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闇も深くなった時刻―――――
王都での拠点としてヴァレニウス公爵家が所有している邸、その大きな屋敷はまるで城のように大きい。
迫力ある荘厳な外観もさることながら、部屋数はかなりのものだ。
王族の住まう王宮の庭園の次に広く立派な庭は、遥か遠い昔から代々公爵家に仕えてきた専属庭師の一族が管理していた。
ヴァレニウス公爵家の力で厳重に秘匿されているが、実はその庭師一族は代々特別な力“緑の手”を持つ子供が産まれる特殊な一族なのだった。
先代も今代も緑の手を持つ者が筆頭庭師となって、公爵家の領地にある全ての庭の管理を指示している。
筆頭庭師は庭の管理の他に公爵家が所有する畑の土の管理も定期的にチェックし、不作になりそうな天候に恵まれない年は直接領地に赴いて作物の状態を正常に戻し安定した収穫を調整したりもする。
小麦を掌握する事は王国の生命線を守護する事でもあり、代々公爵家が最重要視している。
とまぁ、難しい話はさておき――――
緑の手を所有する筆頭庭師が渾身の力作とでも称せる庭が、この王都に所有している屋敷の庭園であった。
そんな素晴らしい庭を屋敷の中でも一番素晴らしい眺めを持つ部屋が、オフィーリアの私室であったりする。
そこは公爵夫妻の私室なのでは? と思われるかもしれないが、その公爵夫妻が決めた部屋なので察して頂きたい。
娘ラブもここまでくるとうすら寒くなったりならなかったりするのだから。
そんな景観も室内の装飾も屋敷で一等級な部屋にて。
スヤスヤと眠るオフィーリアを真ん中にぴっちりと挟み、双子たちセインとカインが眠る――――
フリをして起きていた。
《ねえ、カイン起きてる?》
《起きてるよセイン。どした?》
片腕に伝わるオフィーリアのぬくもりを感じながらセインとカインは秘密の会話をする。
《ねえ様が倒れたこと、ただの体調不良だとカインは思う?》
《どう…かな。ねえ様付きの専属使用人はまだ決まってないからな…あの倒れた日の事も不明な事が多い。
けれど母様の専属の者たちだし…あの母様の専属って事は地獄の試練を潜り抜けた猛者たちだろう?
拷問されても口を割らず自決の道を選ぶような忠誠を誓うものばかりだし、そもそも新入りの2人は公爵家直属の影の見張り付きだろう? 事件性はないと思うけど…》
《うう、そうだけど…さ。実際ねえ様が倒れた後も徹底的に色々探ったけど何も出て来なかったから、今回の件は問題ないとみていいかな? とは思ってるけど、それでも警戒を解くつもりはないんだ。
何だか得体の知れない未知のものが介入しているような…そんな気がして。カインも警戒だけは絶対にしておいて。》
《了解、セインは心配性だな。》
カインが堪えきれず漏れ出たようにフフっと笑う気配がした。
それに気づいたセインは面白くない。
《気を抜いちゃダメだろ! ねえ様の事では警戒し過ぎて困ること等ないだろう? 何かあってから後悔したって遅いんだから!》
呑気なカインにムッとしてしまい思わず責めるような言い方をしてしまう。
真面目に伝える相手に対して思わず笑ってしまったのは悪かったな・・・と反省したカインは、素直に謝罪した。
《ああ、分かってるよ。呑気に構えたつもりはなかったんだ、ゴメン。セインが共に居てくれてねえ様を一緒に守っているからこそ、少しでも気を抜けたりするんだよ…本気で呑気に構えている訳じゃない》
《……僕もカインのその呑気さに救われてたりする事もある…けど、むかつく。》
《俺の呑気さも役だったりする事あったんだな。》
カインはしみじみとした気持ちになって呟いた。
《ねえ様、気持ちよさそうに寝てる。この寝顔見てるだけで癒されるよね》
《ほんと。俺らの気持ちも知らないでこんなにスヤスヤとな。》
《そこがねえ様のいいところ。無邪気で純粋でしっかり者であろうとしてる癖に大事な所でやっぱりどこか抜けててさ。》
《そうだな、いいところしかない。俺らの――いや家族の癒し担当だからな、ねえ様は》
二人の胸に温かいものが満ちてくる。
このベッドの上で静かに寝息をたてている存在が二人にとって世界の全て。
《可愛い寝顔…まだ見てたいけど、そろそろ寝なきゃ、残念》
《ああ、おやすみ、セイン》
《おやすみ、カイン、姉さん》
秘密の会話は眠りによって終了した。
――――セイン視点
ほのかな花の香りが漂う室内、ここはねえ様の寝室。
屋敷内でも一番力を入れて用意されたというこの部屋は、調度品ひとつとっても快適さと高価さを計算しつくして配置されている。
上品でありながらホッとする空間を目指したらしい・・・主に母様が。
母様が当主の私室より力を入れているのは公爵家の使用人たちに周知されている。
ねえ様の部屋を掃除する時が一番緊張すると言われてるらしい。
そうだよね、母様が管理してるようなものだもんね、この部屋。
今日は記念日にしたいほどに喜ばしい日。
僕たち二人が姉さまと一緒に寝る権利を(一年という期限付きではあるが)この手に取り戻したのだ。
一番近くに居られる時間を取り戻せた事に、僕たち二人は心の中の秘密の会話で快哉を叫び《ねえ様ただいま!》って言い合った!
共に眠る権利を失ってからずっとずっと寂しかったし、心配だったから。
この屋敷の守りは万全だってわかっているけれど、それでも一番無防備になる睡眠時は心配だった。
だから、また共に眠れるようになって警戒しながらも安堵している。
実は、僕たちには、父様にも母様にも、勿論ねえ様にも秘密にしていることがある。
王都での拠点としてヴァレニウス公爵家が所有している邸、その大きな屋敷はまるで城のように大きい。
迫力ある荘厳な外観もさることながら、部屋数はかなりのものだ。
王族の住まう王宮の庭園の次に広く立派な庭は、遥か遠い昔から代々公爵家に仕えてきた専属庭師の一族が管理していた。
ヴァレニウス公爵家の力で厳重に秘匿されているが、実はその庭師一族は代々特別な力“緑の手”を持つ子供が産まれる特殊な一族なのだった。
先代も今代も緑の手を持つ者が筆頭庭師となって、公爵家の領地にある全ての庭の管理を指示している。
筆頭庭師は庭の管理の他に公爵家が所有する畑の土の管理も定期的にチェックし、不作になりそうな天候に恵まれない年は直接領地に赴いて作物の状態を正常に戻し安定した収穫を調整したりもする。
小麦を掌握する事は王国の生命線を守護する事でもあり、代々公爵家が最重要視している。
とまぁ、難しい話はさておき――――
緑の手を所有する筆頭庭師が渾身の力作とでも称せる庭が、この王都に所有している屋敷の庭園であった。
そんな素晴らしい庭を屋敷の中でも一番素晴らしい眺めを持つ部屋が、オフィーリアの私室であったりする。
そこは公爵夫妻の私室なのでは? と思われるかもしれないが、その公爵夫妻が決めた部屋なので察して頂きたい。
娘ラブもここまでくるとうすら寒くなったりならなかったりするのだから。
そんな景観も室内の装飾も屋敷で一等級な部屋にて。
スヤスヤと眠るオフィーリアを真ん中にぴっちりと挟み、双子たちセインとカインが眠る――――
フリをして起きていた。
《ねえ、カイン起きてる?》
《起きてるよセイン。どした?》
片腕に伝わるオフィーリアのぬくもりを感じながらセインとカインは秘密の会話をする。
《ねえ様が倒れたこと、ただの体調不良だとカインは思う?》
《どう…かな。ねえ様付きの専属使用人はまだ決まってないからな…あの倒れた日の事も不明な事が多い。
けれど母様の専属の者たちだし…あの母様の専属って事は地獄の試練を潜り抜けた猛者たちだろう?
拷問されても口を割らず自決の道を選ぶような忠誠を誓うものばかりだし、そもそも新入りの2人は公爵家直属の影の見張り付きだろう? 事件性はないと思うけど…》
《うう、そうだけど…さ。実際ねえ様が倒れた後も徹底的に色々探ったけど何も出て来なかったから、今回の件は問題ないとみていいかな? とは思ってるけど、それでも警戒を解くつもりはないんだ。
何だか得体の知れない未知のものが介入しているような…そんな気がして。カインも警戒だけは絶対にしておいて。》
《了解、セインは心配性だな。》
カインが堪えきれず漏れ出たようにフフっと笑う気配がした。
それに気づいたセインは面白くない。
《気を抜いちゃダメだろ! ねえ様の事では警戒し過ぎて困ること等ないだろう? 何かあってから後悔したって遅いんだから!》
呑気なカインにムッとしてしまい思わず責めるような言い方をしてしまう。
真面目に伝える相手に対して思わず笑ってしまったのは悪かったな・・・と反省したカインは、素直に謝罪した。
《ああ、分かってるよ。呑気に構えたつもりはなかったんだ、ゴメン。セインが共に居てくれてねえ様を一緒に守っているからこそ、少しでも気を抜けたりするんだよ…本気で呑気に構えている訳じゃない》
《……僕もカインのその呑気さに救われてたりする事もある…けど、むかつく。》
《俺の呑気さも役だったりする事あったんだな。》
カインはしみじみとした気持ちになって呟いた。
《ねえ様、気持ちよさそうに寝てる。この寝顔見てるだけで癒されるよね》
《ほんと。俺らの気持ちも知らないでこんなにスヤスヤとな。》
《そこがねえ様のいいところ。無邪気で純粋でしっかり者であろうとしてる癖に大事な所でやっぱりどこか抜けててさ。》
《そうだな、いいところしかない。俺らの――いや家族の癒し担当だからな、ねえ様は》
二人の胸に温かいものが満ちてくる。
このベッドの上で静かに寝息をたてている存在が二人にとって世界の全て。
《可愛い寝顔…まだ見てたいけど、そろそろ寝なきゃ、残念》
《ああ、おやすみ、セイン》
《おやすみ、カイン、姉さん》
秘密の会話は眠りによって終了した。
――――セイン視点
ほのかな花の香りが漂う室内、ここはねえ様の寝室。
屋敷内でも一番力を入れて用意されたというこの部屋は、調度品ひとつとっても快適さと高価さを計算しつくして配置されている。
上品でありながらホッとする空間を目指したらしい・・・主に母様が。
母様が当主の私室より力を入れているのは公爵家の使用人たちに周知されている。
ねえ様の部屋を掃除する時が一番緊張すると言われてるらしい。
そうだよね、母様が管理してるようなものだもんね、この部屋。
今日は記念日にしたいほどに喜ばしい日。
僕たち二人が姉さまと一緒に寝る権利を(一年という期限付きではあるが)この手に取り戻したのだ。
一番近くに居られる時間を取り戻せた事に、僕たち二人は心の中の秘密の会話で快哉を叫び《ねえ様ただいま!》って言い合った!
共に眠る権利を失ってからずっとずっと寂しかったし、心配だったから。
この屋敷の守りは万全だってわかっているけれど、それでも一番無防備になる睡眠時は心配だった。
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実は、僕たちには、父様にも母様にも、勿論ねえ様にも秘密にしていることがある。
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