自殺したお飾り皇太子妃は復讐を望む ~二周目の君は変われない~

ルー

文字の大きさ
5 / 16

一周目の時間軸では(1)side皇太子シオン

しおりを挟む
更新が遅くなり申し訳ありません。更新できなかった三話を連続で出したいと思います。お気に入り登録してくださると執筆の励みになります。平日は更新できない日があるかもしれません。その場合は土日にまとめて更新したいと思います。
ここからはしばらく一周目の時間軸でのお話になります。最後までお付き合いくださるとうれしいです。


――――――――――――――――――――――――――――――――――




そんなつもりはなかった。

まさかハルが自殺するとは思わなかった。

本当はリーシャにお願いされて、ただ何かしら理由をつけて頬を叩いて終わりにするつもりだった。

なのにこんなことになるなんて。

久しぶりに会ったハルは少しやつれていた。

痩せていて、型の古いドレスに身を包んでいた。

連れてきている侍女は明らかに身分の低い侍女たちだった。

それを理由にしてハルの頬を叩いて、すぐにハルから何らかの反応があると思っていた。

だけど、ハルはずっと黙っていた。

下を向いて、叩いた頬をおさえていた。

いつまでも何も言わないハルにしびれを切らした。

「・・・そんなに私のことが憎いのですね。」

やっと口を開いたかと思えば出てきた言葉はどこか諦めたような言葉だった。

だから、思わず言っていた。

「誰が憎いと言った?リーシャが、シャトレッタ男爵令嬢ではなく、ルトルバード侯爵家に養女として入ることになったからお前は用済みだから出て行けと言ったんだ。」

リーシャが顔色を変えて、慌てて僕の服の裾を引っ張る。

ルトルバード侯爵家なんて存在しない。

僕が勝手に作った仮想の侯爵家。

とっさに口に出たありもしない家名。

ハルの表情が凍った。

こいつ、何を言ってるんだというような表情で何も言わずただただ固まっている。

不意に諦めたように笑うと言った。

「分かりました、殿下。ですが殿下、あんまりだとは思いませんか?もう、私、笑って許すことなんてできません。」

その言葉にん?と思った。

もう、笑って許すことはできない。

確かに今、そう言った。

何故だかとても嫌な予感がした。

そして、それは的中してしまった。

「一生後悔してください、殿下。」

あっという間だった。

すぐ側に立っていた私の護衛である近衛騎士のヒューリーの剣を抜くと自らの胸に突き刺したのだ。

とめる暇はなかった。

「ハル!?」

ぎょっとして慌てて駆け寄った。

何故命を絶とうとしたのかがわからなかった。

「ハル!なんで?どうして!!」

リーシャが僕の側でおろおろとしていた。

ヒューリーは血の気の引いた顔でただ立ち尽くしている。

その後、僕とリーシャはそれぞれの自室に戻された。

二日後のことだった。

僕は父である国王陛下に呼ばれ、謁見の間に来ていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

真実の愛の祝福

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
皇太子フェルナンドは自らの恋人を苛める婚約者ティアラリーゼに辟易していた。 だが彼と彼女は、女神より『真実の愛の祝福』を賜っていた。 それでも強硬に婚約解消を願った彼は……。 カクヨム、小説家になろうにも掲載。 筆者は体調不良なことも多く、コメントなどを受け取らない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。

〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」 その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。 「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」

【完】お望み通り婚約解消してあげたわ

さち姫
恋愛
婚約者から婚約解消を求められた。 愛する女性と出会ったから、だと言う。 そう、それなら喜んで婚約解消してあげるわ。 ゆるゆる設定です。3話完結で書き終わっています。

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目の人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

幼馴染み同士で婚約した私達は、何があっても結婚すると思っていた。

喜楽直人
恋愛
領地が隣の田舎貴族同士で爵位も釣り合うからと親が決めた婚約者レオン。 学園を卒業したら幼馴染みでもある彼と結婚するのだとローラは素直に受け入れていた。 しかし、ふたりで王都の学園に通うようになったある日、『王都に居られるのは学生の間だけだ。その間だけでも、お互い自由に、世界を広げておくべきだと思う』と距離を置かれてしまう。 挙句、学園内のパーティの席で、彼の隣にはローラではない令嬢が立ち、エスコートをする始末。 パーティの度に次々とエスコートする令嬢を替え、浮名を流すようになっていく婚約者に、ローラはひとり胸を痛める。 そうしてついに恐れていた事態が起きた。 レオンは、いつも同じ令嬢を連れて歩くようになったのだ。

私のことを愛していなかった貴方へ

矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。 でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。 でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。 だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。 夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。 *設定はゆるいです。

処理中です...