天界送りのサルティエラ

いわみね

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第一章

15話 炎の宴

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 □□

『おのれぇええ!よくもやりやがったな、この糞ガキが!』
「えらく言葉遣いが変わったな!少し前までもうちょっとこっちに敬意があったろ?」
 ここまででもいくらか同族を犠牲に力を得たであろうヤカン魔神ハテナ。
 それ自体にエリヤは怒りも不快感も感じてはいなかった。
 なぜなら、魔界生まれの悪魔であるエリヤたちにとってそれは、生きるための食事に他ならないからだ。
 その否定は、エリヤ自身の否定に繋がる。
 問題はヤカン魔神がエリヤを獲物と定めたこと、エメラルド色の精霊ジルを手にかけたことだった。
 (絶対に報いを受けさせる)
 力で魔神に敗ける気はしない。
 一抹の不安があるとするなら、じわじわと魔界生まれの身体を蝕む天界の空気くらいだ。
 断続的に起きる疲労感が、エリヤにそう思わせている。
 (サルティエラでこれか)
 ヤカン魔神が巨大な身体でエリヤに向かって走り出した。
 もとの大きさに戻って高密度の魔術を使おうとする様子は見られない。
 エリヤが魔術を操り高揚感を得るのと対照的に、ヤカン魔神ハテナは自身より小さな者を蹂躙する方が好みなのだろう。

 (だがそれがお前の敗因になる!)

 □□

『ぅぎゃああああ!!がぁあ!』
 ヤカン魔神ハテナが仰け反りながら悲鳴をあげる。
 山のように巨大なサイズに膨らみ上がったヤカン魔神は絶対に外れることのない標的だ。
 剣や槍が矢のようにヤカン魔神を襲い、さらにエリヤの攻撃魔術がそれを追撃する。
 その連続した動きにもはや天界の住人たちに出る幕を与えない。
 ドガガァアア!
 激しい音と共に魔神が建物をさらに壊しながら、バランスを崩しよろけている。
 一本の槍を残して全ての武器がヤカン魔神ハテナに突き刺さっても、エリヤの術による攻撃は止まらない。

 ズドオオォオオオオォオンッ!!
 ついにエリヤからの攻撃を避けることの叶わない魔神が仰向けに倒れた。
 (天界製の武器の効果絶大ってヤツだな!)
 エリヤが満足げに笑う。

 住人用に持ち出した武器の使用法は、もうどうでもよかった。

 ワァアアアアアア!
『やったぞ!』『すげぇ!』
 住民たちから歓声があがる。
 ヤカン魔神ハテナが呻き声を出しながら起き上がろうとするも、巨体ゆえに起き上がることが出来ずにいる。
 (ここで情けなんてかけても、こいつは改心なんてしねえ)
 エリヤが両手に魔力を込める。
 片方に風。もう片方に炎。
「出来ればこれで燃え尽きろ」

【極炎!】【微風】
 風と炎が交互に合わさりながら魔神ハテナに向かう。
 風が熱風で勢いを増し、炎が風で大きくなる。
 その繰り返しがヤカン魔神ハテナの至近距離で最大に達した。

焼かれてしまえ深焔の饗宴


 □□

 周囲に熱風が巻き起こり、仰向けになったままのヤカン魔神ハテナを巨大な炎が包み込む。
 その様は天界都市サルティエラ全ての力が、魔神ハテナを焼き尽くさんとしているかのように住民たちに見えていた。
 ゴォゴォとうなるような音に混じって、エリヤの耳に歓声が届く。
 (ヤカンのヤツ、これが死に物狂いというヤツか)
 エリヤは一本だけ残しておいた槍を掴んだ。

 (脱出方法を吐かせる良い機会と考えよう)
 奇妙な万能感がエリヤを支配する。
 炎の熱と光が辺りを照らし、異様な影を作り出す。
 魔界生まれのヤカン魔神ハテナには影は無い。
 ではその影とは何か。
 エリヤはまだ気がついていない。
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