天界送りのサルティエラ

いわみね

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第一章

2話 天界都市サルティエラ

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 □□

『さてエリヤ!質問なんだけど、これからどうしたい?』
 俺に掴まれたままのジルが相変わらず能天気な表情を崩さずに俺に話しかけてくる。

 周囲にいる精霊たちも似たようなもので、俺を恐れる様子もなければ、かといって馬鹿にしたりする風でもない。
 “どうしたい?” “どうしたい?”
 どいつもこいつも現界でいうところのお人好しの表情かおだ。
「お前ら俺を騙そうとしている感じがして薄気味悪い」
 俺がそう言うとジルが目を丸くした。
 それからはじめて、ジルの能天気な表情が少し崩れた。
『えーと、ボクたちにキミを騙す意図とかは無くて……』
 “そうそう” 
「俺は罰として魔界を追放されてここに来たのに、なぜお前らは俺に親切にする。それでは罰を与えたことにならんだろう、何を企んでる?正直に言え!」
『確かにキミは魔界では罰せられることをしたのかもしれないけれど、魔界の基準はボクたちの“悪い”の基準と全く違うから』
 “ひとまず何をしたのか聞いてから” “ひとまず何をしたのか聞いてから!”

『それにたまにあるんだ。現界で死んだ魂が魔界に紛れ込んでしまうことがね。そうすると向こうではあまり力を発揮出来ないし、考え方も根底が違うからへまをしやすい』

 “心当たりなーい?” “なーい?”

「心当たりなんかないぞ」
 俺は人間に返り討ちにされたときのことを思い出した。
 本気で殺して喰うつもりで返り討ちにあった。
 (クソ!忌々しい人間め。ナダも忌々しいが、あの人間も同じくらいに忌々しい。奴の名前を使うのはこの怒りを忘れないためだ)

「ん?ちょっと待てジル」
『なんだい?』
「その話ぶりだと、俺が本当は人間という可能性があるのか?」
『人間とは限らないけど、本来は別世界に還るべき魂が、魔界で再生しちゃった可能性はあるんだよ』
「仮に本当は現界の魂を持つものだとして、それは今からどうにかなるものなのか?」
『残念だけど、どうにもならないと思う。それで本来の世界に還れない魂のためにイルミナさまがここ、サルティエラを創ったんだ。知っての通り、魔界で生まれてしまったキミは例えその魂が魔界のものでなかったとしても、魔界の負の魔力が馴染んでしまって、天界の何もかもがキミにとって毒になる』

 すぐには死なないが、じわじわと弱って死んでいくというわけか。
 まあどうせどんなものも何れは消える運命だ。
 それが長いか短いかの違いでしかない。

 (なんて思ってたまるか!どうにかして生き延びてやる!うまれてからまだ1日しか経っていないんだぞ!諦めてたまるか!!あいつらに一泡ふかせてやるんだ。だがさて、どうしたもんか)

『それで質問に戻るんだけど、エリヤはこれからどうしたい?イルミナさまが創ったサルティエラは天界の空気の毒性を弱めることが出来る。望んでくれるなら天界都市サルティエラはキミを歓迎するよ!』

 “歓迎するよ!” “歓迎するよ!”

「まずは生きながらえなくては話にならないからな」

 知らず知らず力をゆるめた俺の手から放れたジルがヒラリと舞うような仕草をしながら両手を広げた。

『決まりだね!改めて、ようこそ天界都市サルティエラへ!よろしくエリヤ!』

 こうして俺は期間限定で天界の一角に創られた天界の街サルティエラで暮らすこととなった。

 (ここでいつまでも悠長にくすぶっているつもりはない)
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