ヒロインがヒロインをしてくれません~我儘王子との結婚なんてごめんです~

ルー

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トリシアの兄

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トリシアの兄ヴィンセントはにっこりと笑う。

「そっちの2人はラリシエルとローズリアかな?初めまして、僕はシュナイダー侯爵家の当主、ヴィンセント・シュナイダーだ。よろしく。」

「よろしく、お願いします。」

2人は頭を下げた。

「トリシア、つらかったね。」

ヴィンセントはトリシアに言った。

「え?」

トリシアは目を見開いた。

「あんなに君に愛を誓っていたのに平民と浮気だなんて。人間のクズだな。」

「お兄様、確かに浮気は理由の一つだけど、違うの。私、ラリシエルとローズリアを差別するあの人が嫌で離縁したの!」

「待て、子供を差別だと?」

ヴィンセントの声が鋭くなる。

「ええ、私に似ているローズリアばかりを可愛がり、公爵様に似ているラリシエルを冷遇して。」

「最低だなあの男。子供を差別することは犯罪だ。王国法でそうきまっている。」

ヴィンセントが人の悪い笑みを浮かべた。

「この際、大人しく失脚してもらうか。」

「お兄様?」

トリシアがおずおずと声をかける。

「ああ、トリシア。君は心配しなくて大丈夫だから。自分の部屋で休んでなさい。部屋はトリシアが出てから何も変えていないから。ラリシエルとローズリアはトリシアの部屋の両脇を使うか。ラリシエルは右の部屋を、ローズリアは左の部屋を使うと良い。侍女は部屋で待機させているから何かあったら言いなさい。」

ヴィンセントの言葉にトリシアは目を見張る。

「別邸でなくていいのですか?出戻りの妹、それも子持ちだなんて醜聞にしかなりませんわ。」

「そんなことを言うな。僕がトリシアを、トリシアの子供たちを嫌うわけないだろう。」

「お兄様・・・。」

トリシアの瞳から涙が零れ落ちた。

「それじゃあ、僕は王宮に行ってくる。」

「あ、離縁届は大司教様に受理していただきました。」

「そうか、あの大司教が・・・。ふーん。」

ヴィンセントは少し複雑な表情をした。








「わー!ここが私のお部屋?」

ラリシエルは目を丸くした。

公爵家とは比べ物にならないほど豪華だ。

後ろから覗き込んでいたトリシアはくすっと笑う。

「まぁ、公爵家の何千倍もシュナイダー侯爵家は金持ちなんだから。」

「そうなの?」

「ええ、リトラ公爵家はシュナイダー侯爵家と比べるとお金ないのよ。」

トリシアは隣の部屋をあけて中に入る。

「本当に何も変わらないわ。」

「ラリシエルお嬢様。初めまして、本日よりお嬢様の専属侍女になりましたリサと申します。」

「同じくエリナです。」

ラリシエルにつけられたのは2人の侍女。

「初めまして、リサ、エリナ。」

「まぁ、なんてお可愛らしい!!トリシア様にそっくりですわ!」

リサの言葉をラリシエルは否定する。

「私はお母様似じゃなくてお父様似よ。」

「誰がそんなこと言ったのですか!?」

リサが目を丸くした。

「公爵様。」

「リトラ公爵ですね!あの野郎、潰してやるわ。」

「リサ、言葉遣いが悪いわ。」

「失礼いたしました。」

エリナに注意され、リサはすぐに謝った。

「ねぇ、お茶にしましょう。」

ラリシエルの言葉にエリナは素早く紅茶とお菓子を用意した。

「2人も座って、一緒にお茶にしよう。」

その言葉に2人は顔を見合わせた。

「やっぱりトリシア様に似てます!」

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