奴隷と過ごす毎日

宝。

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7話夢・微睡み・過去語り

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二人とも眠気に耐えきれず、結局ベッドを使ったのは…
「スースー」
「…」
その・・・二人でした。



微睡む意識の中、落下する錯覚を起こしながら、抵抗などできないと半ば本能的に悟ったわたしは、頬を撫でる空気と共に
トプン
と、ナニカの中に墜ちる音のみがする。
開こうとする瞼はしかし動かず、まるで頭と体が繋がっていないような…
不思議なことに、瞼は開かずとも自分を取り巻く景色の流れは、高精度のカメラで撮ったかのように鮮明にわかった。
初めは透明な水
そこから段々と明るい青色が入って
次には白の墨汁でも垂らしたかのように濁り出す
落下の感覚は残るものの、水中特有の浮遊感もあった。
白く濁った蒼の景色は、わたしの浮遊感が無くなり、地に足をつけ、目を開くと大空へと変わっていた。
(ここは?)
あたりを見回すと、そこには特徴的な白い髮が2つ。1つは大人の女性。1つは女の子。どちらも見覚えがある。
(わたしと…)
2つの影は、天まで至らんとする大樹の側で微笑み合う。草原が風の力を借りて優しい世界に語りかける。燦々と輝く太陽は、あたかもすべての母のよう。麗かな昼下がりとでもいえばしっくりくるだろうか。
(この頃のわたしは、笑ってる)

景色が再び濁り出し、次には家の中にいた。
先ほど見た時より背が伸びた姿だ。
(この頃のわたしも…笑ってる)
家の中で咲く穢れを知らない笑顔の花は、枯れることを知らずに…

三度換わる景色は、同じ家の中。けれどもそこには、明るさは感じられなかった。項垂れる白い髮は、わたしのものではなかった。
(これって…)
机の上に掛かる白い髮と、置かれた1枚の紙を食い入るような目で見る母親。そこへ扉を開けて入って来たのは金髪蒼眼の男性。わたしの父親。二人は話し合い、首肯くと紙にサインをした。

最後に切り替わった景色は
わたしが奴隷として売られるところだった
泣きじゃくるわたしを強引に連れていく男達。向けられた両親の顔には哀しみも、悔しさもなかった。唯々ムダだと、そう言わんばかりの顔をしていた。この顔が目に入って来た時、
わたしは信じることをやめた。
そして紙と男達の胸に飾られている、国旗と“ルーク”の紋章を目と脳に焼き付け、家を去った。

急速な浮上の感覚。そして目覚め。あたりはまだ暗く、横にはスースーと寝息を立てるハルトの横顔。ブラウンの髮と整った顔を見つめると、何故か心臓がとくんと1つ跳ねた。
そういえばわたしはハルトのことをよく知らないし、わたしのこともハルトはよく知らないはず。だったら明日は、互いに親睦を深めるとしよう。
横を見て数分、再び襲ってきた睡魔にあっさり負け、微睡みの中で願う。
(次に見るなら、ハルトの夢がいいなぁ)
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