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第二十四話
しおりを挟む人が増えたけどこれ、まずい。本当にまずい。魔力の量が桁違いだ。片方は魔力がそこまで感じられないけど、これ、息していいんだよね。したら死ぬとか、そんなことないよね。そのレベルで空気が重い。こうやって魔力を隠している人は、普通では人が到達できる域にいない人だ。もう片方の魔力はドロリとしていて、真っ暗の底なし沼のよう。隠す気がない。これだけの魔力を周りに影響を与えずに制御しているのを見れば、誰だって恐怖を抱く。もし、この魔力が自分に向けられたら……。頬から汗が落ちる。恐怖で身体が強張る。今この場、魔術師以外の人間は動くことを許されていない。魔塔の人たちも全員、息を殺してこの人たちの次の言葉を待っている。
「これで魔術師が四人来たわね。入れていいでしょう? 第一魔術師」
「もちろん。場所を変えようか。他の子たちはいつも通り作業するように」
明るい声が響くと、足下に突然魔法陣が現れた。白銀色に光り、完成したかと思えば身体が浮遊感に襲われる。けれどそれは一瞬で、ふわりと身体が浮いたかと思えば柔らかなソファの上に座っていた。目の前にはテーブルを挟んでローブを着た男性が二人座っており、右側には第五魔術師と小柄な人が座っている。え、何これ。怖いんですけど。
「いやぁ、ごめんね。エトワールが連絡するのを忘れてたせいで」
「嘘をつくな。お前が俺の名前を使ったんだろう」
「客人の前でくらい仲良くしなさいな」
《うるさい……》
四者四様。誰が誰だかまったく分からない。リーダーって呼ばれてたし、第一魔術師はいるよね。たぶん目の前にいる白銀の髪の男性だよね。転移魔法を使ったのもこの人?
「驚かせてすまなかったね。公子と皇女様は久しぶり。第一魔術師、ツァイトだよ」
「……第二魔術師、エトワールだ。このバカがすまなかった」
白銀の髪の人が第一魔術師。オッドアイで、オレンジ色と銀色、かな。どうしてか目がいく。オッドアイだからなのか、それともこの人から出てる魔力に、無意識に惹き付けられてるのかな。左耳に着けてるクリスタルイヤリングは銀色の光っている。たぶん、魔力を貯める魔道具なんだろう。街の魔道具店にある見慣れた魔道具とは格が違う。
隣に座ってる紫紺色の髪の人が第二魔術師か……。底なしの魔力はこの人のもの。右目を前髪で隠していて左目はオレンジ色かな。モノクルをかけてる。さっきは威圧するためだったのか、全然魔力を感じない。魔力操作が上手いんだろう。
二人とも、最初の印象だと性格が合わなそう。でも、不思議と噛み合ってる。第一魔術師が第二魔術師にちょっかいかけてるようにしか見えないけども。まぁ、うん。仲が良いんだろうと思っておこう。
「第五魔術師のフクシアよ。寒くないかしら」
「大丈夫です」
やっぱり女性が第五魔術師。頭に付けてるのは、氷の薔薇? 魔法で作ったのかな。かなりの技術が求められると思うんだけれど。それと、こっちの小柄な人も魔術師だよね。魔術師がどういう原理で選ばれてるのかは分からないけど、この人はダントツで魔力が多い。顔を隠していて分からないけれど、なんだろう。初めて会う感じはしないんだよね。
「ほら、知り合いしかいないんだから取りなさい」
第五魔術師が小柄な人のフードを外す。すると、とても見覚えのある白藍色の髪が見えた。白い布を取れば、よく見慣れた人。え、でも、確かこっちには来ないって話じゃ……。
「…………だ、第七、魔術師……。ルシア、です……」
「ルシアはこっちの方が好きなだけ研究できるから、長期間必要な研究はこっちでやっているんだよ」
「来れないって話じゃなかったでしたっけ」
「一緒に、来ない、だけです……」
だとしても、さっきまで感じていたあの魔力って……。今は第二皇女殿下からあの魔力は感じ取れない。……違う。感じられないんじゃない。感じていた魔力そのものが、消えてる。
隠してるとか、そんなレベルのものじゃない。今の第二皇女殿下にはないんだ。どこにあるの。第一魔術師のように魔道具に貯めているだけ? でも、それじゃあ消えた説明ができない。ゲームに第二皇女殿下は出てこないから情報がない。どういう原理で消したの。今も仲良くしていても何をどこまでできるのかは分からない。星や花が好きなのは聞いてたけど、本当にそれくらい。普段は実力を隠してた? 魔術師なのを隠すのは分かる。この年齢で魔術師になったなんて知られれば大騒ぎだ。第二皇女殿下にとってはたまったものではない。
到底理解できるものではない。けれど、理解できてしまう。第二皇女殿下は異常だ。異質な量の魔力と技術。十五歳の少女が成し得ていいものではない。
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