天界送りのサルティエラ

いわみね

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第一章

20話 天界の槍

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 □□

 (ヤカン坊魔神ハテナを倒すのに、かなり疲労してしまった)
 俺は槍を一旦横に置いて、ヤカン坊魔神の魔障壁の残骸を、気持ち悪さを我慢しながら出来るだけ食べた。
 そのお陰で、失っていた分の魔力をいくらかは充填しなおすことは出来たがまだまだ足りないし、あてがハズレたという気持ちでいっぱいだ。
 (まだ近くにいるはずだ。見つけ出して止めを刺してやる)
 俺は槍を手に、再び辺りを調べることにした。
 改めて周囲を見渡すとかなり広い。
 (ヤツを倒すのに集中していて気付かなかったが、まだ調べていないところとなると、広範囲すぎる)
 ヤカン坊魔神が落下した辺りには、衝撃で崩れ落ちた建物の他に住人の住居、店らしきものがまだ数多く壊されずに建っている。

 屋内と違い、外で小さなヤカン坊魔神ハテナを見つけ出すのはかなり難しいかと思いながらも見て回っていると、店らしき建物の影に動くものを見た。
「そこか!」
 俺は即座に反応し、槍を何かが動いた場所目掛けて力一杯ブンッと振った。
 だが、何も起きない。
 槍の穂先から高出力のエネルギーはおろか、光ることさえしない。
「?」
 (急に何だ?魔力切れか?)
 そう思い、魔力を込めようとしても肩透かしにでもあわされたように受け付けない。
 動いたのがヤカン野郎ならモタモタしてると逃げられる。
 槍から片手を離し、手のひらに魔力を集中し攻撃魔術の準備をはじめようとした瞬間、槍に勢い良く引っ張られた気がした。
「……もう一度」
 グンッ
「うぁ!」
 手に持った槍が向きを変え、俺を引っ張る。
 (武器が勝手に動くってなんだ?!)
 一瞬そう思った俺だったが、考えてみるとヤカン坊魔神とやりあっていた時も俺は攻撃を繰り返しているようなものだった。
 使い込まれて長い年月を経た物には魂が宿るという知識は持っているが、コイツこの槍なのか?

「こ、の!」
 魔術の準備をやめると槍の抵抗が止んだ。
 (俺の邪魔をしている?攻撃するなと言うことか?)
 俺は仕方なく自分の足で動くものを見た場所まで行くことにした。すると店らしき建物の外壁の裏側に隠れるように小さな銀色の毛並みを持った生き物が丸まって震えている。
 (子犬か?)
 俺が上から見ていると、銀色の生き物が丸まったまま顔だけ器用に後ろを向けた。
 すると俺が傍にいるのに気がついて飛び上がって驚いた拍子に壁にぶつかって落ちた。
「食わねぇよ。お前を食っても毒にしかならねえし、こうして近くにいるだけでも気持ち悪いくらいなんだ」
 そう言ってやると、何を思ったのか銀色の子犬が俺の手にスリスリとすり寄ってきた。
 (もし、言葉がわかってこうしてるんなら、コイツはとんでもねぇくそ犬だと思う)
 それにしても。
 攻撃するかしないかを、槍が自分で決めたみたいだと俺は思って槍を見た。
 全体に魔力を帯びた文字が浮かんだままだが、ヤカン坊魔神とやりあっていた時のような、全体から放たれていた光は消えている。
 天界の武器というのはみんなこんな風なのだろうか。

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