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一周目の時間軸では(4)side兄
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登場人物をのせるのを忘れていました。読まなければわからないところもあると思いますのでよければ読んでみてください。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
後悔、していた。
妹を、何よりも可愛い妹をシオンに嫁がせたことを。
ハルとシオンの婚約が決まったのは、ハルが七歳の時だった。
シオンがハルに一目ぼれしたのだ。
シオンは皇帝陛下に頼み込み、王命で婚約を成立させた。
ハルは最初は嫌がったていた。
「第一印象が最悪なのよ。初めてあった人にあんなことを平気で言える人なんかと結婚したくないわ!」
ハルとシオンが初めて会ったのはハルが五歳の誕生日のパーティーでのこと。
挨拶周りに出かけていた私はその時、何があったのかはわからなかった。
だけど、ハルは酷く怯えていた。
ハルと仲の良い令嬢たちも震えあがっていた。
一体何を言われたのか。
ハルも、他の令嬢たちも決して教えてくれなかった。
「言ったらきっと殿下に殺されるわ。」
ベットでうずくまり、お気に入りの毛布を握りしめたハルは震えていた。
なにを言われたのか。
あの時シオンが何を言ったのか、結局それを知ることができたのはハルが自殺した後だった。
ハルと仲の良かった令嬢、いやもう結婚しているから夫人になるが、彼女が教えてくれた。
「ハル様は、皇太子殿下に『なんで皇子である僕よりも目立っているんだ。君は将来僕に仕えるのだから僕よりも目立っちゃ駄目だろう。もしかしてこの僕を怒らせたいのか?たかだか公爵家など父上の力でどうとでも出来るんだからな!!』そう言われました。私たちが聞いていたのはそれだけでした。殿下がハル様だけを連れてテラスに行ってしまわれたので。」
だから私はシオンに問い詰めに行った。
皇后陛下が離婚しつらいだろう、などと言っている馬鹿なんていなかった。
馬鹿なことをしたシオンと皇帝陛下のせいでこの国はもうすぐ終わるのだから。
ハルは、それを予期していたのだろうか?
ハルが自殺して、すぐに皇宮に行ったとき、シオンはあんなにやつれていなかった。
そう思うほどのシオンはやつれていた。
「皇太子の執務に追われているもういなくなる僕になんの用だ。」
その一言に私はもうこいつは終わりだと、思った。
何も分かっていない。
こいつは最初から上っ面だけをよく見せていたただの能無しだったんだと。
「ハルに、あの時何を言った?」
あの時、だけで通じた。
あいつは狂ったように笑いながら言った。
「ああ、あの時のことかい!?テラスで話したことだよね?覚えてるよ。」
「何を言ったんだ!?」
私が怒鳴ると、あいつは冷たい表情をして言った。
「なんでお前は両親から、家族から愛されている?なんでちょっとかわいいだけで愛されてるんだ。お前なんか死ねばいいのに。・・・だったかな?」
「ふざけるな!!」
私はとっさにあいつの胸ぐらを掴んでいた。
「お、お前。皇太子である僕にこんなことをしてただですむと思うなよ!」
はっ、相変わらずお頭が弱い。
「お前はもうすぐ皇太子じゃなくなる。そんないてもいなくても変わらない皇太子なんて誰が恐れるか。」
あいつの言ったことは最低だった。
なにが死ねばいい、だ。
違うだろ?
「お前が死ねばよかったんだよ、シオン。」
その言葉に目を見開くあいつの顔に言葉を叩きつけてやった。
「ハルはそれだけ傷ついていたよ。何日も寝込んでずっと泣いてた。お前はハルの幸せを奪いたいがためにハルとの婚約を結ばせた。愛されているハルを殺したくて。違うか?」
私のその言葉をシオンは鼻で笑った。
「はっ、お前だってハルを追い詰めたくせに。どの口が言ってるんだ。」
「ああ、私達だって君と同罪だよ。でもね、シオン。お前は一人の幼い少女の心を踏みにじったんだ。それに、王命を私たちが断れるわけが、ないだろう?ハルがどんなに嫌がっても、王命は王命だ。公爵家の一子息にどうこうできる問題ではない。それでも、ハルは私たちがこの婚約をどうにかしてくれると、期待していたんだろうな・・・。」
「そうだ。お前はそんなハルの思いを踏みにじったんだ。」
お前がそれを言うか?
「ハルの不幸を願ったお前が一体何を言ってるんだ。お前が婚約なんて願わなければ今頃ハルは幸せに生きていただろうに。さっきも言ったように、私達には王命は覆すことはできない。そのまま婚約を結んできた私たちを見てハルはどれだけ絶望しただろうな。『皇子様の嘘つき!私は、愛されてなんかいないのに!』あの子はそう、叫んだんだよ。お前は、どう責任をとる?ハルの死の直接の原因となったお前はどうやってハルに償う?」
私の言葉に、あいつはまともに返事すらしなかった。
「もう、いいよ。お前に期待した、私が馬鹿だった。もう、これまでだ。二度と関わらないでくれ。」
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後悔、していた。
妹を、何よりも可愛い妹をシオンに嫁がせたことを。
ハルとシオンの婚約が決まったのは、ハルが七歳の時だった。
シオンがハルに一目ぼれしたのだ。
シオンは皇帝陛下に頼み込み、王命で婚約を成立させた。
ハルは最初は嫌がったていた。
「第一印象が最悪なのよ。初めてあった人にあんなことを平気で言える人なんかと結婚したくないわ!」
ハルとシオンが初めて会ったのはハルが五歳の誕生日のパーティーでのこと。
挨拶周りに出かけていた私はその時、何があったのかはわからなかった。
だけど、ハルは酷く怯えていた。
ハルと仲の良い令嬢たちも震えあがっていた。
一体何を言われたのか。
ハルも、他の令嬢たちも決して教えてくれなかった。
「言ったらきっと殿下に殺されるわ。」
ベットでうずくまり、お気に入りの毛布を握りしめたハルは震えていた。
なにを言われたのか。
あの時シオンが何を言ったのか、結局それを知ることができたのはハルが自殺した後だった。
ハルと仲の良かった令嬢、いやもう結婚しているから夫人になるが、彼女が教えてくれた。
「ハル様は、皇太子殿下に『なんで皇子である僕よりも目立っているんだ。君は将来僕に仕えるのだから僕よりも目立っちゃ駄目だろう。もしかしてこの僕を怒らせたいのか?たかだか公爵家など父上の力でどうとでも出来るんだからな!!』そう言われました。私たちが聞いていたのはそれだけでした。殿下がハル様だけを連れてテラスに行ってしまわれたので。」
だから私はシオンに問い詰めに行った。
皇后陛下が離婚しつらいだろう、などと言っている馬鹿なんていなかった。
馬鹿なことをしたシオンと皇帝陛下のせいでこの国はもうすぐ終わるのだから。
ハルは、それを予期していたのだろうか?
ハルが自殺して、すぐに皇宮に行ったとき、シオンはあんなにやつれていなかった。
そう思うほどのシオンはやつれていた。
「皇太子の執務に追われているもういなくなる僕になんの用だ。」
その一言に私はもうこいつは終わりだと、思った。
何も分かっていない。
こいつは最初から上っ面だけをよく見せていたただの能無しだったんだと。
「ハルに、あの時何を言った?」
あの時、だけで通じた。
あいつは狂ったように笑いながら言った。
「ああ、あの時のことかい!?テラスで話したことだよね?覚えてるよ。」
「何を言ったんだ!?」
私が怒鳴ると、あいつは冷たい表情をして言った。
「なんでお前は両親から、家族から愛されている?なんでちょっとかわいいだけで愛されてるんだ。お前なんか死ねばいいのに。・・・だったかな?」
「ふざけるな!!」
私はとっさにあいつの胸ぐらを掴んでいた。
「お、お前。皇太子である僕にこんなことをしてただですむと思うなよ!」
はっ、相変わらずお頭が弱い。
「お前はもうすぐ皇太子じゃなくなる。そんないてもいなくても変わらない皇太子なんて誰が恐れるか。」
あいつの言ったことは最低だった。
なにが死ねばいい、だ。
違うだろ?
「お前が死ねばよかったんだよ、シオン。」
その言葉に目を見開くあいつの顔に言葉を叩きつけてやった。
「ハルはそれだけ傷ついていたよ。何日も寝込んでずっと泣いてた。お前はハルの幸せを奪いたいがためにハルとの婚約を結ばせた。愛されているハルを殺したくて。違うか?」
私のその言葉をシオンは鼻で笑った。
「はっ、お前だってハルを追い詰めたくせに。どの口が言ってるんだ。」
「ああ、私達だって君と同罪だよ。でもね、シオン。お前は一人の幼い少女の心を踏みにじったんだ。それに、王命を私たちが断れるわけが、ないだろう?ハルがどんなに嫌がっても、王命は王命だ。公爵家の一子息にどうこうできる問題ではない。それでも、ハルは私たちがこの婚約をどうにかしてくれると、期待していたんだろうな・・・。」
「そうだ。お前はそんなハルの思いを踏みにじったんだ。」
お前がそれを言うか?
「ハルの不幸を願ったお前が一体何を言ってるんだ。お前が婚約なんて願わなければ今頃ハルは幸せに生きていただろうに。さっきも言ったように、私達には王命は覆すことはできない。そのまま婚約を結んできた私たちを見てハルはどれだけ絶望しただろうな。『皇子様の嘘つき!私は、愛されてなんかいないのに!』あの子はそう、叫んだんだよ。お前は、どう責任をとる?ハルの死の直接の原因となったお前はどうやってハルに償う?」
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