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11.暗雨
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目を覚ますと、私は自部屋にいた。部屋の窓から無数の雨滴と真夜中の住宅街が見える。喉が乾いていたので水を飲もうと思い、一階に降りていった。誰もが寝静まり、夜闇に包まれている筈の部屋に明かりが灯っていた。家族が話す声が微かに聞こえてくる。私は好奇と不安に駆られながら、その会話に耳をそばだてた。
「この間の言葉を聞いたでしょう? あの子はきっと記憶を取り戻しつつあるわ」
「例え昔の事を思い出したとしても、何も変わらないさ。いつもみたいに過ごせばいいよ」
「だが、真実を思い出したら花月はどう思うだろうか? 実の両親の事を思い出したら……」
三人は何を話しているのだろう。彼らの会話に理解が追い付かないかった。実の両親とは誰の事だ。今まで平然と彼らとこの家で暮らしてきたが、私は彼らとは異なる種類の人間だったのか。なら私は……私という存在はなんなのだ。
「……私は誰なの?」
心の声が漏れていた。驚く家族の視線が私を突き刺す。彼らは大きく目を見開き、息を呑み、その場にいてはいけない人間を見るように私を見ている。どうやらここは私の居場所ではないらしい。気付けば、脚が勝手に動き出していた。
「花月!」
玄関の扉が閉まる音と共に、家族だった人の声が私の背中を掠めた。
あたたかな我が家という幻想の領域から抜け出すと、冷たい雨が私を迎え入れた。現実の寒さに触れると、火照った私の脳髄は冷静さを取り戻し、これまで抱いていた違和感の正体を明らかにさせた。
人は誰もがこの世界に生まれ落ちた時の事は覚えていないが、生誕から幼年へ、そして少女になる過程の一部を脳裏の片隅に保っている。私はそれを思考の表層に浮かび上がらせる能力を持っていない。自己が成長する流れを脳内に全く再現できない私は、いつの間にか少女であった。
私の深部には恐らく、不明な記憶が澱のように沈んでいるが、彼らは決してそこに踏み込もうとはしなかった。彼らの抑制的な振る舞いは、私との間に見えない壁を生んだ。これまで抱いていた違和感の正体は、恐らく疎外感だ。私は家族という機構において、記憶という歯形を削られ、他と噛み合わずに空回りするだけの歯車だったのだ。
どうして彼らは私の記憶の復活を避けようとしたのだろうか。何か不都合があるのは確かだろう。しかし、その不都合が私を傷付ける物なのか、それとも彼らを脅かす物なのかは分からない。私の海馬の深層に眠っている沈殿物には、一体どんな猛毒が含まれているのだろう。
沈んだ記憶の性質が何であったとしても、私は彼らに裏切られたという思いを抱き、独りでに失望していた。そして、今まで幸福な生活を与えてくれた彼らに対して、悪感情を抱いてしまう自分自身にも失望していた。彼らの恩情は清浄だという確信があるのに、私は湧き上がる猜疑心を消し去る事ができない。相反する二つの情動が胸の内でせめぎ合うのが苦痛だった。苦痛から逃げるように私は宛もなく走り続けた。
激しさを増していた夜雨は、私の心の淀みを洗い流す機能を備えていないが、代わりに私の気力と体力を着々と奪う威力を持っていた。今の私に残されているのは、くたびれた心身と得体の知れない素性だけだ。疲れ果てたせいか、躓いて雨水が滴る地面に倒れ込んだ。泥濘を掴みながら立ち上がり、また意味も無く歩き始める。
仄白い街灯の下、乱れ切った泥塗れの髪の中に、青く薄暗い光を見出した。葉一から貰った深みのある青色のリボン。それを見て、明日にピアノの演奏会がある事を思い出す。演奏が上手くいくように、髪にリボンを結んで眠った。葉一から教わったおまじないだった。しかし、手遅れだ。私はもうピアノの前に立つ事すら叶わない。
そう、何もかも手遅れだ。
私と彼らとの間にある壁は、より明確に現れ、より厚みを増していた。私が望めば、彼らは私の愚行を責める事なく、温かく迎え入れてくれるだろう。だが、深い亀裂を携えた私の心は、安易な願望を決して許さなかった。彼らとの関係を元に戻せる未来が見えない。諦念が脳内を埋め尽くすと、私の脚は自ずと動きを止めた。
目の前には見知った河川が流れている。普段は澄んだせせらぎを湛える川だったが、昼間から降りしきる雨のせいで、茶色い飛沫を激しく踊らせる濁流に変わっていた。一変した川の様相は、私の内情と重なって見えた。
「花月」
背後からの声に振り返る。ずぶ濡れになった葉一の姿がそこにあった。
「俺達の家に帰ろう、花月」
「あなたの家は、私の家じゃない」
「そんな事ない。俺達は家族だろう。帰る家だって同じだ」
「私とあなた達は本物の家族じゃないんでしょう? 三人でこそこそと話し合って、偽物の私の事を笑っていたんだ」
私は詰るような鋭い語調で話した。相手の過失を露呈させ、自分を正当化する為に。前者の目論見は見事に的中し、葉一の表情はこちらが切なくなるほどに曇った。しかし、悪意を持たない相手に対する攻撃は、決して私の立場に正しさを与える行為ではなかった。むしろ、揚げ足を取るような狡猾さは自分の弱さを再認識させ、自己嫌悪への陥落を招いた。弱い人間が吐く強い言葉は、巡り巡って己自身をも傷付ける。
「それなら、今から本物になればいい。その機会はまだ消えちゃいない。だから、早くこっちに来るんだ」
「もう無理だよ。あなた達の事を信じられない。……どうして私の事を隠していたの? なんで私は昔の事が思い出せないの? 私って一体なんなの?」
積み重なる疑問は、理性を後退させる。私は周囲の状況を把握する視野を失っていた。いつの間にか、足元が水浸しになっている。轟音と共に河川から流れ出た夥しい量の濁水が私の体を攫った。
「花月、手を伸ばせ!」
葉一が叫びながら手を伸ばしてきた。私の手を何度も握ってきた逞しい手のひらが目に映る。声に従って手を伸ばしたが、彼の手を掴めたかは分からない。私の全身は激流に呑まれ、意識は水の中に消えてしまった。
✦
目を開けると、殺風景な白い天井が見えた。無機質な電子音が、短く淡々と規則的に鳴っている。私の体は医療機器に囲まれたベッドの上に横たわっていた。どうやら何処かの病院の中にいるらしい。
全身が鉛のように重く、視線を動かすのが精一杯だったが、できる限りで辺りを見回す。周囲には灰色の医療機器が並び立ち、ベッドの傍らに置かれたサイドテーブルの上には、ガラス製の花瓶が置いてあった。身動きのできない体からは、無数の管が伸びている。
河川の氾濫に巻き込まれた事までは覚えているが、その後に何があったのかは分からない。あの時、私は葉一の手を掴めたのだろうか。
不意に病室の扉が開き、沈痛な面持ちを浮かべるかつての両親が現れた。私の耳元に届かない微かな声で会話をする彼らに向かって、私は「なにが、あったの?」と声を掛けた。自分でも予想だにしない弱々しい発声だったが、私の覚醒を報せるには充分な声量だった。
私の瞼が開いた事に気付いた二人は、慌てて医師や看護師を病室に呼び寄せた。医師は私の容態に関する質問をいくつかした後、私が増水した川に落ちて、溺れかけた事を説明した。偶然、岸辺に漂着したおかげで溺死せずに済んだらしい。私は命からがら助かったが、事故が起きてから一週間は眠ったままだったと言う。
「葉一はどうなったの?」
私の身に起こった事より、私を助けようとした人物の所在が気になった。しかし、その場にいた誰もが口を噤み、私の問いに対する回答を躊躇っていた。戸惑う私を見兼ねて、かつての父が遂に沈黙を破った。
「葉一がこれを握り締めていた」
彼は手のひらに何かを乗せて、私の目前に差し出した。ボロボロになった青いリボン。今にも千切れてしまいそうなその品は、葉一の末路を示唆していた。
「一昨日、増水した川の河口付近で、葉一の――」
かつての父が何かを説明し続ける。突然始まった耳鳴りのせいで、その内容は殆ど聞き取れなかった。しかし、辛うじて聞き取る事ができた曖昧な言葉達が思考の中で組み合わさり、一つの確信的な事実が脳裏に浮かび上がった。
葉一は私を助ける為に死んだ。私のせいで死んだ。葉一は私が……。
頭の中で己の過ちを反復する。罪悪感は私の精神を執拗に蝕んだ。足元には自責と自罰が蠢く暗黒の淵が広がっている。私の意識は底知れぬ闇への墜落を始めた。
✦
ある日、病院に搬送される際に身に付けていた衣服を、看護師から渡された。上着のポケットには、クローゼットの中で拾った得体の知れぬロザリオが入ったままだった。私は訪問者が気付くように、ロザリオを態とサイドテーブルの目立つ場所に置いた。
かつての父が見舞いに来た。彼は葉一の事は口にせず、私の調子や病院の事、学校の事、様々な他愛のない事を話し続けた。私は応答性が不足した機械のように、無感情な生返事を繰り返し、会話を破綻に近付けた。私の軽薄な反応を見兼ねたのか、かつての父はとうとう世間話を断念する。私は、彼の言葉には全く興味の無いふりをしていたが、彼の動向は入念に観察していた。おかげで、会話を諦めた彼の視線がロザリオに向かった瞬間、表情が強張ったのをはっきりとこの目で捉える事ができた。
「そのロザリオは何?」
冷たい口調で詰問するように尋ねると、かつての父は驚いた表情を見せた。しかし、彼の開いた口は直ぐに閉じてしまう。沈黙によって白を切る腹積もりが伺えたので、私は新たな問いを投げ掛けた。
「それは私の両親のもの?」
私の推測が当たっていたのか、彼は重い溜め息を吐いた。しばらく考える素振りを見せた後、観念したように彼は言った。
「分かった。お前の両親について話そう」
「この間の言葉を聞いたでしょう? あの子はきっと記憶を取り戻しつつあるわ」
「例え昔の事を思い出したとしても、何も変わらないさ。いつもみたいに過ごせばいいよ」
「だが、真実を思い出したら花月はどう思うだろうか? 実の両親の事を思い出したら……」
三人は何を話しているのだろう。彼らの会話に理解が追い付かないかった。実の両親とは誰の事だ。今まで平然と彼らとこの家で暮らしてきたが、私は彼らとは異なる種類の人間だったのか。なら私は……私という存在はなんなのだ。
「……私は誰なの?」
心の声が漏れていた。驚く家族の視線が私を突き刺す。彼らは大きく目を見開き、息を呑み、その場にいてはいけない人間を見るように私を見ている。どうやらここは私の居場所ではないらしい。気付けば、脚が勝手に動き出していた。
「花月!」
玄関の扉が閉まる音と共に、家族だった人の声が私の背中を掠めた。
あたたかな我が家という幻想の領域から抜け出すと、冷たい雨が私を迎え入れた。現実の寒さに触れると、火照った私の脳髄は冷静さを取り戻し、これまで抱いていた違和感の正体を明らかにさせた。
人は誰もがこの世界に生まれ落ちた時の事は覚えていないが、生誕から幼年へ、そして少女になる過程の一部を脳裏の片隅に保っている。私はそれを思考の表層に浮かび上がらせる能力を持っていない。自己が成長する流れを脳内に全く再現できない私は、いつの間にか少女であった。
私の深部には恐らく、不明な記憶が澱のように沈んでいるが、彼らは決してそこに踏み込もうとはしなかった。彼らの抑制的な振る舞いは、私との間に見えない壁を生んだ。これまで抱いていた違和感の正体は、恐らく疎外感だ。私は家族という機構において、記憶という歯形を削られ、他と噛み合わずに空回りするだけの歯車だったのだ。
どうして彼らは私の記憶の復活を避けようとしたのだろうか。何か不都合があるのは確かだろう。しかし、その不都合が私を傷付ける物なのか、それとも彼らを脅かす物なのかは分からない。私の海馬の深層に眠っている沈殿物には、一体どんな猛毒が含まれているのだろう。
沈んだ記憶の性質が何であったとしても、私は彼らに裏切られたという思いを抱き、独りでに失望していた。そして、今まで幸福な生活を与えてくれた彼らに対して、悪感情を抱いてしまう自分自身にも失望していた。彼らの恩情は清浄だという確信があるのに、私は湧き上がる猜疑心を消し去る事ができない。相反する二つの情動が胸の内でせめぎ合うのが苦痛だった。苦痛から逃げるように私は宛もなく走り続けた。
激しさを増していた夜雨は、私の心の淀みを洗い流す機能を備えていないが、代わりに私の気力と体力を着々と奪う威力を持っていた。今の私に残されているのは、くたびれた心身と得体の知れない素性だけだ。疲れ果てたせいか、躓いて雨水が滴る地面に倒れ込んだ。泥濘を掴みながら立ち上がり、また意味も無く歩き始める。
仄白い街灯の下、乱れ切った泥塗れの髪の中に、青く薄暗い光を見出した。葉一から貰った深みのある青色のリボン。それを見て、明日にピアノの演奏会がある事を思い出す。演奏が上手くいくように、髪にリボンを結んで眠った。葉一から教わったおまじないだった。しかし、手遅れだ。私はもうピアノの前に立つ事すら叶わない。
そう、何もかも手遅れだ。
私と彼らとの間にある壁は、より明確に現れ、より厚みを増していた。私が望めば、彼らは私の愚行を責める事なく、温かく迎え入れてくれるだろう。だが、深い亀裂を携えた私の心は、安易な願望を決して許さなかった。彼らとの関係を元に戻せる未来が見えない。諦念が脳内を埋め尽くすと、私の脚は自ずと動きを止めた。
目の前には見知った河川が流れている。普段は澄んだせせらぎを湛える川だったが、昼間から降りしきる雨のせいで、茶色い飛沫を激しく踊らせる濁流に変わっていた。一変した川の様相は、私の内情と重なって見えた。
「花月」
背後からの声に振り返る。ずぶ濡れになった葉一の姿がそこにあった。
「俺達の家に帰ろう、花月」
「あなたの家は、私の家じゃない」
「そんな事ない。俺達は家族だろう。帰る家だって同じだ」
「私とあなた達は本物の家族じゃないんでしょう? 三人でこそこそと話し合って、偽物の私の事を笑っていたんだ」
私は詰るような鋭い語調で話した。相手の過失を露呈させ、自分を正当化する為に。前者の目論見は見事に的中し、葉一の表情はこちらが切なくなるほどに曇った。しかし、悪意を持たない相手に対する攻撃は、決して私の立場に正しさを与える行為ではなかった。むしろ、揚げ足を取るような狡猾さは自分の弱さを再認識させ、自己嫌悪への陥落を招いた。弱い人間が吐く強い言葉は、巡り巡って己自身をも傷付ける。
「それなら、今から本物になればいい。その機会はまだ消えちゃいない。だから、早くこっちに来るんだ」
「もう無理だよ。あなた達の事を信じられない。……どうして私の事を隠していたの? なんで私は昔の事が思い出せないの? 私って一体なんなの?」
積み重なる疑問は、理性を後退させる。私は周囲の状況を把握する視野を失っていた。いつの間にか、足元が水浸しになっている。轟音と共に河川から流れ出た夥しい量の濁水が私の体を攫った。
「花月、手を伸ばせ!」
葉一が叫びながら手を伸ばしてきた。私の手を何度も握ってきた逞しい手のひらが目に映る。声に従って手を伸ばしたが、彼の手を掴めたかは分からない。私の全身は激流に呑まれ、意識は水の中に消えてしまった。
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目を開けると、殺風景な白い天井が見えた。無機質な電子音が、短く淡々と規則的に鳴っている。私の体は医療機器に囲まれたベッドの上に横たわっていた。どうやら何処かの病院の中にいるらしい。
全身が鉛のように重く、視線を動かすのが精一杯だったが、できる限りで辺りを見回す。周囲には灰色の医療機器が並び立ち、ベッドの傍らに置かれたサイドテーブルの上には、ガラス製の花瓶が置いてあった。身動きのできない体からは、無数の管が伸びている。
河川の氾濫に巻き込まれた事までは覚えているが、その後に何があったのかは分からない。あの時、私は葉一の手を掴めたのだろうか。
不意に病室の扉が開き、沈痛な面持ちを浮かべるかつての両親が現れた。私の耳元に届かない微かな声で会話をする彼らに向かって、私は「なにが、あったの?」と声を掛けた。自分でも予想だにしない弱々しい発声だったが、私の覚醒を報せるには充分な声量だった。
私の瞼が開いた事に気付いた二人は、慌てて医師や看護師を病室に呼び寄せた。医師は私の容態に関する質問をいくつかした後、私が増水した川に落ちて、溺れかけた事を説明した。偶然、岸辺に漂着したおかげで溺死せずに済んだらしい。私は命からがら助かったが、事故が起きてから一週間は眠ったままだったと言う。
「葉一はどうなったの?」
私の身に起こった事より、私を助けようとした人物の所在が気になった。しかし、その場にいた誰もが口を噤み、私の問いに対する回答を躊躇っていた。戸惑う私を見兼ねて、かつての父が遂に沈黙を破った。
「葉一がこれを握り締めていた」
彼は手のひらに何かを乗せて、私の目前に差し出した。ボロボロになった青いリボン。今にも千切れてしまいそうなその品は、葉一の末路を示唆していた。
「一昨日、増水した川の河口付近で、葉一の――」
かつての父が何かを説明し続ける。突然始まった耳鳴りのせいで、その内容は殆ど聞き取れなかった。しかし、辛うじて聞き取る事ができた曖昧な言葉達が思考の中で組み合わさり、一つの確信的な事実が脳裏に浮かび上がった。
葉一は私を助ける為に死んだ。私のせいで死んだ。葉一は私が……。
頭の中で己の過ちを反復する。罪悪感は私の精神を執拗に蝕んだ。足元には自責と自罰が蠢く暗黒の淵が広がっている。私の意識は底知れぬ闇への墜落を始めた。
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ある日、病院に搬送される際に身に付けていた衣服を、看護師から渡された。上着のポケットには、クローゼットの中で拾った得体の知れぬロザリオが入ったままだった。私は訪問者が気付くように、ロザリオを態とサイドテーブルの目立つ場所に置いた。
かつての父が見舞いに来た。彼は葉一の事は口にせず、私の調子や病院の事、学校の事、様々な他愛のない事を話し続けた。私は応答性が不足した機械のように、無感情な生返事を繰り返し、会話を破綻に近付けた。私の軽薄な反応を見兼ねたのか、かつての父はとうとう世間話を断念する。私は、彼の言葉には全く興味の無いふりをしていたが、彼の動向は入念に観察していた。おかげで、会話を諦めた彼の視線がロザリオに向かった瞬間、表情が強張ったのをはっきりとこの目で捉える事ができた。
「そのロザリオは何?」
冷たい口調で詰問するように尋ねると、かつての父は驚いた表情を見せた。しかし、彼の開いた口は直ぐに閉じてしまう。沈黙によって白を切る腹積もりが伺えたので、私は新たな問いを投げ掛けた。
「それは私の両親のもの?」
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