天界送りのサルティエラ

いわみね

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第一章

27話 最終話

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『クラリス様!こちらもお願いします』
 “ハーイ”
 トパーズ色の精霊、クラリスが住人に呼ばれて飛んでいく。

 天界都市サルティエラは、魔神と化したハテナが暴れまわって崩壊して多くの建物が消失させられて、更地になった土地が広がっていた。
 形があって無いようなもの。
 それが天界であり、魔界だ。
 破壊されたものは姿を保てず、何れ消えるか在るべき場所へと還る。

 そこに俺は立っていた。
 住人たちが破壊された街の復興のために、精霊たちと忙しく動き回っている。
 (そういえば結局ヤツは見つからなかったな。どこかで力尽きたか)

『どうだ!現界の店らしい仕上がりじゃないか?!』
 独自性が異様に高いデザインの店を建てて住人が喜んでいる。

 銀色の子犬、ハッサクも一緒になって忙しげにしているが、恐らく意味はわからずに走り回っているだけだ。

 えらく魔力が高いがまだ大したことは出来ない。
 魔界生まれの住人にじゃれつこうとして、天界生まれの住人に怒られている。
 見た目はフェンリルの子犬バージョンだが、住人たちによると違うらしい。

『レミー、なあレミーがどこか知らないか?』
『レミー様ならあっちに行ったぞ』
 尋ねられた住人の男がそう言うと
『そうか!ありがとう』と言って走っていった。

 □□

『エリヤ!』
 しばらくすると用を済ませたジルが戻ってきた。
 後ろにサファイア色の精霊フランがついてきている。
 近くでいつもキラキラ光っているのは下級に位置する精霊たちだ。
 “そろそろつかれてきました。ゼリュース、フランもう休んでいい?”
 俺はフランをわざと無視してジルに話しかけた。
「ご苦労さん!ジル」
 するとジルが笑ってフランに言った。
『フラン、ゼリュースって名前じゃ返事してもらえないよ』
 “むぅ、そうでした”

 ── 時間ときを少し遡る。

 宴会が終わった後も、俺に天界の記憶は戻らなかった。

『ゼリュース』がなぜ死んだのか、再生された俺になぜ記憶がないままなのか。
 それさえもイルミナの意図なのかはわからない。
 姿はおろか、気配も感じさせない始末。
 天界で再生した俺にとって天界の空気はもはや毒でもなんでもない。
 これら全てがイルミナの思い通りなのだとしたら、俺にとってそんな腹立たしいことはなかった。
 (現界の人間は天界を神聖視しがちだが、種類が違うだけだ。現に俺は何一つ変わっちゃいない)

 天界の何もかもが毒だという過酷でスリリングな中からの華麗な脱出劇を邪魔された俺は、天界の住人とジルたちに言ってやった。

「今から俺を『ゼリュース』と呼ぶのを禁止する」
『ええ!?』
『そんなやぶからぼうに!』
『反対!』
 “どーして!”“ゼリュースはゼリュースなのに!”“横暴!”
 特に大騒ぎしたのはジルを除いた3精霊だ。
 あんまり器用じゃなさそうだからな。
「横暴だろうが何だろうが、禁止!ゼリュースなんてヤツを俺は知らないからな」
 (最初に俺を知らないふりでとぼけたり、ちびのクセに強かったりお前ら、要注意だ)

 要は腹いせである。

 “ではなんと呼びますか”
「これまで通り、エリヤと呼べばいい」

 こうして天界都市サルティエラに、俺を『ゼリュースと呼んではイケナイ』令が出されたのである。
 いつの間にか精霊たちが集まってきた。
 “エリヤこれからはここで暮らす?”
 クラリスが聞いてきた。
 こいつは宴会場で俺を吹っ飛ばすパワーを持っている。
 俺は時々は天界を抜け出す予定だ。
 魔界王ナダと、俺を返り討ちにした人間への仕返しも済んでいないしな!
 だが、これからは抜け出すときに、ちょっとここのことを考えてやるくらいはしても良いだろう。
 イルミナの思い通りに動いてやるつもりもない。
 クラリスとはこの辺りで息が合うんじゃないか?
 と俺は密かに考えている。

 この先のために力をつけなくてはイケナイ。
「そうだな」
 そう答えてやると、いつの間にか作業を一段落させた住人たちが集まってきていて一斉に言った。
『おかえりなさいませ!ゼリュースさま!』

 (イルミナはこれからもハテナのような連中を送り込み、ここの住人はそれを受け入れるだろう)

 ここは天界都市サルティエラ
 イルミナの慈悲で創られた天界の都市

 通称、天界送りのサルティエラ

 第一部 完




 ───

 ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
 物語はこれにて一区切りです。
 もし楽しんでいただけたなら幸いです。

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