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第二十三話
しおりを挟む夏季休暇。第一皇女殿下たちとの交流は続き、勉強会にも誘われた。そこで話されたのが課外学習。言ってしまえば職場体験のようなものだ。セフィド公子は去年、魔塔に行き課外学習をしていて、知り合いも連れてきていいと許可をもらったらしい。課外学習は基本、長子以外の人や研究職希望の人が行くものだけれど、多少成績に加点されはするものの、重要視されるものでもない。まぁ、やっても損はないものだ。何が言いたいかと言うと、私は今セフィド公子と第一皇女殿下に誘われて魔塔に来ています。第二皇女殿下は研究室に籠っているため一緒ではないらしい。それで、
「無理です」
「第二魔術師様からの許可は得ています」
「魔術師様四名以上の許可がなければ許可できません」
魔塔の最初で躓くとは思わなかった。セフィド公子も困惑している。去年は問題なかったって言ってるし、この受付の人、明らかに意地悪してきてるよね。
「第二魔術師様を呼んでください」
「魔術師様たちはお忙しいのです。子どもに構っている暇などありません」
だから、その人に許可を得てるってば! 話ができない人だな。というか、その魔術師も魔術師で、来るのは分かってるんだから迎えに来てくれればいいのに……。セフィド公子が受付の人と話を何度もしているけれど、相手はこちらの話を聞こうとしていない。
「何の騒ぎかしら」
後ろからカツカツと足音が聞こえてくる。足音は軽く、声もふんわりとしていて決して他者を怖がらせるものではない。けれど、その人から発せられている魔力が、尋常じゃないくらい膨大で冷たい。針を肌に刺されたような感覚に陥る。
魔術師は一人一人が莫大な魔力を持っている。後ろにいる人は魔術師だろう。振り向いたら死ぬ。そのくらい魔力が冷たくて鋭い。
「あらあら、あんなに騒がしかったのに、静かになったわね」
「だ、第五魔術師様……」
全員が頭を下げ、反応を窺う。少しでも動けば死ぬ。誰も何も言えない。少しでも機嫌を損ねたら待っているのは死だ。あれ程強気だった人も何も言えずにいる。それだけ、魔術師というのは桁違いの強さなのだろう。
《【氷華】、何、してるの》
「あら、久しぶりに出てきたの?」
静寂を破ったのはその場にいた人たちではなかった。頭に直接響く、どこか幼さの残る声が聞こえる。少しだけ顔を上げて見てみれば、日傘を差している柳色のウェーブヘアの女性と、ローブを深く被り、顔を白い布で覆い隠している小柄な人。第五魔術師は女性、だよね。
「ほら、説明なさい」
「は、はい! この者たちが、第二魔術師様に会わせろと……。現在は魔術師様四名以上の許可を得ることで魔塔へ入ることを許可しているため、追い払っているところです」
この小柄な人も、たぶん魔術師だよね。魔力が第五魔術師さんよりも多い。この頭に直接響く声も、魔法だよね。かなり高度な魔法のはず。しかも、この場の全員にかけられているとしたら、相当な魔力を消費している。だというのに、魔力が多い。
「ならあいつ呼びましょうか」
《……いい。こちらが、もらう》
「あいつのお客でしょう? 盗っちゃダメよ」
《学生だ。誰のところにいても、変わりはない》
かなり強引だし、あと二人魔術師の許可がないと入れないんだよね? ここで話してるなら魔術師を呼んで来てほしい。この状況は普通に気まずいし、こんなことで魔術師を止めていると考えると後でどんな理不尽を言われるか想像するだけで身体が震える。
「あー、ほら! 君が言わないせいだよ!?」
「うるさい、黙れ。頭に響く」
この場の雰囲気に似つかわしくない明るい声と、不機嫌なのを隠そうともしない低い声が響いた。
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