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二十話
しおりを挟むさて、ダンスをしていても、気を抜いていい理由にはなりませんからね。先程からルーチェに殺意を向けているのは、ペルクシム男爵令嬢ですね。ヴェルメリオ様はルーチェのことを気にせずにペルクシム男爵令嬢しか見えていないご様子です。ペルクシム男爵令嬢を囲む子息たちも同じです。彼女がこちらのことを言えばそれに同調し、こちらを責めてきそうですね。あくまでもペルクシム男爵令嬢が主軸であれば簡単です。彼女を罠に嵌めて、罪を暴く。それまであの人たちは操り人形ですが、仕方ありませんね。簡単に薬を盛られる方が悪いです。
「今日は平和に終わりそうだね」
「世間ではそれをフラグ、と言うそうですよ?」
ルーチェが言っていました。大丈夫だろうと宣言すると、大抵面倒なことが起こるそうです。それをフラグと言い、中には建築士と言われるほどフラグを言って面倒なことに巻き込まれる人もいるとか。
「ルシアはどんな面倒なことが起こると思う?」
「……誰かさんたちが事を荒立てる、とかですかね」
大人しくしてくれているといいのですが、そうはいかないでしょうね。何かしら動きを見せるでしょう。それに巻き込まれる感じでしょうか。面倒なことに変わりありません。邪魔をする方がいるのなら、徹底的に潰すまでです。私たちに歯向かえばどうなるか、考えなかったあちらが悪いのですし。
「ルーチェに似てきたね」
「そうですか?」
自分では分からないですが、シグニがそう言うのなら、そうなのでしょう。私たちのことを一番知っているのはシグニですから。ルーチェに似てきている。そんなことを言うのは、シグニくらいなものです。私たちは昔から見た目はそっくりですが性格が違うので、分かりやすかったと思います。だから多くの人は「双子なのに似ていない」「本当に双子なのか」と言います。だから、ルーチェと似ていると言われるのは少しだけ嬉しいです。それなのに、どこか複雑な気持ちになります。嬉しいくせに、どうしてでしょうね。最近、自分の気持ちが分かりません。
「……ルシア、どうやら動いたみたいだよ」
「あちらに行きましたか」
どうやら、ペルクシム男爵令嬢は標的をルーチェではなく、エルピス伯爵令嬢にしたようです。オルコス卿が対応していますが、押され気味ですね。アイト卿はどこへ行ったんですかね。遠くへは行ってないと思いますが。
エルピス伯爵令嬢を狙ったのは、今日ルーチェを敵に回せばお兄様も敵に回すと理解したのでしょうね。パートナーですし、お兄様は秩序を乱す人を嫌いますから。婚約者がいるというのに婚約者ではない者をパートナーにしているヴェルメリオ様と、婚約者がいる男性に異様に距離が近くパートナーになったペルクシム男爵令嬢。お兄様から何を言われるか分かりません。もっとも、エルピス伯爵令嬢を標的にしたところで、変わりませんけどね。
「お会いするのは二度目ですね。私の友人に何か用かしら?」
近づけば、私たちに媚を売っただの、欠陥皇女なんて取るに足らないなど、散々言ってくれているのが聞こえました。お兄様とルーチェが来る前に片付けてしまいましょう。そうしないと、ルーチェが問題を起こしそうです。
「欠陥皇女に用はないわよ」
「あらあら、欠陥ですってよ。シグニ」
「……そうだね。何か勘違いしているようだ」
シグニには伝わりましたかね。ルーチェには癖があります。自分の嫌いな相手だと、棘のある言い方をしますし、相手をわざと怒らせて周囲の人たちに相手に非があると認識させる。ルーチェはそういうとき、よく「あらあら」と言うんですよね。
「君はこんなに完璧なのにね」
「ルシアに怒られるわよ? あぁ、先にこの人たちがルシアの怒りを買いそうね」
「……あんた、第二皇女じゃ」
えぇ、第二皇女ですよ? 第一皇女の真似をしている欠陥皇女です。それを教えるつもりはありませんけどね。
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