愛され過ぎるのも、煩わしいのも嫌ですわ。

iBuKi

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拷問のような苦痛が解消したうえ、今自分がどんな立ち位置でこの世界に居るのか、その謎も解消した。
うんうんと頷いていると―――

ガタッと物音がした。音がした方へ顔を向けると、そこには公爵家の侍女。

「お、お、お嬢様っ・・・!!」

あの混乱の朝からどれくらい経過したかは不明だけど、顔色も最悪だっただろうし恐らく誰かが付き添い看病くらいはしていたのだろう。
人の良さそうな柔和な顔立ちをくしゃりと歪め、一歩二歩と後退した後・・・
泣きながら大きな声で「お嬢様が!」と叫びながら人を呼びに行った。

「あ、待って・・・!」

呼びかけたがあまりに素早く去っていったので聞こえてないかもしれない。
(あれからどれくらい時間が経ったのか聞きたかったのにな)


それにしても、あれだけ優しそうな顔立ちなのに、物凄い大騒ぎしてた・・・
侍女として彼女の立場は大丈夫なのだろうか・・・
多分あの侍女はお母様の専属のひとりだった気がする。
名前はジェシカ・・・だったような。たぶん。
融合したとはいえ完璧ではないらしい。酷く曖昧な感覚で自信がない。



・・・まぁいいか。
お父様かお母様か双子の弟達か、誰かしら呼んでくるだろう。


前世の記憶が混ざったせいで、何だか物凄く久しぶりに家族に会う気がして早く会いたいだなんて思い擽ったい気持ちになる。

誰が先に来るのかなぁ?なんて気楽に思ってたら、


――――全員が来た。



「リア!!良かった!!!目が覚めて!!!天使が目を覚まさなかったらどうしようとお父様は・・・」

純金のような眩しい豪奢な金髪に薄っすらと涙目の金色の目・・・大天使か?と見紛う美青年。
酷く取り乱した様子の大天使様は瞳から滂沱の涙(・・・大量過ぎて水でも流してんのかしら?)を流し、私が寝そべるベッドに凄い勢いで駆け寄って来た。

(えっ、はや!)

見た目はスラッとした体形なのに、どこにそんな素早さを出せる筋肉が!?
えっ!?と視界に映るものと速さに目を瞠るうちに大天使は本当に一瞬ですぐ傍に来た。
そして、ガシッ!!と効果音でも付きそうな強い力で抱き締められた。
そのままギュギュギュぅぅぅと強い圧力が・・・
どこにこんな力が眠ってるのか非常に謎だが命の危険すら感じる強い抱擁にもう一度意識を失ってしまいそう。


「ぐふっ・・・お父様、くるし・・・しぬ・・・」


令嬢らしからぬ声を漏らしながら娘殺し一歩手前の父親の体をぱしぱし叩く。
吐く、吐く!吐くモノないけど吐く!

転生したというのに第2の死の予感を感じ始めた辺りで、重めのバシッドスッと音がして腕の力が緩み呼吸が楽になった。

(危なかったわ・・・なんて馬鹿力なのかしら・・・)



「リアちゃんがまた眠ってしまいますわ!大概になさいませ。」
お母様が叩いて冷静にさせた様だ。
女性が叩いたにしては結構重めの音が鳴ってた気がするけど・・・
お母様の生家を思い出せば疑問も解消である。
あの音程度で済んで良かったねお父様である。


ゼーゼーハーハーと大量の酸素を欲する肺に空気を必死に取り込みながら、涙目で馬鹿力を行使した父を睨む。

(娘殺しそうになるほど抱きしめるとかやめて頂きたい!)

腕の中で懸命に酸素スハスハを取り込む最愛の娘を見下ろし、
「て、天使・・・・」
と、表情筋を失い残念な美形の大天使になっている。

(重い・・・お父様ってこんな感じだったっけ・・・)
娘ラブだった記憶はあるけれど、ここまで酷くなかった気がしないでもない。
記憶が曖昧だから断言できないけれど。


「お母様有難うございます。天国への階段が見え始めた所でした・・・
どのくらい眠っていたのかは分からないのですが、ご心配をおかけしました。」

「リアちゃん、とても心配しましたよ。お母様もお父様もセインもカイルも・・・
この四日間何も手がつきませんでした。リアちゃんがこのまま・・なら、家族で一緒に死・・」

(死・・!? いやいやいや!? 物騒物騒!)

「お、お母様!? 家族で――し、静かに待ち続ける! ですよね!?」


豪奢な巻毛は鮮やかな赤毛、その豊かな巻毛は腰まで流れ落ち妖艶な雰囲気を醸し出している。
ルビーの如く深紅の瞳は美しく迫力あるセクシーボディとの相乗効果で華やかな美女のお母様。
この匂い立つ様な色気駄々洩れの美貌の公爵夫人は、エングストランド国の社交界の中心であり、
エングストランドの至宝の薔薇とまで呼ばれている。
生家が代々騎士団長を輩出しているが脳筋公爵家とは思えない麗しさ。
お祖父様は世紀末覇王のような方なので、きっとお祖母様の血が濃いのだろう。

・・・話を戻すが、武家の出だからなのか命に対して思い切りが良すぎるのか、思考が大変物騒である。
家族で死とか一家心中じゃないか。もう。
怖すぎるのでいい加減にして頂きたい。


「いいえ、リアちゃんの居ないこの世など、生きる意味も・・・」
うるっとルビー色の瞳を潤ませ、色気たっぷりな顔で、またヤバイ言葉が・・・

「私は居なくなりませんし、家族は皆で仲良く愉しく暮らします!
もう物騒な会話はもう終わり!はい!終わりましたわ!」


麗しい姿も帳消しされる物騒発現に冷や汗が止まらない。
お母様が暴走して行動に起こす前に目が醒める事が出来た事に、信仰心のない私でも神に感謝したくなった。
神様と私、グッジョブだわ!

ただ寝てただけにのに気付いたら永眠させられるとこだった。

ただ寝てる間に暴走されて一家心中とか怖すぎるぅぅぅ。


「ほんとね?リアちゃん。お父様とお母様とセインとカイルの五人で、
一生ずっと仲良く愉快に暮らしていきますわよね?」

華麗な微笑み、お母様の後ろに薔薇のエフェクトが見えるのは見間違いか。

「ええ、そうですわ。家族仲良く愉快に暮らしていくのですわ。
―――それで、私どれくらい寝ていたんですの?」

もうこの物騒な話から離れたい。
未だ私を抱きしめたまま天使天使とうわ言の様に呟くお父様をスルーして、お母様にもう一度尋ねた。


「大体3日くらいかしら・・・今は4日目の朝よ。毎日、毎日、リアちゃんのお部屋で朝から夜まで入れ替わり立ち替わり皆で様子を見に来てたの。本当に良かったわ。」

3日眠ってる間に様子を見に来てたというが、入れ替わり立ち替わり暴走していたに翻訳される気がする。
使用人の皆様はどれほど精神が削られたことか。
何となく想像するだけでも面倒くさい家族というのに。主に私が関係する事に対して特に。
こんな家族に誠心誠意仕えてくれる寛大過ぎる使用人達へ、お父様に特別手当を支給してあげてとお願いしておこう・・・と、思わず遠い目になりつつ決意した。


「そうですね。目覚められて本当に本当に良かったですわ。」
お父様は怪力馬鹿だし、お母様はちょっと考えがぶっ飛んでるし、弟達も今ヤバイんじゃないだろうな?


この場に居ないセインとカイン、あの双子もとってもめんどくさいタイプなのだ。
倒れた事で心配かけた事で不安定だろうし、いつもより色々ねちねち言ってくるに違いない。
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