自殺したお飾り皇太子妃は復讐を望む ~二周目の君は変われない~

ルー

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今日は何の日ですか?

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「お嬢様!!いい加減にしてください!!」

神様とのお話が終わって、私はナターシャに叩き起こされていた。

「ナターシャ・・・。」

「もう、お嬢様ったら。いつになっても起きないんですから。いつもちゃんと一回で起きるのになぜでしょう?」

ナターシャが私の目を覗き込んでくる。

私は心当たりがありすぎてスッと視線をそらした。

「お嬢様?心当たりがあるんですね。」

ナターシャはため息をつくと微笑んだ。

「お嬢様が話したいと思った時でかまいませんよ。ところで今日は何の日か覚えてますか?」

何の日・・・。

あれ、何の日だっけ?そもそも今日っていつ?

「え、ええっと。今日って何日だっけ・・・?」

私の問いにナターシャはぽかんと口を半開きにして首をかしげた。

「お嬢様、大丈夫ですか?頭でも打ちました?」

「し、失礼な!!頭なんて打ってないわよ。」

「うふふ、冗談です。本日は三月二十一日ですよ。」

二十一日・・・三月・・・。

「・・・もしかして、私の誕生日じゃ・・・。」

「もしかして、忘れてたんですか?もうお嬢様ったら。」

ナターシャはくすくすと笑いながら子供用のドレスをクローゼットの中から選んでいる。

私はそんなナターシャの横顔を見て思った。

ああ、ナターシャだ、と。

ナターシャともう一度会うことができた喜びに涙が溢れてきた。

慌てて寝巻きの袖でごしごしと目元を拭ったけど、ナターシャが戻ってくる方が早かった。

「お嬢様!?な、泣いているんですか!」

ナターシャはその場にドレスを投げるように置くと私の側に寄り添ってくれた。

「ナターシャ、ナターシャだ・・・!」

涙とともに言葉が溢れてきた。

殿下に殺されてしまって、もう二度と会うことなんてできないと思っていたナターシャが目の前にいることが何よりもうれしかった。

「はい、お嬢様。お嬢様のナターシャはここにいますよ。だから泣かないでください。」

ナターシャが頭を優しくなでてくれる。

「本当に?もう、どこにも行かない?」

精神年齢二十一歳のはずなのに言動が五歳児になってる・・・。

「はい。ナターシャはお嬢様とずっと一緒ですよ。大好きです、お嬢様。」

ナターシャは私を抱きしめてくれる。

私が泣いた時はいつも私を優しく抱きしめてくれる。

公爵家の令嬢としてふさわしくあれ、なんて言わない。

甘えてる、そういわれるかもしれないけれど、私はちゃんと私のことを見てくれるナターシャが好きだった。

「私も大好きよ、ナターシャ。」

私がそう言うとナターシャはいつもすごく嬉しそうに笑う。

「お嬢様、さ、早く着替えましょう。旦那様と奥様、それに坊ちゃまがお待ちです。」

「うん、そうだね。」

気が付いたら涙はとまっていた。

「お嬢様、どっちのドレスにしますか?」

ナターシャはソファーの上に丁寧に置かれているドレスを私の前に持ってきた。

これは誰かがきれいにしてくれた・・・ナターシャ以外の誰かが。

私はさっと部屋の全体に視線を向けた。

ナターシャ以外の侍女が一人、扉付近で控えている。

たしか、あの子の名前は・・・エリナ、だったかしら。

ええ、確かにエリナだわ。

エリナ・スレイブ伯爵令嬢。

スレイブ伯爵家の三女。

「お嬢様、どうかしましたか?」

ナターシャの声に現実に引き戻された。

「ううん、何でもない。ええと、ドレスだったよね。うーん、ナターシャとエリナのおすすめがいいな。」

その一言にナターシャはぱあっと笑顔になり、一方エリナは目を見開いた。

うん、そういう反応になるのはよくわかるわ。

今まで専属侍女なのに専属侍女らしい仕事あまりできなかったのだから。

一周目の時間軸では、私はナターシャだけを可愛がり、もう一人の専属侍女であるエリナを放置した。

それによりエリナの実家であるスレイブ伯爵家との仲もこじれてしまった。

それでもエリナは私が嫁ぐまでずっと私に仕えてくれた。

途中で辞めることだってできたのに。

「お嬢様、私がナターシャさんと一緒に選んでもいいのですか?」

エリナが声を震わせている。

「うん。エリナ、今までごめんね。これからはちゃんと二人にお世話してもらいたいな!」

私がそう言うとナターシャは感動したように、すばらしいですお嬢様、と言った。

「ありがとう、ございます。」

目から涙を流したエリナはナターシャのもとに駆けよった。

「このドレスもお似合いですよね。」

「このドレスも捨てがたいわ。」

二人は時間を忘れてドレスを吟味し始めた。

「もう、二人ったら。朝食の時間に遅れちゃうじゃない。」

私は二人に聞こえないくらいの声量でつぶやいた。
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