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第二章 皇帝はシスターコンプレックス。
戴冠式 Ⅰ
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戴冠式は大聖堂で行うのがヴァイデンライヒ帝国の古くからある慣例。
その為、皇宮から少し距離がある大聖堂で行われる戴冠式は、それなりに移動時間が掛かる。
「クラウディアが変装してこっそり参加すればいい。」
とシュヴァリエに言われたけれど…馬車を使っての距離があり、私の護衛の関係もあって、
想像していたよりも大掛かりてなってしまった。
――――私のワガママで皆に迷惑かけてる感が半端ない…っ!
と始終申し訳ない気分になりつつ馬車に揺られた。
見たいなんて気楽に言わなければ良かったなー。と、何度か思ったのはシュヴァリエには内緒だ。
戴冠式の主役は早朝から、準備で忙しい。…というのに、わざわざ月の宮まで訪れたシュヴァリエは、
クラウディアの特定され易い髪と目の色を、変化させる魔法を行使して去っていった。
ついでとばかりに、カルヴィンさんとアンナにもパパッとかけていった。
余談だが、ヴァイデンライヒ帝国には白金の髪色は滅多にいない。
魔力が多い者程、髪の色素が薄いという特徴がある。
茶色、紺色、黒など濃度が濃い者程魔力はない。
逆に、ライトグレー、ベージュ、ライトブルーなど薄まった淡い色は魔力が高めになる。
魔力が莫大になると、最上で白金、次に金色なのだ。
皇族の初代は白金色の髪を持ち、莫大な魔力で帝国を築いた。
莫大な魔力持ちだった初代のその血が脈々と受け継がれ、稀に最上の白金の子供が先祖返りで産まれる。
皇族は金色が産まれ易い。
勿論、先祖返りは滅多にいない。
滅多に産まれづらく、魔力過多で亡くなる事もあった。
その滅多に無い確率で産まれ、そしてそれすら克服して成長を遂げた。
それがシュヴァリエだった。
更に異例なのは、その妹であるクラウディアも白金だという事なのだが。
先祖返りが二人というのは、文献にすら無い。
瞳の色もパパラチアサファイア程ではなくとも、珍しい色合いの紫色だった。
その両方を変えて貰い変装の仕上げは終わった。
大聖堂で戴冠式を見守る人達の中、大聖堂関係者の列にコッソリ居る私達。
司祭に擬態したカルヴィンさんと修道女のアンナ…の傍に居る修道女見習いの私。
修道女がベールとか被れる訳じゃないみたいだし、シュヴァリエの魔法はとても助かった。
3人とも全員茶髪に茶色の目、平民に一番多い色。濃い色が多いこの場に上手く溶け込んでいる。
大聖堂を埋め尽くさんばかりの貴族達。
大聖堂の外には更に多数の民が押し寄せている。
口々に「新皇帝万歳!帝国に栄光を!」と叫ぶ声が、貴族溢れる大聖堂の中まで聞こえてきた。
――――お兄様は期待されてるんだなぁ…。でも、期待するよね、前皇帝が酷すぎたもんね…。
大聖堂の聖なる鐘の音が鳴り響き、戴冠式の始まりを告げた。
壮厳な式典が始まる。
鐘の音と共に外の民衆も静まる。
厳かなパイプオルガンの調べが流れる。
大聖堂の中央から上座である祭壇まで真っ直ぐ敷かれた赤い絨毯。
その最初の入り口にクラウディアは目をやる。
両開きの重厚感満載の重そうな扉を、聖騎士がそれぞれの把手を片方ずつ持ちタイミングを合わせて開いた。
先頭に総白髪のこれぞ教皇様って感じのイメージ通りの人が立っていた。
ゆっくりと歩を進めるお爺ちゃんを眺めていたら、
アンナが小さな声で「大教皇様です。」と教えてくれた。
やっぱり教皇様なんだね!うんうんと頷きながら見守っていたら、大教皇様が上座にある祭壇に到着した。
祭壇には6人の聖騎士と枢機卿が居るそうだ。
今、大教皇様に少し近づいて一礼した、淡いベージュっぽい長い髪の男性がそうなんだろう。
周りの聖騎士達は、胸に手を当て膝を付ける頭を下げる最上の騎士の礼をしていた。
枢機卿って教皇の助言者たる高位の聖職者って前に騎士団の話の時に説明されたけど…
聖職者っていうより、ムッキムキの軍人だよね…あの人。
筋骨隆々として枢機卿と呼ぶより将軍様の方がしっくり来る。
意外だわー…と思いつつ、アンナをチラリと見ると、アンナも頷いて小声で教えてくれる。
「先程、大教皇様に礼をしたのが、枢機卿です。」
「ムキムキ……」アンナが期待していた答えではなかったので、クラウディアが呟いた。
「聖騎士のトップですしね。聖職者というより軍人よりです。」
騎士団長みたいなモノかしら…。
ふぅん、何か血生臭い人達って聞いた気がする。それだけでも、聖職者っぽくないね。
パイプオルガンの調べはまだ続く。
そして、新皇帝になるシュヴァリエが扉前に立った。
その為、皇宮から少し距離がある大聖堂で行われる戴冠式は、それなりに移動時間が掛かる。
「クラウディアが変装してこっそり参加すればいい。」
とシュヴァリエに言われたけれど…馬車を使っての距離があり、私の護衛の関係もあって、
想像していたよりも大掛かりてなってしまった。
――――私のワガママで皆に迷惑かけてる感が半端ない…っ!
と始終申し訳ない気分になりつつ馬車に揺られた。
見たいなんて気楽に言わなければ良かったなー。と、何度か思ったのはシュヴァリエには内緒だ。
戴冠式の主役は早朝から、準備で忙しい。…というのに、わざわざ月の宮まで訪れたシュヴァリエは、
クラウディアの特定され易い髪と目の色を、変化させる魔法を行使して去っていった。
ついでとばかりに、カルヴィンさんとアンナにもパパッとかけていった。
余談だが、ヴァイデンライヒ帝国には白金の髪色は滅多にいない。
魔力が多い者程、髪の色素が薄いという特徴がある。
茶色、紺色、黒など濃度が濃い者程魔力はない。
逆に、ライトグレー、ベージュ、ライトブルーなど薄まった淡い色は魔力が高めになる。
魔力が莫大になると、最上で白金、次に金色なのだ。
皇族の初代は白金色の髪を持ち、莫大な魔力で帝国を築いた。
莫大な魔力持ちだった初代のその血が脈々と受け継がれ、稀に最上の白金の子供が先祖返りで産まれる。
皇族は金色が産まれ易い。
勿論、先祖返りは滅多にいない。
滅多に産まれづらく、魔力過多で亡くなる事もあった。
その滅多に無い確率で産まれ、そしてそれすら克服して成長を遂げた。
それがシュヴァリエだった。
更に異例なのは、その妹であるクラウディアも白金だという事なのだが。
先祖返りが二人というのは、文献にすら無い。
瞳の色もパパラチアサファイア程ではなくとも、珍しい色合いの紫色だった。
その両方を変えて貰い変装の仕上げは終わった。
大聖堂で戴冠式を見守る人達の中、大聖堂関係者の列にコッソリ居る私達。
司祭に擬態したカルヴィンさんと修道女のアンナ…の傍に居る修道女見習いの私。
修道女がベールとか被れる訳じゃないみたいだし、シュヴァリエの魔法はとても助かった。
3人とも全員茶髪に茶色の目、平民に一番多い色。濃い色が多いこの場に上手く溶け込んでいる。
大聖堂を埋め尽くさんばかりの貴族達。
大聖堂の外には更に多数の民が押し寄せている。
口々に「新皇帝万歳!帝国に栄光を!」と叫ぶ声が、貴族溢れる大聖堂の中まで聞こえてきた。
――――お兄様は期待されてるんだなぁ…。でも、期待するよね、前皇帝が酷すぎたもんね…。
大聖堂の聖なる鐘の音が鳴り響き、戴冠式の始まりを告げた。
壮厳な式典が始まる。
鐘の音と共に外の民衆も静まる。
厳かなパイプオルガンの調べが流れる。
大聖堂の中央から上座である祭壇まで真っ直ぐ敷かれた赤い絨毯。
その最初の入り口にクラウディアは目をやる。
両開きの重厚感満載の重そうな扉を、聖騎士がそれぞれの把手を片方ずつ持ちタイミングを合わせて開いた。
先頭に総白髪のこれぞ教皇様って感じのイメージ通りの人が立っていた。
ゆっくりと歩を進めるお爺ちゃんを眺めていたら、
アンナが小さな声で「大教皇様です。」と教えてくれた。
やっぱり教皇様なんだね!うんうんと頷きながら見守っていたら、大教皇様が上座にある祭壇に到着した。
祭壇には6人の聖騎士と枢機卿が居るそうだ。
今、大教皇様に少し近づいて一礼した、淡いベージュっぽい長い髪の男性がそうなんだろう。
周りの聖騎士達は、胸に手を当て膝を付ける頭を下げる最上の騎士の礼をしていた。
枢機卿って教皇の助言者たる高位の聖職者って前に騎士団の話の時に説明されたけど…
聖職者っていうより、ムッキムキの軍人だよね…あの人。
筋骨隆々として枢機卿と呼ぶより将軍様の方がしっくり来る。
意外だわー…と思いつつ、アンナをチラリと見ると、アンナも頷いて小声で教えてくれる。
「先程、大教皇様に礼をしたのが、枢機卿です。」
「ムキムキ……」アンナが期待していた答えではなかったので、クラウディアが呟いた。
「聖騎士のトップですしね。聖職者というより軍人よりです。」
騎士団長みたいなモノかしら…。
ふぅん、何か血生臭い人達って聞いた気がする。それだけでも、聖職者っぽくないね。
パイプオルガンの調べはまだ続く。
そして、新皇帝になるシュヴァリエが扉前に立った。
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