天界送りのサルティエラ

いわみね

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第一章

3話 実感

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 □□

『どう?エリヤ、調子は?』
 エメラルド色の精霊ジルが寄ってきて尋ねた。
 先ほど渡された瓶に入った液体を飲んだ俺の具合を知りたがっている。

 ジルたちを食おうとした俺だったが、今の俺がジルたちを食べても毒にしかならないからと渡された透明な液体。
 すこぶる怪しいと思ったが、結局飲んだ。

「味は最悪だったが、調子は悪くない。良くもないが」
 やはり魔界生まれの俺にとって、天界の環境は地味に負荷がかかるらしく、時々酷く気持ち悪くなったり、言い様のない痛みのようなものが生じることがある。

 ただそれはジルが寄越した液体のせいじゃないと思う。
『ここに慣れてきたら一度現界に降りてみよう。キミの魂にとってその方が良い。嫌なら無理強いはしないよ!』
「良いのか?!」
『何が?』
「俺を天界から出して良いのかって話だ。ナダは罰として俺をここに追放したんだぞ」
『ああ、あの魔界王か。あっちはそのつもりでキミを寄越したのんだろうけど、イルミナさまが受け入れを承知したのは、別にキミに罰を与えるためじゃないからね』

「じゃあ、何のためだ?」
『キミが還るべき場所へ還るため……』
「?けど今さらどうにもならないんだろ?」
『今のキミが還ることは出来ないけれど、きちんと生を全うすれば再び輪廻の輪に戻るチャンスが生まれる』
「なんだ、死ねば良いのか!早く言えよ」
『うわーー!!早まっちゃダメーーー!!!』
「冗談だ」
『キミ、性格大丈夫?!!』
「一応悪魔だからな」

 俺が慌てるジルを面白いと思うのは、きっと魔界で生まれた影響だろう。

 □□

「それにしても、ここは本当に天界なのか?俺の知識とはずいぶんかけはなれていると思うんだが」

 (まあ、俺の記憶なんて植え付けられたようなもんで、実体験がともなわない、いい加減なものと言ってしまえばそれまでだ)

 エメラルド色のジルは風の精霊で俺の知識や想像と大体合っているが、ルビーのように紅い精霊が火の精かと思いきや、違うという。
 トパーズ色の精霊は土、ルビー色の精霊が何故か水。
 火の精霊はサファイアのようだ。
 (名前が食い物じゃないやつも一応はいるのか。何か違うのか)

 ジルが言った。
『イルミナさまの意向でサルティエラは現界に似せて創られているから、エリヤ、キミの知識の中の天界とかけはなれている、というのは実に正しい感想だよ!』
 ヒラリとジルが空中で回転して俺の方に向き直った。
 太陽が明るく空を照らし、青空が広がっている。霞がかった遠くに山まで見えているし、人が住んでいそうな建物まである。

 現界の人間は紅い精霊を炎と認識するんじゃないのか?と思ったが、あくまでも似せているだけなんだろうから、細かいところは天界法則がそのままなのかもしれない。

「あの家や建物には人が住んでいるのか?」
『人と言えば人だけど、人じゃないといえば人じゃない、そういうヒトたちが住んでるよ!それから、これからはエリヤも住むんだよ』
「ああ、なるほど。ところでジル、出口は何処だ?」

 俺はここで暮らすという実感が持てないまま、ジルに向かって言った。

『出入り口は北に1つだけあるよ!そこから他の街へ移動できる』
 どうやらジルは俺の質問を他の街への移動のためくらいに思ったらしい。
 そんなわけねぇだろと思ったが、今はどうにかして力をつける必要がある。魔力量が多少多かろうと、それだけで強いと自惚れてナダに向かっていくほど俺も馬鹿じゃない。
 そもそも、まず天界から出ないことには話しにならない。

 (焦らずサルティエラで自由を勝ち取るのが先決だ)

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