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第十二話
しおりを挟むあんなことがあってから二ヶ月。いまだにペルクシム男爵令嬢が違法薬物を使用しているという証拠は掴めていません。お兄様たちには既に話してありますが、捕まえるのは難しいでしょう。何せ、持っていると確証できる要素はほとんどなく、【時詠み】様がそう言っているだけ。あの方は確かにすごいですが、完全に信じきって動くワケにもいきません。
「ルシア、今はそれよりこっち」
「そうですね」
確かにそれも大切ですがこっちも大切です。年に三回行われる学力テスト。早くももうその第一回目が来週まで迫ってきています。なので、今はエルピス伯爵令嬢とシグニを招いて城で勉強会です。シグニに教えられる人が誰もいないですが……。
「ここは?」
「そこはこっちの式を使って」
ルーチェは勉強が得意とは言えません。できる方ですが、本人曰く、机に向かってる時間身体を動かした方が効率的なんだそうです。エルピス伯爵令嬢はところどころ躓いていますが、ちゃんと見てあげれば大丈夫そうです。私は勉強は得意な方だと思っているので、大丈夫なはずです。シグニはなんでもできてしまうタイプなので、教える側に回ってくれます。シグニは大丈夫と言っていますが、私たちのせいで順位が落ちたら申し訳ないです。
…………それにしても、ルーチェとシグニの距離、近い気がします。私の気のせいかもしれませんが、本当に、ほんのちょっぴり、近い気がします。今までときっと変わらない距離感のはずなのに、それがとてもモヤモヤします。なんででしょうか……。
「ルシア、大丈夫?」
「ひゃ!?」
ひんやりと冷たい手が額に当てられ、顔を前に向けるとシグニの顔がとても近くにありました。思わず変な声が出てしまったのは仕方ないはずです。不可抗力です。だって、だって近いんですよ!
……うぅ、やっぱりおかしいです。変です。学院に入る前はルーチェとシグニの距離感や仲の良さも、シグニと話すときも、なんとも思わなかったのに、最近ではシグニが私以外の誰かといるとモヤモヤして、胸の辺りがチクリと痛みます。病気でしょうか。ルーチェたちに相談したら大事になりそうです。内密に動いた方がいいですね。今度、学院の保険医に相談してみましょう。
「少し休憩にしましょうか」
「わ、私お菓子もらってきます!」
「え、いや……」
ルーチェたちを置いてさっさと部屋を出てきてしまいます。あぁどうしましょう。自分でそうしたのに、部屋で何をしているかとか、シグニが他の人といるのが嫌だとか、変なことばかり考えてしまいます。早くお菓子をもらってきて戻らないと。いやでも、あんな風に飛び出してきてしまいましたし、迷惑じゃ……。
「やはり、第二皇女殿下は社交に向いていないな」
「あぁ。ずっと出てこないどころか、城でも全く見かけない」
ピタリと、足が止まります。どうやら、私の話をしているみたいです。誰かは分かりませんが、いつ誰が通るかも分からない城で、堂々とよく話せますね。けど、これは良いチャンスではないでしょうか。私のことを知らない人たちから見た私のことを知ることができます。怖いですが、学院に通っているおかげか、少しずつ、人が怖くなくなってきています。まぁ、一部の人はですけど……。
「【妖精姫】などと呼ばれているが、本性はどんな狐か分かったものではない」
「セフィド公子も気の毒だな。皇族との関係を持ちたいがために、あんな欠陥皇女と婚約を継続しなければいけないのだから」
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