悪役令嬢の中身が私になった。

iBuKi

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第七十四話 騎士コースと魔術師コースの見学。

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 朝の会の開始の合図のチャイムが鳴る。
 担任は既にAクラスに来ていて、チャイムの開始と共に「朝の会を始めよう」と声をあげた。

 今日は通常の授業の日らしく、その説明がされる。
 四時間目後は昼食と休憩時間が設けられ、五時間目に二年の専門コースの授業を見学に行くとの事。
 クラスによって見学時間が異なり、Aクラスは最後のようだった。
 どれを目指したいか悩んでいるので、非常に楽しみである。

 一時間目から四時間目まで授業のたびに教科書を貰ったりして、その時間は慌ただしく過ぎた。

 昼食の時間はリシャール王子とセシル王子も一緒にとの事。
 専属のシェフが用意したお弁当を持って中庭で食べる事になった。
 私達の分まであるらしいと聞いても、それ以上にある量に男の子の食欲の凄さを感じる。
 美味しい昼食を食べたら休憩時間。
 双子王子は学園から提供されている個人的な執務室で、仕事をするとの事で去っていった。
 王子様って大変だね……。

 休憩時間中に五時間目の事が気になり、スノウとユキは何のコースに興味があるのか聞いてみたら、魔術師コースだって。
 そうだよね、転移魔法使えるって事は魔法の才能が凄いもんね。
 ユキも魔法の才能あるし。
 でもユキは魔術師より騎士の方に興味があったみたいだけど、スノウに護衛をするなら一緒のコースを受けた方がいいと言われて、それならと魔術師にするようだった。
 好きな所でいいと思うんだけど、その事を言ったら、ティナ様に私を守るって約束したんだからソレが一番したいことだって。
「私も魔術師コースが気になってるから、二人が一緒に居てくれるなら、本当は嬉しい!」と伝えると、二人も嬉しそうに微笑む。

 ……美少年の微笑みって太陽の光の中だと五割増しで眩しい。
 見慣れてるハズなのに、見慣れないように感じてドキドキするのは制服効果かもしれない。




 五限目のチャイムが鳴る。

 まず向かうのは通常の校庭の隣にある校庭の数倍広く大きな鍛錬場。
 そこでは騎士コースや魔術師コースの授業があるそうで。
 まずはそこから見学に行く事になっている。


 カン、カンカン、カンとあちらこちらで甲高い音が鳴っていた。
 模造剣とはいえ打ち合えば音が鳴る。
 練習用の小手と胴体だけを守る皮鎧を身に付け打ち合う騎士コースの方達。
 騎士を目指しているだけあって、打ち合いは本格的でその剣技に思わずぼーっと見入ってしまう。

 飛び上がって真上から垂直に斬りかかられ、それを剣でしっかりと受けて逃すように横へ剣を払う。
 距離を取り再度剣を構え直すと、そのまま相手の懐へ瞬時に距離を詰める、そのまま高速で打ち合いが始まる。
 両者一歩も退かない攻勢で息つく暇すら忘れね程だ。
 どちらかの体力が尽きるまで続いた攻防戦は、藍色の髪の生徒の勝利に終わった。
 金髪の生徒は悔しそうだ。
「くっそーーー!」と叫んだあと身体が仰向けにドサっと倒れた。
 それを笑いながら藍色の髪の生徒が金髪の生徒の手を掴み引き起こす。

 打ち合いの際の身体強化魔法は禁止されてるらしいので、それをかけないでこの動きらしい……凄い。
 そして激しく戦った後、何だか仲良しなのも良い。

 引き起こされた金髪の人が「剣で負けたんじゃない。体力で負けたんだからな!」と怒っているが、藍色の人が笑って「うんうん、そうだね。剣では互角さ。」と宥めて躱している。
 その後、金髪の人が「でも負けは負けだ。トレーニング見直さなきゃな……」と言ってた。潔い、騎士っぽい。
 もっと見ていたかったけれど、今度は魔術師コースの方へ移動するらしい。
 後ろ髪を引かれながら移動した。

 ユキが「剣って熱いよな……」と言っていた。
 今度オスカーさんに打ち合いお願いしたらいいと思う。
 あの人、剣強そうだし。だって脳筋だから。
 わりと酷い事を思ってっる自覚のないまま場所を移動するリティシア。



 魔術師コースの授業の場所に付いた。

 たくさんの的当てが設置してあり、その先に魔術師コースの生徒が立って魔法を撃っている。
「ファイヤーボール」と唱えられた魔法。
 現れた火の玉は真っすぐと的へと飛んで行く。
 中心を少しそれたものの、ファイヤーボールは的にはしっかり当たっていたのか、的が燃えた。

「ウィンドカッター」と唱えられた魔法は風の刃となり的を真っ二つにした。
「ウォータボール」と唱えられた魔法は的に当たり、的の中心に丸い穴が開いた。

 魔法を詠唱し的を壊すだけのを見ているのは、何だか作業みたいに単調に思えた。
 きっと先程の熱い打ち合いを騎士コースで見たからかもしれない。

 Aクラスの生徒達の「魔術師コースって地味?」と考えているのが分かったのか、先生が「二年の魔術師コースは開始されたばかりだからな、基礎を今してるんだよ。結界魔法だったりもっと派手な魔法だったりを習うのはもう少し先だ」と言われた。

 魔法ってスノウやユキに習えるから魔術師コース行かなくてもいい気がしてきた。

 次は錬金術コースを見て今日の見学は終わりらしい。

 外から中へと戻るぞ、と先生に言われて歩き出す。

 錬金術コースが面白そうだったら、魔術師コースは止めてそっち目指そうかなと思いながらリティシアは足を動かすのだった。
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