ざまぁ系ヒロインに転生したけど、悪役令嬢と仲良くなったので、隣国に亡命して健全生活目指します!

彩世幻夜

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乙女ゲームからエスケープ! 留学します!

あれ、コレはフィリーネのデートの話のはず……だよな?【マルグリット視点】

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 「うわぁ……」
 私はその光景に思わず腰が引けてしまった。

 前を見ても後ろを見ても、右も左も上を見ても、足元さえも地下へ続く階段の先にあるのは本棚に詰め込まれた本、本、本……。

 私は何も勉学が嫌いという訳ではない。
 ただ、座学科目よりは身体を動かす種目の方が得意なだけ。
 いくら剣の腕に優れようと戦略も理解出来ぬ将など百害あって一利なしなのも分かっているから。
 しかし、私はどうしても、この本の山に目を輝かせるフィリーネの様な反応は出来ない。

 彼女が武器屋に行っても私の様に目を輝かせたりはしないだろうし。

 ここまでフィリーネの後を尾行するのは面白い体験ではあったが……。
 生まれついた頃から軍の男達と共に在る辺境伯家で育ったせいか、ミヒャエル殿があまりに紳士的過ぎる様に見える。

 それだけフィリーネを大事にしたいのだろう。
 ……が、見ている方としてはちょっと面白みに欠ける。
 勿論勝手な意見なのは承知の上。

 「……悪い、私はこの辺で一抜けさせて貰うよ」

 わざわざ苦手な場所でまで出歯亀する程の事も起きないだろう、と、私はロジーネとジークリンデに断って彼女らからそっと離れた。

 この図書館は閲覧室や軽食屋も充実しているようで、通路沿いにある飲食店からは腹の虫を刺激する美味しそうな匂いが漂ってくる。

 自然と視線がそちらへ向く――

 「ぐごおぉぉお」

 ……誰か台車でも使っているのか?
 そう思わせる音がして振り返るが、そんな物は見当たらない。
 代わりに見知った顔を見つけた。

 「テオ=ドレヴェス殿?」

 その彼は、竜人族らしい厳しい顔を恥ずかしそうに赤らめ、視線をそっぽに向けていた。

 「……聞こえた、か?」
 「え?」
 「いや、聞こえていないなら良いんだ」

 手の甲に数枚の鱗が張り付いた様子がよく見える。
 腹に置いた右手……

 「あ……」
 うん、察した。あれは彼の腹の音か。

 ……私は幼い頃から軍の人間に囲まれて暮らしていた。
 日々体を動かし、質より量の食事をモリモリ食べる男達と。
 訓練後、食事までの間は恥も外聞もなく、腹の虫をぐぅぐぅギュルギュル豪快に鳴らす、男達と。

 故に、こんなピュアなリアクションを見せる彼をつい可愛い、と思ってしまったのだ。

 「なぁ、暇ならあのスタンドに付き合ってくれないか?
 友人と図書館へ来たは良いがお腹が空いてしまってね。
 一人でテーブルを独占するのも決まりが悪いし、一緒してくれたら有り難いんだけど?」

 指さした先には肉を挟んだサンドイッチの店。

 「え、良いのか? 君、確か貴族の令嬢じゃなかったか?
 あんな物で良いのか?」

 「ああ。貴族とはいえ軍閥の家でね。私自身も武を嗜んでいる。
 最低限令嬢の礼儀作法は叩き込まれたが、私自身はかしこまったフルコースよりああいった気軽に食べられる物の方が好みなんだ」

 「……そうか。なら、俺からも頼みたい。君は何サンドが食べたい?」

 彼は自然と財布を出して奢ってくれようとする。

 「そうだな、あのアボカドというのが気になる……が、自分の分は自分で出させてくれ。
 折角貴族令嬢としてのくびきから逃れて自由を満喫しているんだから」

 「確かに、貴族らしくはないな。君といつも一緒にいる三人のうち、二人はとても貴族らしいのに」
 「ははは、あの二人は王子の婚約者な公爵令嬢と、その友人筆頭の侯爵令嬢だからな」

 そんなセリフは、昔からよく嫌味混じりに投げかけられたから、慣れたものだ。

 「ん? いや、君はそれだけ努力したんだろう?」
 「え?」
 「お貴族様らしくぬるま湯に浸かる生活で、そんな身体つきにはならない。強いだろう、君」

 だけど。
 不意にかけられた慣れない台詞に、私は不本意にも赤面するハメになった。

 ……大丈夫だよな?
 ジークリンデやロジーネには見られていないよな⁉
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