑われた。
「この程度の術で一々吸血を必要としてたらいくら血税払って貰っても足りねーっつの」
今日は和貴が中の人役らしく、一緒に馬車に乗り込んでくる。
「それとも――いざという時の予行練習に一回吸われてみるか?」
「お断りよ! 決まってるでしょ!」
「……俺、割りと人気あるんだけどなー。痛くしないぜ?」
「い、や、よ!」
「はあ、お前みたいに気が強くて自分の意見を曲げねぇ女は初めてだよ」
「ああ、そう。私、男という生き物全般大嫌いだけど、あんたみたいなタイプの男は特に嫌いなのよ」
あいつに……あの暴君がそういうヤツで……似てるから。
ようやく全身に熱が行き渡り、体の強ばりも解けてきた頃。
「――来ましたね」
御者席に居た嶺仙が、鋭い警告を発した。
3
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~
咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」
卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。
しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。
「これで好きな料理が作れる!」
ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。
冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!?
レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。
「君の料理なしでは生きられない」
「一生そばにいてくれ」
と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……?
一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです!
美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる