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35.血の覚醒
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祭りの後の寮部屋は、そこかしこで笑い声が聞こえてくる。パーティー自体は十時で終わってしまうが、その後の打ち上げは各部屋で思い思いに行われていた。
いつもは閑散としている廊下にも、それなりの往来があり、今日ばかりは朝まで騒いでいても許される。まだ仮装をしたままの生徒もおり、ぱっと見では何の格好をしているのか分からない生徒とすれ違った。
「レイ、そんな睨むなよ」
「これで済んでいるだけまだマシだと思え。そもそもなぜ誕生日のことを言わない?」
「いや、聞かれてなかったし……」
後ろをついて来るレイの視線がさっきから鋭い。背中にちくちくと刺さって、身が縮こまる思いだ。
「悪かったって。でも約束は約束だしよぉ……」
「分かっている。だが、部屋に戻ったら覚悟しておけよ」
誕生日のはずなのに、なぜかレイに脅され、リックはおかしくね? と首をひねる。想いを通わせて早々に厄介な男を好きになってしまったかもしれないと、リックは頭が痛くなった。まぁ、満更でもないけれど。
「ここだ」
リックの寮部屋から十五分ほどかけて、ノエルの寮部屋までたどり着く。
リックはコンコンと控えめに扉を叩いた。部屋の中から「はーい」という返事とともに足音が聞こえてくる。扉が開いた瞬間、ノエルはリックを見るなりパッと表情を明るくさせた。
「リック! 待ってた、よ……。ってなんで一人じゃないの?」
仏の顔から般若の顔へ、ノエルは一瞬で表情を崩すとリックに詰め寄った。
「ねぇ、なんで? 僕、レイは呼ぶなって言ったよね?」
「ごめん……。レイにバレちまって……」
「それに、パーティーの途中でいなくなるし。もしかしてレイと花の交換でもした?」
「…………」
図星を指されて、リックは口を噤む。ノエルは大きなため息をつくと、とりあえず中に入るよう二人を促した。
「ごめん、ノエル。でも……」
「もういいよ。こうして来てくれただけでも、目的は果たせるしね?」
「目的?」
「ああ、そうさ。君の力を得るためのね!」
アイドル、天使、美少女といっても過言ではないくらい可憐に笑うノエルが、口元を歪めて笑った。蛇に睨まれた蛙のように動けなくなったリックの体をノエルが引き寄せる。ふわりと体が浮いて後方に飛んでいくのと、それに気付いて咄嗟に向かってきたレイが天井に飛ばされるのはほぼ同時だった。
「レイ!!」
「アイツの心配より、自分の心配をした方がいいんじゃない?」
「ぐっ……!」
後ろから羽交い締めされ、リックは必死にノエルの腕から逃れようと身をひねる。ノエルは左腕でリックの首を絞めながら、右手をレイの方に向け、見えない力で押さえつけていた。
「お前、一体どうしたんだよ!?」
「どうもこうも気付いてるでしょう?」
ノエルがレイに向けていた右手を握り締める。それに合わせて、レイの体がさらに天井へと強く押し付けられた。
何もできずに呻くレイに対し、ノエルが素早く空中で指を動かす。突如、リックでも視認できるほどの大きな陣が浮かび上がり、レイを磔にするように男の両手両足を天井に拘束した。
「……ッ!」
「あまり暴れないほうがいいよ。君では僕に勝てないんだから!」
そう叫ぶノエルの目が紅く染まっている。やっぱり、見間違いなんかではない。とするならば、ノエルもレイと同じヴァンパイアだ。
「お前も……っ、レイと同じ吸血鬼だったのかよ……!」
「半分アタリで半分ハズレ、かな。君と同じようなものさ」
「俺と……?」
「あぁ、もうすぐ日付が変わるね」
ノエルが壁に掛けてある時計に視線を向ける。秒針がてっぺんを超えれば、リックの誕生日だ。十八歳の、誕生日。
秒針がカチッと十二時をさした瞬間、リックは咆哮を上げた。
「……う、ああっ……、アアアアアッ――――!!」
「始まったみたい」
――熱い、熱い、なんだこれ!!
全身が熱くて熱くてたまらない。今までの比ではないほどの熱さに、リックはガリガリと頭を掻きむしった。乱暴にソファーへ投げ飛ばされ、リックはその上でぐるぐるとのたうち回る。
――何かが皮膚を突き破って出てくる。
それは、リックの錯覚でもなんでもなかった。全身の毛が逆立ち、ソファーに手をついた指先が鋭く尖っていく。レイと負けず劣らずの尖った爪がソファーカバーに突き刺さった。
咥内に唾液が溜まり、ぼたぼたと手の甲に落ちる。長い舌先が、本来ないはずの牙に触れた。
「なん、なんだよ、これ……っ!」
「嗚呼、やっとこの姿になれたんだね、リック」
ノエルが恍惚とした表情でリックの顎先を持ち上げる。全身毛むくじゃらの体に、鋭利な牙と爪、そして頭には本来ないはずの耳と、尻には尻尾が生えていた。
「おめでとう、リック。君は狼男になったんだよ」
「は……?」
「僕は待ってたんだ、このときをずーっとね」
言っている意味が分からない。リックはわけも分からず、ノエルに体を引き寄せられた。
「うわっ!」
リックは強引にソファーの上に倒され、シャツを引きちぎられる。至極楽しそうにノエルは笑うと、リックの首筋を撫でた。
「君が狼男になるか五分五分だったけど、レイのおかげで覚醒したみたいだ」
「どういう意味だよ……! つか、レイは関係ねぇだろ!?」
「いや、あるよ。君は元々人間と狼のハーフさ。十八歳になるまで、どう転ぶか分からなかったんだけど……君、ずっとレイに吸血されてただろう?」
「そ、れは……」
「レイに吸血されて魔力量が増えたことで、狼の血が目覚めたのさ。僕はね、ずっとこのときを待ってたんだ。ただの人間じゃ、僕たちのような半端者にはあまり意味がないからね」
ノエルはリックの顔をソファーに押し付けると、まっさらな首筋に唇を寄せた。生暖かい息がかかって、軽く牙が触れる。
このまま、ノエルに血を吸われてしまう! と思った瞬間、ノエルの体が壁に飛んでいった。
「な、なんで……!」
「舐めるな。その程度で俺を殺せるとでも?」
レイが右手で左腕を擦りながら、壁に向かって歩いていく。拘束された箇所が、火傷でただれたように赤くなっていた。
「この陣、ヴァンパイアを拘束し、一定時間が経つと大きな炎となって燃やす力だろう?」
ノエルに向かって手を広げ、今度はレイが拳を握る。すると、ギリギリとノエルの首が締まった。
「唯一、ヴァンパイアを殺せるダンピールか。だが、残念だ。お前は知らないだろうが、俺は次期王位継承者。そこらをうろつくヴァンパイアとはわけが違う」
「ぐっ、あッ……!」
「このまま捻り殺してやる」
「ちょ、待て、レ、い…………」
なんとか攻撃をやめさせようと、リックは立ち上がる。だが、足がもつれて床に転がってしまった。
「ぅ゙……あ゙あああ、熱い……!」
少し動くだけで、全身が悲鳴を上げる。まともに立ち上がることもできず、リックは床に這いつくばった。
「リック! どうした!?」
「ハッ……、まだ魂が、作り変わる体に定着してないんでしょ」
「お前は黙ってろ!」
「ッ……!」
レイが怒声を上げ、ノエルを締め上げる。ノエルは肺から潰れたような声を出し、ごぽっと胃液を吐いた。
「大丈夫か!? リック」
「う……れ、い……俺っ、……ぐっ……」
「おい、お前! リックに何をした!」
レイが手を振り、ノエルを床に叩きつける。ノエルは、カハッと咳き込むと喉を押さえながら口を開いた。
「さっきも言ったでしょ。リックは元々、人間と狼のハーフさ。十八歳の誕生日で、人間のままでいられるか、狼になるかが決まるんだ。僕は、ずっとリックが狼男になるのを待ってたのさ。正直、五分五分だったけど、あんたの魔力がそうさせた。リックがこうなったのは、お前のせいなんだよ、レイ」
ノエルが空中で陣を作る。その陣をレイは炎で消した。みるみるうちに炎がノエルの体を包み込む。
「うわああああ!!」
「もういい。お前は今ここで殺す。俺のものに手を出そうとしたんだ。それだけで殺す理由になる」
「……や、やめろっ、レイ……!」
なんとか腕を動かし、レイの手を掴む。
レイに殺しなどさせたくない。それに、ノエルが言うことが本当なのであれば、こうなったのは元々自分の中に流れる血のせいだ。誰も悪くない。
「お、俺は……大丈夫、だから……!」
「だが……」
「な? おれは、だいじょーぶ、だから……」
息をするたびにゼェゼェと気管が詰まるような苦しさがある。体も熱く、少し動くだけでも痛みが走る。
だけど、リックは必死にレイを止めようと弱々しく笑って見せた。
「分かった。分かったからもう喋るな」
レイはリックの体を引き寄せ、そっと抱き上げる。ノエルは、ハッ、と鼻で笑うと、レイを睨み上げた。
「馬鹿なやつ。お前は僕たちと違って、人間からしか血を吸えないくせに」
「だからなんだ?」
「もう、リックの血しか飲めなくなってるんだろう? だけど、もうリックは人間じゃない。お前はこのまま飢えて、力を失うだけだ!」
「だとしても、お前にはやれん。それに、お前ごときに殺されるほど弱くもない」
床に放り出されていたノエルの手を踏みつけ、レイはリックを抱えたままゆっくりと歩き出す。
リックはレイの胸に顔を埋めると、温かな腕の中で目を閉じた。
いつもは閑散としている廊下にも、それなりの往来があり、今日ばかりは朝まで騒いでいても許される。まだ仮装をしたままの生徒もおり、ぱっと見では何の格好をしているのか分からない生徒とすれ違った。
「レイ、そんな睨むなよ」
「これで済んでいるだけまだマシだと思え。そもそもなぜ誕生日のことを言わない?」
「いや、聞かれてなかったし……」
後ろをついて来るレイの視線がさっきから鋭い。背中にちくちくと刺さって、身が縮こまる思いだ。
「悪かったって。でも約束は約束だしよぉ……」
「分かっている。だが、部屋に戻ったら覚悟しておけよ」
誕生日のはずなのに、なぜかレイに脅され、リックはおかしくね? と首をひねる。想いを通わせて早々に厄介な男を好きになってしまったかもしれないと、リックは頭が痛くなった。まぁ、満更でもないけれど。
「ここだ」
リックの寮部屋から十五分ほどかけて、ノエルの寮部屋までたどり着く。
リックはコンコンと控えめに扉を叩いた。部屋の中から「はーい」という返事とともに足音が聞こえてくる。扉が開いた瞬間、ノエルはリックを見るなりパッと表情を明るくさせた。
「リック! 待ってた、よ……。ってなんで一人じゃないの?」
仏の顔から般若の顔へ、ノエルは一瞬で表情を崩すとリックに詰め寄った。
「ねぇ、なんで? 僕、レイは呼ぶなって言ったよね?」
「ごめん……。レイにバレちまって……」
「それに、パーティーの途中でいなくなるし。もしかしてレイと花の交換でもした?」
「…………」
図星を指されて、リックは口を噤む。ノエルは大きなため息をつくと、とりあえず中に入るよう二人を促した。
「ごめん、ノエル。でも……」
「もういいよ。こうして来てくれただけでも、目的は果たせるしね?」
「目的?」
「ああ、そうさ。君の力を得るためのね!」
アイドル、天使、美少女といっても過言ではないくらい可憐に笑うノエルが、口元を歪めて笑った。蛇に睨まれた蛙のように動けなくなったリックの体をノエルが引き寄せる。ふわりと体が浮いて後方に飛んでいくのと、それに気付いて咄嗟に向かってきたレイが天井に飛ばされるのはほぼ同時だった。
「レイ!!」
「アイツの心配より、自分の心配をした方がいいんじゃない?」
「ぐっ……!」
後ろから羽交い締めされ、リックは必死にノエルの腕から逃れようと身をひねる。ノエルは左腕でリックの首を絞めながら、右手をレイの方に向け、見えない力で押さえつけていた。
「お前、一体どうしたんだよ!?」
「どうもこうも気付いてるでしょう?」
ノエルがレイに向けていた右手を握り締める。それに合わせて、レイの体がさらに天井へと強く押し付けられた。
何もできずに呻くレイに対し、ノエルが素早く空中で指を動かす。突如、リックでも視認できるほどの大きな陣が浮かび上がり、レイを磔にするように男の両手両足を天井に拘束した。
「……ッ!」
「あまり暴れないほうがいいよ。君では僕に勝てないんだから!」
そう叫ぶノエルの目が紅く染まっている。やっぱり、見間違いなんかではない。とするならば、ノエルもレイと同じヴァンパイアだ。
「お前も……っ、レイと同じ吸血鬼だったのかよ……!」
「半分アタリで半分ハズレ、かな。君と同じようなものさ」
「俺と……?」
「あぁ、もうすぐ日付が変わるね」
ノエルが壁に掛けてある時計に視線を向ける。秒針がてっぺんを超えれば、リックの誕生日だ。十八歳の、誕生日。
秒針がカチッと十二時をさした瞬間、リックは咆哮を上げた。
「……う、ああっ……、アアアアアッ――――!!」
「始まったみたい」
――熱い、熱い、なんだこれ!!
全身が熱くて熱くてたまらない。今までの比ではないほどの熱さに、リックはガリガリと頭を掻きむしった。乱暴にソファーへ投げ飛ばされ、リックはその上でぐるぐるとのたうち回る。
――何かが皮膚を突き破って出てくる。
それは、リックの錯覚でもなんでもなかった。全身の毛が逆立ち、ソファーに手をついた指先が鋭く尖っていく。レイと負けず劣らずの尖った爪がソファーカバーに突き刺さった。
咥内に唾液が溜まり、ぼたぼたと手の甲に落ちる。長い舌先が、本来ないはずの牙に触れた。
「なん、なんだよ、これ……っ!」
「嗚呼、やっとこの姿になれたんだね、リック」
ノエルが恍惚とした表情でリックの顎先を持ち上げる。全身毛むくじゃらの体に、鋭利な牙と爪、そして頭には本来ないはずの耳と、尻には尻尾が生えていた。
「おめでとう、リック。君は狼男になったんだよ」
「は……?」
「僕は待ってたんだ、このときをずーっとね」
言っている意味が分からない。リックはわけも分からず、ノエルに体を引き寄せられた。
「うわっ!」
リックは強引にソファーの上に倒され、シャツを引きちぎられる。至極楽しそうにノエルは笑うと、リックの首筋を撫でた。
「君が狼男になるか五分五分だったけど、レイのおかげで覚醒したみたいだ」
「どういう意味だよ……! つか、レイは関係ねぇだろ!?」
「いや、あるよ。君は元々人間と狼のハーフさ。十八歳になるまで、どう転ぶか分からなかったんだけど……君、ずっとレイに吸血されてただろう?」
「そ、れは……」
「レイに吸血されて魔力量が増えたことで、狼の血が目覚めたのさ。僕はね、ずっとこのときを待ってたんだ。ただの人間じゃ、僕たちのような半端者にはあまり意味がないからね」
ノエルはリックの顔をソファーに押し付けると、まっさらな首筋に唇を寄せた。生暖かい息がかかって、軽く牙が触れる。
このまま、ノエルに血を吸われてしまう! と思った瞬間、ノエルの体が壁に飛んでいった。
「な、なんで……!」
「舐めるな。その程度で俺を殺せるとでも?」
レイが右手で左腕を擦りながら、壁に向かって歩いていく。拘束された箇所が、火傷でただれたように赤くなっていた。
「この陣、ヴァンパイアを拘束し、一定時間が経つと大きな炎となって燃やす力だろう?」
ノエルに向かって手を広げ、今度はレイが拳を握る。すると、ギリギリとノエルの首が締まった。
「唯一、ヴァンパイアを殺せるダンピールか。だが、残念だ。お前は知らないだろうが、俺は次期王位継承者。そこらをうろつくヴァンパイアとはわけが違う」
「ぐっ、あッ……!」
「このまま捻り殺してやる」
「ちょ、待て、レ、い…………」
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「ぅ゙……あ゙あああ、熱い……!」
少し動くだけで、全身が悲鳴を上げる。まともに立ち上がることもできず、リックは床に這いつくばった。
「リック! どうした!?」
「ハッ……、まだ魂が、作り変わる体に定着してないんでしょ」
「お前は黙ってろ!」
「ッ……!」
レイが怒声を上げ、ノエルを締め上げる。ノエルは肺から潰れたような声を出し、ごぽっと胃液を吐いた。
「大丈夫か!? リック」
「う……れ、い……俺っ、……ぐっ……」
「おい、お前! リックに何をした!」
レイが手を振り、ノエルを床に叩きつける。ノエルは、カハッと咳き込むと喉を押さえながら口を開いた。
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ノエルが空中で陣を作る。その陣をレイは炎で消した。みるみるうちに炎がノエルの体を包み込む。
「うわああああ!!」
「もういい。お前は今ここで殺す。俺のものに手を出そうとしたんだ。それだけで殺す理由になる」
「……や、やめろっ、レイ……!」
なんとか腕を動かし、レイの手を掴む。
レイに殺しなどさせたくない。それに、ノエルが言うことが本当なのであれば、こうなったのは元々自分の中に流れる血のせいだ。誰も悪くない。
「お、俺は……大丈夫、だから……!」
「だが……」
「な? おれは、だいじょーぶ、だから……」
息をするたびにゼェゼェと気管が詰まるような苦しさがある。体も熱く、少し動くだけでも痛みが走る。
だけど、リックは必死にレイを止めようと弱々しく笑って見せた。
「分かった。分かったからもう喋るな」
レイはリックの体を引き寄せ、そっと抱き上げる。ノエルは、ハッ、と鼻で笑うと、レイを睨み上げた。
「馬鹿なやつ。お前は僕たちと違って、人間からしか血を吸えないくせに」
「だからなんだ?」
「もう、リックの血しか飲めなくなってるんだろう? だけど、もうリックは人間じゃない。お前はこのまま飢えて、力を失うだけだ!」
「だとしても、お前にはやれん。それに、お前ごときに殺されるほど弱くもない」
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いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ?
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