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第二章
29話 客人
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「うう……ん」
『客人』が微かに呻き声をあげて、薄く目を開いた。
『あ!気がついた』
早速ジルが『客人』に近づこうとするのを俺は素早く掴んで止めた。
『なにをするんだいエリヤ!』
「なにをするんだい、じゃねーよ。不用意に近づくな!」
『どうして?』
「どうしてって……」
俺とジルが言い合ってる間に、他の精霊たちがあっという間に『客人』の周りに集まっている。
俺は頭を抱えそうになった。
(すこしは警戒心を持て!)
意識を取り戻した『客人』は集まった精霊たちをしばらく意に介さず、ぶつぶつと独り言を呟いた。
思考を整理するのに必死なのだろう。
よほど急に跳ばされたと見えた。
「そうだ、ボクは確か崖からミミルさまに突き落とされて……じゃあここは……」
(ミミル。たしか13人いる魔界王の一人がそんな名前だったな)
『だいぶ動揺してるみたい。安心させてあげなくちゃ!』
俺の手を逃れたジルが軽快な調子でまだ名も知らぬ『客人』に向かって言った。
『ようこそ!天界都市サルティエラへ』
「うわああぁああ!!天国に来ちゃった!」
ジルがどうしてあの出迎えで、魔界生まれの悪魔が安心できると思うのか、俺には良くわからない。
□
渡された『水』を警戒して、なかなか口にしなかった『客人』がようやくソレをチビチビと飲み始めた頃合いで俺が話しかける。
一応名前だけは聞き出せたようだが、独り言から察するに、仕えて信じていた魔界王に跳ばされたらしい、ということしかわからない。
まあ、大した理由が無くても理不尽にそういうことをするのが魔界王なわけだが、その理不尽な理由に興味が湧いた。
(何をやらかすと前触れもなく天界に突き落とされるんだ?)
「本当に、身に覚えが無いのか?」
俺の質問にパルガムは答えず、うつむいてぶつぶつ不安感を絶えず言っている。
「なんてことだ。ミミルさまと離れ、ボクは邪悪な天使どもに囲まれ一体どうすれば………」
パルガムの独り言が両手で顔を覆ったままさらに続く。
「か弱いボクなんかミミルさまがいなければ……」
ミミル、ミミルと連呼して鬱陶しい。
「ああ……ミミルさま。ミミルさま。ボクはこのままこのような場所で消滅させられてしまうのか」
(助けてやってこの言いぐさ)
一方、相当に後ろ向きの思考に、精霊たちが慰めようと話しかけている。
“住めば天国なりー”
能天気な精霊の声を遮って、パルガムが落ち着かないようすで叫んだ。
「こうしてはいられない!きっとこれはなにかの手違いだ!」
パルガムが急に立ち上がって俺を押し退け走り出そうとするから、とっさに衣装の首の辺りをつかんで止めた。
「どこへいく!」
「決まってるじゃないか、ミミルさまのところに帰るんだよ」
「どうやって?」
『どうやって?』
「そりゃもちろん、来たところから」
「……お前が落とされた崖は『次元の狭間』だったんだろうが、もう閉じてるぞ」
『魔界とつながる狭間は勝手に開けない』
パルガムが泣きそうな顔になった。
『客人』が微かに呻き声をあげて、薄く目を開いた。
『あ!気がついた』
早速ジルが『客人』に近づこうとするのを俺は素早く掴んで止めた。
『なにをするんだいエリヤ!』
「なにをするんだい、じゃねーよ。不用意に近づくな!」
『どうして?』
「どうしてって……」
俺とジルが言い合ってる間に、他の精霊たちがあっという間に『客人』の周りに集まっている。
俺は頭を抱えそうになった。
(すこしは警戒心を持て!)
意識を取り戻した『客人』は集まった精霊たちをしばらく意に介さず、ぶつぶつと独り言を呟いた。
思考を整理するのに必死なのだろう。
よほど急に跳ばされたと見えた。
「そうだ、ボクは確か崖からミミルさまに突き落とされて……じゃあここは……」
(ミミル。たしか13人いる魔界王の一人がそんな名前だったな)
『だいぶ動揺してるみたい。安心させてあげなくちゃ!』
俺の手を逃れたジルが軽快な調子でまだ名も知らぬ『客人』に向かって言った。
『ようこそ!天界都市サルティエラへ』
「うわああぁああ!!天国に来ちゃった!」
ジルがどうしてあの出迎えで、魔界生まれの悪魔が安心できると思うのか、俺には良くわからない。
□
渡された『水』を警戒して、なかなか口にしなかった『客人』がようやくソレをチビチビと飲み始めた頃合いで俺が話しかける。
一応名前だけは聞き出せたようだが、独り言から察するに、仕えて信じていた魔界王に跳ばされたらしい、ということしかわからない。
まあ、大した理由が無くても理不尽にそういうことをするのが魔界王なわけだが、その理不尽な理由に興味が湧いた。
(何をやらかすと前触れもなく天界に突き落とされるんだ?)
「本当に、身に覚えが無いのか?」
俺の質問にパルガムは答えず、うつむいてぶつぶつ不安感を絶えず言っている。
「なんてことだ。ミミルさまと離れ、ボクは邪悪な天使どもに囲まれ一体どうすれば………」
パルガムの独り言が両手で顔を覆ったままさらに続く。
「か弱いボクなんかミミルさまがいなければ……」
ミミル、ミミルと連呼して鬱陶しい。
「ああ……ミミルさま。ミミルさま。ボクはこのままこのような場所で消滅させられてしまうのか」
(助けてやってこの言いぐさ)
一方、相当に後ろ向きの思考に、精霊たちが慰めようと話しかけている。
“住めば天国なりー”
能天気な精霊の声を遮って、パルガムが落ち着かないようすで叫んだ。
「こうしてはいられない!きっとこれはなにかの手違いだ!」
パルガムが急に立ち上がって俺を押し退け走り出そうとするから、とっさに衣装の首の辺りをつかんで止めた。
「どこへいく!」
「決まってるじゃないか、ミミルさまのところに帰るんだよ」
「どうやって?」
『どうやって?』
「そりゃもちろん、来たところから」
「……お前が落とされた崖は『次元の狭間』だったんだろうが、もう閉じてるぞ」
『魔界とつながる狭間は勝手に開けない』
パルガムが泣きそうな顔になった。
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