悪女と言うのは自由ですけど、双子のどちらか見分けられるようになってから悲劇のヒロインごっこをしてもらってもいいですか!?

Ray

文字の大きさ
23 / 31

第二十三話

しおりを挟む

 夏季休暇。第一皇女殿下たちとの交流は続き、勉強会にも誘われた。そこで話されたのが課外学習。言ってしまえば職場体験のようなものだ。セフィド公子は去年、魔塔に行き課外学習をしていて、知り合いも連れてきていいと許可をもらったらしい。課外学習は基本、長子以外の人や研究職希望の人が行くものだけれど、多少成績に加点されはするものの、重要視されるものでもない。まぁ、やっても損はないものだ。何が言いたいかと言うと、私は今セフィド公子と第一皇女殿下に誘われて魔塔に来ています。第二皇女殿下は研究室に籠っているため一緒ではないらしい。それで、

「無理です」
「第二魔術師様からの許可は得ています」
「魔術師様四名以上の許可がなければ許可できません」

 魔塔の最初で躓くとは思わなかった。セフィド公子も困惑している。去年は問題なかったって言ってるし、この受付の人、明らかに意地悪してきてるよね。

「第二魔術師様を呼んでください」
「魔術師様たちはお忙しいのです。子どもに構っている暇などありません」

 だから、その人に許可を得てるってば! 話ができない人だな。というか、その魔術師も魔術師で、来るのは分かってるんだから迎えに来てくれればいいのに……。セフィド公子が受付の人と話を何度もしているけれど、相手はこちらの話を聞こうとしていない。

「何の騒ぎかしら」

 後ろからカツカツと足音が聞こえてくる。足音は軽く、声もふんわりとしていて決して他者を怖がらせるものではない。けれど、その人から発せられている魔力が、尋常じゃないくらい膨大で冷たい。針を肌に刺されたような感覚に陥る。
 魔術師は一人一人が莫大な魔力を持っている。後ろにいる人は魔術師だろう。振り向いたら死ぬ。そのくらい魔力が冷たくて鋭い。

「あらあら、あんなに騒がしかったのに、静かになったわね」
「だ、第五魔術師様……」

 全員が頭を下げ、反応を窺う。少しでも動けば死ぬ。誰も何も言えない。少しでも機嫌を損ねたら待っているのは死だ。あれ程強気だった人も何も言えずにいる。それだけ、魔術師というのは桁違いの強さなのだろう。

《【氷華】、何、してるの》
「あら、久しぶりに出てきたの?」

 静寂を破ったのはその場にいた人たちではなかった。頭に直接響く、どこか幼さの残る声が聞こえる。少しだけ顔を上げて見てみれば、日傘を差している柳色のウェーブヘアの女性と、ローブを深く被り、顔を白い布で覆い隠している小柄な人。第五魔術師は女性、だよね。

「ほら、説明なさい」
「は、はい! この者たちが、第二魔術師様に会わせろと……。現在は魔術師様四名以上の許可を得ることで魔塔へ入ることを許可しているため、追い払っているところです」

 この小柄な人も、たぶん魔術師だよね。魔力が第五魔術師さんよりも多い。この頭に直接響く声も、魔法だよね。かなり高度な魔法のはず。しかも、この場の全員にかけられているとしたら、相当な魔力を消費している。だというのに、魔力が多い。

「ならあいつ呼びましょうか」
《……いい。こちらが、もらう》
「あいつのお客でしょう? 盗っちゃダメよ」
《学生だ。誰のところにいても、変わりはない》

 かなり強引だし、あと二人魔術師の許可がないと入れないんだよね? ここで話してるなら魔術師を呼んで来てほしい。この状況は普通に気まずいし、こんなことで魔術師を止めていると考えると後でどんな理不尽を言われるか想像するだけで身体が震える。

「あー、ほら! 君が言わないせいだよ!?」
「うるさい、黙れ。頭に響く」

 この場の雰囲気に似つかわしくない明るい声と、不機嫌なのを隠そうともしない低い声が響いた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!

夢咲 アメ
恋愛
「君の愛が煩わしいんだ」 婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。 それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。 死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。 ​……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。 ​「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」 そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……? ​「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」 ​不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。 死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました

神村結美
恋愛
クローデット・アルトー公爵令嬢は、お菓子が大好きで、他の令嬢達のように宝石やドレスに興味はない。 5歳の第一王子の婚約者選定のお茶会に参加した時も目的は王子ではなく、お菓子だった。そんな彼女は肌荒れや体型から人々に醜いと思われていた。 お茶会後に、第一王子の婚約者が侯爵令嬢が決まり、クローデットは幼馴染のエルネスト・ジュリオ公爵子息との婚約が決まる。 その後、クローデットは体調を崩して寝込み、目覚めた時には前世の記憶を思い出し、前世でハマった乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生している事に気づく。 でも、クローデットは第一王子の婚約者ではない。 すでにゲームの設定とは違う状況である。それならゲームの事は気にしなくても大丈夫……? 悪役令嬢が気付かない内にバッドエンドを回避していたお話しです。 ※溺れるような描写がありますので、苦手な方はご注意ください。 ※少し設定が緩いところがあるかもしれません。

ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する

ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。 皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。 ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。 なんとか成敗してみたい。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

……モブ令嬢なのでお気になさらず

monaca
恋愛
……。 ……えっ、わたくし? ただのモブ令嬢です。

逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ

朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。 理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。 逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。 エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。

処理中です...