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第二十一話
しおりを挟む終業式を兼ねたパーティー。お兄様のパートナーとしてダンスを踊っているけれど、気まずいのよね。お兄様のことが嫌いなワケじゃない。ただ、罪悪感があるのよ。ルシアやシグニ、お母様とお父様にも。
私は最初から前世の記憶を持っていたワケじゃない。小説やコミックでよくある、何かの拍子で前世の記憶が甦る。私の場合は、高熱なのだけれどね。でも、時折あるじゃない? その子の身体にたまたま魂が入って、その子の記憶を受け継いでいるって設定。転生という非現実的な現象を考えれば、なんでもありだと思わないかしら。記憶を思い出す前の私は、幼い子どもが死んでしまう可能性がある病に侵されていたらしいわ。幼い子ども、と言うよりも魔力の多い子どもと言うべきかしらね。自身の魔力に耐えきれず、身体が防御反応を示し発熱する。私は皇族として見れば中の中程度の魔力量だけれど、普通に見ればかなりの魔力を所有している。死ぬ可能性は十分にあった。なら、もしそのときルーチェが死んでいたなら? 私がたまたまルーチェの身体に入って、記憶を引き継いだだけだとしたら?
私は、ルシアたちにとって、家族と言えるのかしら。ルーチェとして、皇族として、やるべきことをしてきた自覚はある。けれど、それはこの身体だから与えられてきたもので、私だからではない。だからかしら。上手く笑えないときがある。それでも必死に笑顔を作らないといけない。だって、そうしないとルシアが大変でしょう?
可愛い可愛い片割れ。自信を失くして、周囲に怯えて、傷つくのが怖くて拒絶している。けれど、あの子の本来の性格はとても明るくて、笑顔がとっても素敵なの。あのとき、もっと上手く立ち回れていれば、ルシアの笑顔を失わずに済んだ。あの子はもっと、自分の気持ちに素直になれた。
「考え事しているところすまないが、動き始めたみたいだ」
お兄様に言われて視線を追えば、そこにはクリムとバカを捕まえた男爵令嬢が取り巻きを引き連れてルシアたちと話をしている。すぐにバカを殴りたい気持ちをグッと堪えて、お兄様と近づいていく。よくよく見てみれば、ルシアはどこか上機嫌で、シグニは困ったような笑みを浮かべている。
「相も変わらず、婚約者と妹の顔も見分けられないの? 物覚えが悪いのね」
……あぁ、なんとなく理解したわ。ルシア、私の真似をしているのね。あのバカの愚痴をルシアとシグニに言っていたから、覚えちゃったのかしら。シグニに後で叱られそうだわ。あの過保護、ルシアが私に似るとすぐに怒るんだから。心が狭いわよね。双子なんだから似てるところくらいあってもいいでしょうに、「ルーチェみたいになったら困る」だなんて言うんだから。本音は私に似てルシアらしさが消えるのが嫌なんでしょうに。あの嫉妬魔、私がルシアと二人きりで出かけるだけでも文句言ってくるんだから。
「どうかしたのですか?」
せっかくのルシアの演技なんだから、乗ってあげなくちゃね。どうせ、シグニの隣にいるからルシア。だから何を言っても大丈夫とでも思ったんでしょう? ルシアって結構言うときは言うのよ。普段はオドオドしていてとてもそうは見えないけれど。
「あら、お兄様とのダンスは楽しめたかしら」
「はい。お兄様とダンスがしたいってわがまま、叶えてくれてありがとうございます」
バカと取り巻きは信じられないという顔をしている。男爵令嬢に関しては目をつり上がらせてとても令嬢とは思えない顔ね。お兄様も察してくれたのか、演技をしてくれるし、エルピス伯爵令嬢にはオルコス卿がこっそり伝えてるでしょうね。驚いている感じがしないもの。
「それで、どんなお話を? 二人が一緒にいるところ、久しぶりに見ましたが」
「さぁ、なんだったかしらね」
双子だからかしら。解像度が高くない? と言うか、ゲームの悪役令嬢よりも悪役令嬢してるわよ。私が元々荒っぽい性格のせいでそうなっているんだけれども。シグニからの視線が冷たいからやめてちょうだい。この後の説教が面倒になりそうだわ。
「な、なんでもないわよ!」
あら、挨拶もなしに尻尾を巻いて逃げちゃったわね。にしても、肩を震わせて顔を真っ赤にしている姿、すごかったわねぇ。あれがヒロインになろうとしてなれないお馬鹿さんの姿と思うと、笑っちゃうわ。
「……合わせてくれて、ありがと」
「大丈夫よ。何もされてないかしら」
シグニ、お願いだからそんなに見ないで。視線が痛いのよ。そんなに睨んできても何も変わらないわよ。これに関しては私は悪くないもの。ルシアが私の真似してきてる以上、仕方ないでしょう。そんなに嫌ならルシアに私の真似をするなって言いなさいよ。
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