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狐々堂シリーズ 猫に化かされ

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猫に化かされる



恵太は名もなき道を歩いていた。そこは暗く、何処まで歩いているのか、何処に行こうとしているのか恵太自身、皆目見当もつかなかった。
しかし、歩くのを止めようとしない自分に戸惑いながらも、恵太は名もなき道を歩き続けた。

「少年、何をしているんだい?」

やんわりといつの間にか恵太の隣を歩いている青年に気が付いた。
「よく、分からない」

ここで恵太は青年の問いに疑問を持つべきであったが、その時はすんなりと答えを返していた。

「やれ、危なっかしいねぇ。俺もついていこうかぃね」

青年はやれやれと肩を竦めた後、恵太の後ろを歩いく。
どんどんと二人で延々と続く道を歩いていくが、行けども先は見えては来ない。次第に恵太も歩くのに疲れていった。それを見て一緒にいた青年がニヤリと笑った。

「おや、疲れたのかい?でも駄目だよ。この道は止まっちゃぁいけないんだ。そう、止まったら捕まってしまうよ」

何に?と恵太が問う前に青年は消えていた。
立ち止まってしまっていた恵太は気付かなかったが、段々と暗闇がうごめいて、縮まっていた。
青年が消えてしまい、理解出来ない言葉を置いていかれて一度首を傾げたが、すぐに歩こうとした瞬間、空間がぐにゃりと歪んで、恵太の周りを囲み、恵太自身を飲み込もうとし始めた。これには恵太も慌てて逃げようとしたが、正体が不明なものに囲まれていて身動きができなかった。

焦りと激しくなる動機を抑え切れないまま、声を上げることなく恵太は飲み込まれてしまった。













ふと、恵太が目をあけるといつもの縁側に横になっていた。開け放しのため、寒かったのか身をそれこそ猫のように丸めて眠っていた。

「やぁ、起きたのか恵太。酷くうなされていたが、悪い夢でも見たか」

兄咲がいつからいたのか、からかうように言われてぷうと頬を膨らませた恵太だが、事実わけの分からない夢を見て少し汗をかいていたのだから、反論するのは控えて置いた。

「店はいいの?」

「あぁ、ちょっと休憩しようと思ってね。それにいつも騒がしいお前が、静かだからどうしたのかと思って様子を見に来たんだ」

恵太は兄と二人で小さな小物を扱う店を商いしている。売り上げは微々たるものだが、不思議と金には困った事はない。
しかし咲には恵太にも分からない謎な部分もあるので、深く考えないようにしていた。

「まるでいつも僕が兄さんに煩くして迷惑かけているみたいじゃないか」

「おや、違うのか?」

やれやれと笑いながら肩を竦められて、再びからかわれた恵太は拗ねてしまうが、それで、どんな夢を観たんだい?と尋ねられて、ようやく起き上がり、咲に夢を詳細に説明した。
話を聞いていって、段々と咲の眉間にシワがより、あいつめと呟く。何が不機嫌にさせたのだろうと思いながら、最後は自分が飲み込まれた事を恵太は告げた。

「恐らく夢の中に出てきたのは猫が化かしたんだろう」

「何で?化かすっていったら普通は狐や狸じゃない?」

「何となく……かな。狐も狸も己の利益がない限りは本当は動かないんだ。けどね、猫は殆どが悪戯好きだからね。でも大丈夫。もうそんな夢は見させないよ」

頭を撫でられながら、何故見させないよと断定出来るのだろうと思ったが、それも兄の謎の一つだと心得ている恵太は何も言わなかった。

「私の可愛い弟にした悪戯は返さないといけないねぇ」

そんな事を咲が、人間では有り得ないほど冷たく、妖艶な笑みを浮かべて呟いたのを、下を俯かなければ行けないほど撫でられていた恵太にはしるよしもなかった。




後書き
何となく書きたくなったので書いてみました。反応ありましたらシリーズ化。




2007.12.18
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