ざまぁ系ヒロインに転生したけど、悪役令嬢と仲良くなったので、隣国に亡命して健全生活目指します!

彩世幻夜

文字の大きさ
1 / 114
私、ざまぁ系ヒロインに転生してしまったかも……!?

初めてのお茶会

しおりを挟む
 ……あれ?

 ふと違和感を覚えたフィリーネは、円卓の右隣に座る義姉が主催者のマナーとして一番に手にした香りの良い高級茶葉を使った紅茶の入った、華やかな花柄の華奢な高級ティーカップに口を付け、茶菓子のクッキーを口に含む様をそっと眺めやる。

 ここは、侯爵家の庭園にある東屋。
 芝生のグリーンに日差しが降り注ぐ天気の良い昼下り。
 カラフルなバラの中、白いパーゴラが映える。

 その美しい景色の中にも埋没しない、躾の行き届いた良家のご令嬢らしく、完璧なテーブルマナーで音もなくカップをソーサーに戻した義姉に促され、フィリーネも主催者の身内として先にお茶と茶菓子に手を伸ばす。
 義姉に比べれば付け焼き刃も同然のマナーだが、一応家庭教師にビシバㇱしごかれたので、一応形にはなっているはず……である。

 「改めまして、本日は当家主催のお茶会にお集まりいただき、御礼申し上げます。
 まずは紹介させていただきますわね。
 私の隣に座る娘、彼女は私の義妹となりましたフィリーネですわ」

 「初めまして、先日より侯爵家の養女となりましたフィリーネと申します。色々と不慣れな点も多く、お恥ずかしい限りですが、何か失礼がありましたらご指摘いただけると幸いです」
 このお茶会は、私の正式な社交デビューの前に社交マナーの実践経験を積む為にお義姉様と親しいご令嬢をお招きしているのだ。

 「義妹は我が侯爵家に来てまだ日も浅く……。覚えは悪くないのですがいかんせん父がこの娘に選んだ家庭教師がカルラ女史でして。
 一応彼女の合格基準には達しましたので今回の会を開く運びとなった訳なんですけれど……」

 「……ああ、あの噂のカルラ女史かい。体罰上等で厳しいを通り越した意地悪姑の様だと評判の。
 それは苦労しただろうね、同情するよ。何せ由緒正しい家に生まれ育った大人しい子でさえ泣き出すらしいから。
 あ、ちなみに私はマルグリットだ。マルグリット=エンゲル、辺境伯家の次女さ。
 ついでに後ろに控えているのは私の執事のカイだ。私の護衛も兼ねているから大体一緒に居るからよろしく頼むよ」

 庭の白薔薇の背景が実によく似合う微笑みを浮かべるのは、実際はご令嬢らしくドレスを身に纏っているのに、後ろに控える執事と衣装を交換させて男装して欲しくなる、カッコ良い系の美女だ。
 女子校にいたら女子にモテそうな、金髪ショートに灰色の瞳をした彼女が纏うのは、アオザイの様な身体の線がくっきり見えてしまう、黒のワンピースを着こなしている。
 夜会ではなくお茶会だから、派手なドレスではないけれど。

 「あら、このクッキー美味しいわね。マルグリット様も召し上がってみて?」
 マルグリット様が自己紹介している横で、先にお茶とお菓子に手を伸ばしていた赤毛の美女が嬉しそうな声を出す。
 鮮やかな赤毛のソバージュに緑の瞳のゴージャス美女。
 こちらは赤薔薇が似合いそうだ。

 「あ、私はジークリンデ=エッカルト。エッカルト公爵家の長女ですわ。よろしくお願いしますわね」
 髪色に負けない鮮やかな赤いゴージャスなドレスを嫌味なく着こなす、ザ☆公爵令嬢だ。

 「あ、ホントだ。紅茶にも良く合うね、美味しいよ、これ」
 「このお菓子、どこのお店の物かしら、ロジーネ様? ああ、後ろに控えているのは私の侍女のリーゼロッテとギーゼラですわ」
 「お気に召したなら光栄ですわ。こちらはフィリーネが考案し、我が侯爵家の料理人に作らせた菓子ですわ。よろしければお包みして、お帰りの際にお土産としてお渡し致しますわ」

 ……うーん、考案したって大袈裟な。
 クッキー自体は多少甘さの調整をしただけの何の変哲もない普通のクッキーなのに。
 ただ、クッキーの間にジャムをサンドしただけなのに。
 まぁ、砂糖はお高いから裕福な侯爵家だからこそ作れるお菓子ではあるけれど。
 ついでに紅茶と合わせるとロシアンティーみたいになって確かに美味しいんだけど。

 「ちなみに私のお薦めはこのミルクジャムを挟んだものなのですよ、お二人共是非お試しになってみて?」
 美しい銀の髪をハーフアップにしたお義姉様が、同じく銀の瞳を友人達に向ける。
 ……お義姉様には青薔薇が似合いそうだけど、さすがに青い薔薇はこの庭には存在しない。
 と、いうか、この世界に存在するのだろうか、青い薔薇。

 「ああ。いただこう」
 「あら、他のは甘酸っぱくて美味しかったのですが、こちらは甘さが濃厚で……、これを食べてお茶をいただくとまるでミルクティーの様ですわね」

 こうして、和やかにお茶会は始まる。
 
 それにしても……、何だろう、お義姉様以外は皆初めて会った人ばかりだというのに、何故か既視感がある様な……?

 しかし、明確な答えに辿り着けぬまま、フィリーネは何とか話についていかねばと気合を入れ直した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

【完結】悪役令嬢の妹に転生しちゃったけど推しはお姉様だから全力で断罪破滅から守らせていただきます!

くま
恋愛
え?死ぬ間際に前世の記憶が戻った、マリア。 ここは前世でハマった乙女ゲームの世界だった。 マリアが一番好きなキャラクターは悪役令嬢のマリエ! 悪役令嬢マリエの妹として転生したマリアは、姉マリエを守ろうと空回り。王子や執事、騎士などはマリアにアプローチするものの、まったく鈍感でアホな主人公に周りは振り回されるばかり。 少しずつ成長をしていくなか、残念ヒロインちゃんが現る!! ほんの少しシリアスもある!かもです。 気ままに書いてますので誤字脱字ありましたら、すいませんっ。 月に一回、二回ほどゆっくりペースで更新です(*≧∀≦*)

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました〜モブのはずが第一王子に一途に愛されています〜

みかん桜
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。 ここは、乙女ゲームが舞台の小説の世界だった。 悪役令嬢が主役で、破滅を回避して幸せを掴む——そんな物語。 私はその主人公の姉。しかもゲームの妹が、悪役令嬢になった原因の1つが姉である私だったはず。 とはいえ私はただのモブ。 この世界のルールから逸脱せず、無難に生きていこうと決意したのに……なぜか第一王子に執着されている。 ……そういえば、元々『姉の婚約者を奪った』って設定だったような……? ※2025年5月に副題を追加しました。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

悪役令嬢ってもっとハイスペックだと思ってた

nionea
恋愛
 ブラック企業勤めの日本人女性ミキ、享年二十五歳は、   死んだ  と、思ったら目が覚めて、  悪役令嬢に転生してざまぁされる方向まっしぐらだった。   ぽっちゃり(控えめな表現です)   うっかり (婉曲的な表現です)   マイペース(モノはいいようです)    略してPUMな侯爵令嬢ファランに転生してしまったミキは、  「デブでバカでワガママって救いようねぇわ」  と、落ち込んでばかりもいられない。  今後の人生がかかっている。  果たして彼女は身に覚えはないが散々やらかしちゃった今までの人生を精算し、生き抜く事はできるのか。  ※恋愛のスタートまでがだいぶ長いです。 ’20.3.17 追記  更新ミスがありました。  3.16公開の77の本文が78の内容になっていました。  本日78を公開するにあたって気付きましたので、77を正規の内容に変え、78を公開しました。  大変失礼いたしました。77から再度お読みいただくと話がちゃんとつながります。  ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

処理中です...