訳アリ令嬢は家出します

ルー

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第一章

1話

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空が赤く染まってきた頃、ハルは街の総合ギルドに着いた。
総合ギルドは暗殺者ギルドと商業ギルドと冒険者ギルドの3つの総称のことだ。
総合ギルドの他にも個別に暗殺者ギルド、商業ギルド、冒険者ギルドはあるのだが、ギルドに登録する際、総合ギルドに登録しておくと、依頼がきやすいのだとか。
それに加えて、総合ギルドは暗殺者、商人、冒険者の3つの職業を兼任することができるのだ。
個別のギルドはそれぞれ仲が悪い。
よって、別々のギルドで登録するほど馬鹿な人はさすがにいないのだった。
ハルは総合ギルドの観音開きの扉を開けて、中に入った。
総合ギルドの中はとても清潔で、外見とは全く違った。
ハルは建物の中を見渡して、奥に登録カウンターがあることに気づき、奥に歩き出す。
「すみません、ギルドに登録したいのですが。」
カウンターの前で立ち止まり、ハルはカウンターに立っているギルドの職員に声をかける。
うたた寝をしていたその職員は勢いよく顔をあげた。
「へぇ?えああえっとギルドに登録したいのでか!では、まず、暗殺者、商人、冒険者この3つのなかからなりたい職業を選んでくだい。」
職員は慌ててマニュアル通りに対応する。
「その件なんですが私自分のステータスも知らないんです。なので職業を選べと言われても。」
ハルは困ったように言う。
「えぇっ!?あなたどこからどう見ても15歳はこえてるよね?」
思わずといったように身を乗り出した職員は驚きのせいか、口調がくだけている。
その事に気づいた職員は咳払いする。
「まだ受けていらっしゃらないのですね。かしこまりました。こちらのステータスの機械に手をかざしてください。」
ハルは、職員がカウンターのなかから取り出した機械に恐る恐る手をかざした。
数秒後、ハルの枚に一枚の透明な板が現れた。
最初、板には何も書かれていなかったが、すぐに、板の上に文字が現れた。
「これは!この魔力と体力、精霊適応力。それに身体能力っ!?どういうことですか?」
自分の結果に唖然としているハルに職員が詰め寄った。
「えっと私もよく分かんないんだけど。でもこの結果だったら、どの職業が一番いいですか?」
ハルは困ったように笑いながらも尋ねた。
「そうですね。まず商人は論外ですね。こんなに高い魔力を持っていて商人というのはもったいないです。次に冒険者ですが私は冒険者でも暗殺者でもやっていけると思います。ただ冒険者の方が依頼金額が安いのでドバッと稼ぎたいのなら暗殺者を選ぶべきだと思います。」
職員は丁寧に説明する。
ハルはすぐさま財布を取り出して中身を確認する。
「じゃあ、暗殺者にします!」

その日、ハルは暗殺者になった。

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