自殺したお飾り皇太子妃は復讐を望む ~二周目の君は変われない~

ルー

文字の大きさ
2 / 16

プロローグ

しおりを挟む
パンッと頬を打たれて、そこで私はやっと気づいた。

見上げれば、そこにいるのは私の夫、皇太子のシオンとその愛人の男爵令嬢の姿。

貴方はもう私なんていらないんですね。

「・・・そんなに私のことが憎いのですね。」

三年前に皇太子シオンと結婚して、初夜さえすっぽかされて、次の日には離宮にうつされた。

そして、すぐに愛人であるシャトレッタ男爵令嬢を城に呼び、やりたい放題。

そして、半年後には皇子を一人産んだ。

一方私はお飾りの皇太子妃として離宮に閉じ込められ、侍女から暴力を受ける毎日。

いいかげん嫌になった。

そんなある日だった。

城に呼ばれ、着替えて行ってみればそこにいたのは三年間一度も顔をあわせなかった夫とその愛人の姿だった。

会ってそうそうに頬を叩かれて、意味が分からなかった。

でも、あなたの顔を見てようやくわかった。

「誰が憎いと言った?リーシャが、シャトレッタ男爵令嬢ではなく、ルトルバード侯爵家に養女として入ることになったからお前は用済みだから出て行けと言ったんだ。」

殿下、それはあんまりでしょう。

三年間も放置した挙句の果てに出て行け、離婚ですか?

さすがに堪忍袋の緒が切れます。

さぁ、笑っていられるのもここまでですよ。

「分かりました、殿下。ですが殿下、あんまりだとは思いませんか?もう、私、笑って許すことなんてできません。」

私の言葉を殿下は不快そうな表情で聞き流す。

そうですか。

殿下はそういう選択をするのですね。

それなら私は、殿下のその選択を後悔させてあげますわ。

「一生後悔してください、殿下。」

私は近くに立っていた殿下直属の護衛騎士の剣を抜くと、自分の胸に突き刺した。

「ハル!?」

ぎょっとする殿下を見てしてやったりと思った。

倒れた私はもう目も開けられない。

それでもほんの一瞬後悔してしまった。

息ができない。

胸が、痛い・・・。

ああ、神様。もし神様が私をあわれに思ってくださるのなら、どうか一つだけ願いを聞いてください。

苦しくて、それでも、私は最後の力を振り絞ってうっすらと目をあけた。

「ハル!なんで?どうして!!」

血相を変えて私の名を呼ぶ殿下、そしてどうすればいいのか分からずただただオロオロしているリーシャさん。

ねぇ、殿下。

どうしてそんな顔をしているのですか?

私はリーシャさんと結婚するには邪魔な存在。

死んでくれてラッキーと思ってくれていいのですよ?

そういえばルトルバード侯爵家だなんて聞いたことがありませんね。

ルトルバーグ侯爵家ならあるのですけど・・・。

言い間違えたのかしら?

ああ、もう駄目ね。

もう、駄目みたい。

『その願いとやらを言いなさい。』

ありがとうございます。

私は、私は。








もう一度やり直したいのです。他人ではなく、自分のために生きてみたいのです。











『その願い、聞き届けよう。』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

真実の愛の祝福

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
皇太子フェルナンドは自らの恋人を苛める婚約者ティアラリーゼに辟易していた。 だが彼と彼女は、女神より『真実の愛の祝福』を賜っていた。 それでも強硬に婚約解消を願った彼は……。 カクヨム、小説家になろうにも掲載。 筆者は体調不良なことも多く、コメントなどを受け取らない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。

〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」 その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。 「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」

【完】お望み通り婚約解消してあげたわ

さち姫
恋愛
婚約者から婚約解消を求められた。 愛する女性と出会ったから、だと言う。 そう、それなら喜んで婚約解消してあげるわ。 ゆるゆる設定です。3話完結で書き終わっています。

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目の人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

幼馴染み同士で婚約した私達は、何があっても結婚すると思っていた。

喜楽直人
恋愛
領地が隣の田舎貴族同士で爵位も釣り合うからと親が決めた婚約者レオン。 学園を卒業したら幼馴染みでもある彼と結婚するのだとローラは素直に受け入れていた。 しかし、ふたりで王都の学園に通うようになったある日、『王都に居られるのは学生の間だけだ。その間だけでも、お互い自由に、世界を広げておくべきだと思う』と距離を置かれてしまう。 挙句、学園内のパーティの席で、彼の隣にはローラではない令嬢が立ち、エスコートをする始末。 パーティの度に次々とエスコートする令嬢を替え、浮名を流すようになっていく婚約者に、ローラはひとり胸を痛める。 そうしてついに恐れていた事態が起きた。 レオンは、いつも同じ令嬢を連れて歩くようになったのだ。

私のことを愛していなかった貴方へ

矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。 でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。 でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。 だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。 夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。 *設定はゆるいです。

処理中です...