ヒロインがヒロインをしてくれません~我儘王子との結婚なんてごめんです~

ルー

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王家からの打診

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「ラリシエルお嬢様、ローズリアお嬢様。トリシア様がお呼びです。」

ラリシエルの部屋で遊んでいた2人はそろって首をかしげた。

「ここに座りなさい。」

隣のトリシアの部屋に入った2人は勧められたソファーに座った。

「話ってなんですか?」

トリシアは隠していた手紙をテーブルに置いた。

「これって?」

きょとんとするローズリアと顔色を変えるラリシエルの反応の違いを見てトリシアは言った。

「王家からの婚約打診の手紙よ。」

手紙の封には王家の紋章である薔薇が描かれている。

「うそ・・・。」

既にローズリアは震え、青ざめている。

「安心して、ローズリア。王家が婚約者に望んでいるのはラリシエルよ。」

「お、お母様!?どうして私が?」

トリシアの言葉にラリシエルは慌てる。

(このままじゃ本当に婚約者に選ばれちゃう。せっかく回避できたと思ったのに・・・)

「ごめんなさい、ラリシエル。これは王命なの。それも第一王子殿下が自ら願った婚約こちらは拒否できないの。」

(うそ、うそよ。)

「お母様、私やだ・・・。」

ラリシエルは顔を歪めた。トリシアは何も言えずにただうつむいた。







その日からラリシエルは部屋に籠り、ローズリアもトリシアもラリシエルのことをひどく心配した。

しかしラリシエルはその日以降まったく部屋から出て来なかった。

話を聞いたヴィンセントも部屋を訪れた。

「ラリシエル。少しいいか?」

部屋のベットで体育座りをして、顔を足と足の間にうずめていた。

部屋の外から聞こえたヴィンセントの声にラリシエルはゆっくりと顔をあげた。

「・・・リサ、開けていいよ。」

「かしこまりました。」

リサは鍵を外し扉を開いた。

「リサ・・・。入っていいのか?」

「はい。」

ヴィンセントは明かりのついていない部屋の中に入り、そしてベットの上でうつむくラリシエルを見つけると近づいた。

「ラリシエル、すまなかった。」

深々と頭を下げるヴィンセントにラリシエルは緩慢な動きで顔をヴィンセントの方に向ける。

「婚約について、侯爵家と王家で考えてみたんだ。」

その言葉にラリシエルは反応する。

「なんですか?」

「ラリシエル、君が学園を卒業する日までにその気持ちが変わらないのなら、婚約解消できるようになった。」

「本当ですか!?」

ラリシエルは身を乗り出す。

「ああ、だが。一度第一王子殿下が会いたいとね。とりあえず一度だけあってみないか?」

「・・・ヴィンセント様がついてきてくださるのなら・・・。」

「ああ、ついて行こう。だがヴィンセントではなく叔父様と呼んでくれ。」

「わかりました、叔父様。」

ラリシエルはどこかほっとしたように息をついた。

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