天界送りのサルティエラ

いわみね

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第一章

17話 迫り寄る影

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 □□

 俺の攻撃を楽に防いだことで、完全に自信を持っているヤカン魔神ハテナ改め、ヤカン坊魔神ハテナに目にものを見せてやるため俺は再び槍を構える。
 (防がれはしたが、軽く振っただけであれだ)
 ─特別な力を込めずともあれなら、今度はどうだ?
 俺は先程よりも力を込めた状態で、ヤカン坊魔神から距離をとったまま、槍を横に振った。
 先程よりも少し強い光の軌跡が描かれ、それが障壁に衝突する。
 グニャっ
 ヤカン坊魔神の張った障壁が僅かに、それも一瞬だけへこんで元に戻った。
 それを確認した俺は確信を得た。
 (こいつこの槍は俺と同類だ。魔力を食らって強くなる。しかも俺が魔術を使うより効率よく魔力を力に変えやがる)
 俺はそう判断すると、槍に魔力を惜しみ無く分け与えた。
 魔力が切れて俺が消滅する前に勝負を決める。
 勝てばヤツの魔力は俺の物だ。
 食うか食われるか、やってやろうじゃないか?

 □□

 ヤカン坊魔神は見ていた。
 自身で造り上げた魔障壁の中から、エリヤが槍を一振りするだけで、障壁が一瞬とはいえ歪められるのを。

 おかしい。何かがおかしい。
 自身の体を極力小さなものに留めて、今持ちうるすべての力を攻撃と防御に割り振ったはずだ。
 録に力も込めずに軽く振っただけの一振りで、何故障壁が歪められたのか。
 最初の槍の一撃を防いだことで得た自信に、早くもヒビが入っていた。
 それに、それに。
 ヤツは魔界生まれじゃなかったのか?
 どうしてこの天界でヤツに影があるんだ?
 ヤカン坊魔神は必死に記憶を手繰り寄せた。
 ヤツをはじめて見たとき、確かに影はなかったはずだ。
 エリヤには焦る表情が見えないように顔を背け、呑気に横になり内心を見透かされないよう平静を保つ。
 横になっているのも小さくなった手足が震えるのを誤魔化すのに丁度良い。
 障壁を強化し直して攻撃が疎かになることも恐ろしく、かといって弱めて攻撃魔術でエリヤに攻撃して見せるのも馬鹿にした手前焦っているようで嫌だった。

 1日や2日の生まれたてに自分が敗ける。
 そんなことがあって良いのだろうか。

 □□

 長い槍の柄を持ち頭の上で回転させる動作から突きの姿勢に移る。
 ヤカン坊魔神ヤツの言う通り、俺には確かに経験が足りない。
 だが、それを埋めるものが『魔力』だ。
 魔力を扱うのにも経験が必要だと言うのなら、俺は幸運にも経験を埋めるこの『槍』を手に入れた。
「頼むぜ!槍!」
 俺の言うことをまるで理解したかのように、槍の穂先が輝きを増し、高出力のエネルギーを作り出す。
 どう動けばいいのかは槍が教えてくれる。

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