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王子の言葉
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第一王子との面会は2日後に決まった。
そして2日後、ラリシエルは綺麗なドレスを着て、玄関ホールに立っていた。
「ラリシエル、なんの相談もしないで勝手に決めてごめんなさい。」
トリシアがその場で深く頭を下げた。
「お母様、私もう気にしてません。それに学園を卒業したら婚約解消できるんですから。」
ラリシエルの言葉にトリシアは涙を流した。
ちなみにこの時点でラリシエルは5才である。
ラリシエルはヴィンセントにエスコートされて馬車に乗り込んだ。
「緊張してるのか?」
向かいに座ったヴィンセントが尋ねた。
ずっとうつむいていたラリシエルははっと顔をあげ小さくうなづいた。
「はい・・・。」
「無理はない。しかし、あまり緊張しすぎるな。」
「はい。」
ラリシエルはこくりとうなづいた。
ガタンという音をたてて馬車がとまった。
「ついたか。」
扉がひらき、最初にヴィンセントが降りた。
ヴィンセントはまだ中にいるラリシエルに手を差し出した。
エスコートを申し出ているのだが5才でまだ淑女教育が始まっていないラリシエルに通じるはずがなかったはずだった。
しかしラリシエルはその手を取って馬車から降りた。
「淑女教育受けていたか?」
「いいえ。お母様の見よう見まねです。」
「それでここまでできるとは・・・。」
ヴィンセントは目を丸くする。
「お待ちしておりました。」
出迎えは1人のみ。
それも執事。
「ほぅ、シュナイダー侯爵家もなめられたものだな。」
ヴィンセントの言葉に執事は慌てて否定する。
「申し訳ございません!第一王子殿下はお部屋でお待ちになっていて、側近候補の方々は本日はお呼びしておりませんので。」
ヴィンセントは深いため息をつくと言った。
「・・・案内してくれ。」
「かしこまりました。」
執事はどこかほっとしたような表情で第一王子の部屋へと2人を案内した。
第一王子の部屋は王宮の3階にあった。
「第一王子殿下、シュナイダー侯爵当主様とラリシエル様をお連れしました。」
執事が扉を叩き、中に呼びかけると内から扉がひらいた。
開けたのは護衛騎士で、奥のソファーにふんぞり返るように座っているのが第一王子アンドリュー・フィス・ラテラルだ。
黒髪に紫紺の瞳の美少年ではあるがその態度が全てを台無しにしている。
「入りたまえ。」
明らかに上から目線なその物言いにヴィンセントの頬がピクリと引き攣った。
「これはこれは王子殿下。ご機嫌麗しゅう。さて、ラリシエル。帰りましょうか。」
ヴィンセントは欠片も敬意のこもっていない挨拶をするとラリシエルに言った。
「・・・え?」
ラリシエルはきょとんとしているがヴィンセントの意図を理解したのか満面の笑みでうなづいた。
「はい!帰りましょう叔父様。」
そのまま帰ろうとした2人にアンドリューが慌ててとめた。
「ま、待て!!まだ挨拶しかしていないぞ!ラリシエルにいたっては挨拶すらしていないではないか!」
「・・・会いましたよね。王子殿下のご希望はラリシエルと会う、でしたよね。会わせました。もう、よろしいですか?」
特におかしなことは言っていないだからこそアンドリューは言葉に詰まった。
「と、とにかくシュナイダー侯爵は下がれ!俺はラリシエルと一対一で話がしたいんだ!」
そして2日後、ラリシエルは綺麗なドレスを着て、玄関ホールに立っていた。
「ラリシエル、なんの相談もしないで勝手に決めてごめんなさい。」
トリシアがその場で深く頭を下げた。
「お母様、私もう気にしてません。それに学園を卒業したら婚約解消できるんですから。」
ラリシエルの言葉にトリシアは涙を流した。
ちなみにこの時点でラリシエルは5才である。
ラリシエルはヴィンセントにエスコートされて馬車に乗り込んだ。
「緊張してるのか?」
向かいに座ったヴィンセントが尋ねた。
ずっとうつむいていたラリシエルははっと顔をあげ小さくうなづいた。
「はい・・・。」
「無理はない。しかし、あまり緊張しすぎるな。」
「はい。」
ラリシエルはこくりとうなづいた。
ガタンという音をたてて馬車がとまった。
「ついたか。」
扉がひらき、最初にヴィンセントが降りた。
ヴィンセントはまだ中にいるラリシエルに手を差し出した。
エスコートを申し出ているのだが5才でまだ淑女教育が始まっていないラリシエルに通じるはずがなかったはずだった。
しかしラリシエルはその手を取って馬車から降りた。
「淑女教育受けていたか?」
「いいえ。お母様の見よう見まねです。」
「それでここまでできるとは・・・。」
ヴィンセントは目を丸くする。
「お待ちしておりました。」
出迎えは1人のみ。
それも執事。
「ほぅ、シュナイダー侯爵家もなめられたものだな。」
ヴィンセントの言葉に執事は慌てて否定する。
「申し訳ございません!第一王子殿下はお部屋でお待ちになっていて、側近候補の方々は本日はお呼びしておりませんので。」
ヴィンセントは深いため息をつくと言った。
「・・・案内してくれ。」
「かしこまりました。」
執事はどこかほっとしたような表情で第一王子の部屋へと2人を案内した。
第一王子の部屋は王宮の3階にあった。
「第一王子殿下、シュナイダー侯爵当主様とラリシエル様をお連れしました。」
執事が扉を叩き、中に呼びかけると内から扉がひらいた。
開けたのは護衛騎士で、奥のソファーにふんぞり返るように座っているのが第一王子アンドリュー・フィス・ラテラルだ。
黒髪に紫紺の瞳の美少年ではあるがその態度が全てを台無しにしている。
「入りたまえ。」
明らかに上から目線なその物言いにヴィンセントの頬がピクリと引き攣った。
「これはこれは王子殿下。ご機嫌麗しゅう。さて、ラリシエル。帰りましょうか。」
ヴィンセントは欠片も敬意のこもっていない挨拶をするとラリシエルに言った。
「・・・え?」
ラリシエルはきょとんとしているがヴィンセントの意図を理解したのか満面の笑みでうなづいた。
「はい!帰りましょう叔父様。」
そのまま帰ろうとした2人にアンドリューが慌ててとめた。
「ま、待て!!まだ挨拶しかしていないぞ!ラリシエルにいたっては挨拶すらしていないではないか!」
「・・・会いましたよね。王子殿下のご希望はラリシエルと会う、でしたよね。会わせました。もう、よろしいですか?」
特におかしなことは言っていないだからこそアンドリューは言葉に詰まった。
「と、とにかくシュナイダー侯爵は下がれ!俺はラリシエルと一対一で話がしたいんだ!」
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