天界送りのサルティエラ

いわみね

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第一章

16話 因縁

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 □□

 炎が渦を巻くように球を成し、未だヤカン魔神ハテナを包み込んだままゴゥゴゥと音を立て焔が辺りに熱狂を撒き散らす。

 掴んだ槍の柄に先程まではなかった文字が螺旋に浮き上がっている。
 文字が現れるにつれ、俺は槍に魔力を奪われていくのを感じていた。
 狂おしいまでの力が槍から発せられ、同時に力が流れ込み俺の中の何かが急速に入れ換えられて行くの感覚を覚えた。
 (厄介だな)
 ヤカン魔神が倒れた時に、どうやら巻き込まれて食われた住人がいたらしい。
 そのせいで俺の攻撃が思ったほどヤカン魔神のダメージになっていないのだ。
 一方の俺は天界の毒性とカミルとやり合った疲労の蓄積がある。
 (武器は案の定俺の魔力を代償にする代物らしい。天界の住人が使って同じと限らないが)
 下ではサルティエラの住人たちがヤカン魔神への攻撃を中断しエリヤを見上げ、戦いを見守っている。
 中にはオーバーに跪いて祈りだしているものまでいる。
 (俺というより、この槍を見ているのか?)
 見た目はさほど通常の武器と変わらない様子だった槍が、文字が現れてから魔力を帯びてうっすら輝いているのに気がついた。
「これが原因か」
 (ここから下は遠くてよく見えないが、魔界生まれも雑ざっている可能性が高い)
「魔神は倒れていない!食われたくないならどっかへ避難してろ!」
『は、はい!』『ありがとうございます!』『お気をつけて!』
 住人たちは俺に言われるままその場から離れ始めた。
 (えらく素直だな)
 それは俺にとって好都合な反応だった。
 (予定では住人にも武器を渡して戦力を増やすつもりだったが、魔界生まれは遠ざけた方がいいだろ)
『私としたことが未熟な若者が相手で、少々知恵をまわすのを疎かにしてしまっていたようだね』
 ヤカン魔神ハテナの口調が、最初に会ったときのものに戻っている。冷静さを取り戻したらしい。

「ずいぶんと小さくなったじゃないか!そんなので戦えるのか?」
 俺は努めて冷静を装った。
 先程まではあった焔をかき消し、再び現れたヤカン魔神は人よりも小さく、ヤカンというよりも赤黒い赤子のような体型に変貌している。
 その代わり、自分の周囲に球型の魔障壁を張り巡らせて、二つの大きな目玉をギョロリとさせた。
 (攻撃と防御に特化したというところか)
 ヤカン魔神はどうだと言わんばかりの表情で、俺を小馬鹿にした表情をしている。
 (ふざけやがって。見てろクソ魔神)

 最初に会ったときのヤカンの態度や表情、言動。
 そしてエメラルド色の精霊ジルが砕かれた時のことを思い出す。
 全てが腹立たしく思えた。
 (俺は執念深いんだ。悪魔だからな)
 槍を構え、穂先に集中する。
『おやおや、生まれたばかりの若造が随分と良い得物を持っていると思ったら、その武器は天界製じゃないかー!』
 ヤカン魔神がそう言ってせせら笑う。
 エリヤに時間がないことを解って言っているのだ。

「それがどうした!」
 俺は槍を構えたまま、ヤカン魔神との距離を一気に詰め、素早く槍を横に払う。
 槍の軌道が軌跡に光が現れ、ヤカン魔神の魔障壁に衝突したのを確認して、すぐさま距離をとった。
 音すら立てず、槍による光の攻撃が防がれた。
『効かん、効かん。ちょーっと魔術が使えるようになったくらいでお調子にのりよって』
 力の使い方で精神状態が影響されるのか、ヤカン魔神の口調がまた変化している。
『どうせ槍なんて持ったこともないんだろう?そんなひょろひょろっとした体ではこの障壁を崩すことなんて出来はしないとわからないか。愚かだねぇ。いひひ……』
 エリヤの攻撃が効かないことに安心感を覚えたらしいヤカン魔神が、自身の障壁の中、意地悪い表情でニヤニヤ笑いながら座ったり横になったりし始めた。

 一方の俺は内心で手応えを感じていた。

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