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第二章 皇帝はシスターコンプレックス。
閑話 シュヴァリエの誕生日 Ⅱ
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翌日の午後の執務の合間の休憩時間に、シュヴァリエとクラウディアはお茶を共にしていた。
美味しそうな苺が乗った、生クリームたっぷりのケーキを目の前にしてクラウディアは悩む。
――――先に苺を食べるべきか、最後まで楽しみに残すべきか…
「どうした?食べないのか?好きなケーキだろう。」
うんうんと唸り悩むクラウディアを見兼ねて、シュヴァリエが食べるように促す。
「先に苺を食べるか最後まで残すかで悩んでるのです。お兄様」
その可愛い悩みにシュヴァリエは吹き出した。
「何だその可愛い悩みは。
…そうだな、今のケーキは苺から先に食べて、2個目のケーキで最後まで残したらどうだ?」
身も蓋もないアドバイスだった。
クラウディアに甘い対応をするのはいつもの事。
クラウディアを絶世の美女にする予定の者として、甘い物の取りすぎはどうかと思うアンナは、
明日のおやつの量を減らす事を決める。
――――アンナが良くない事を決定した気がするわ…。
「それはいい考えね!」と言う前にアンナの視線がギラリとした気がしたのだった。
「お兄様、甘い物の取りすぎはよくないので…今回は、先に苺を食べるでいいですわ。
次回このケーキを食べる時は、最後に残してみます。
そして、どちらが美味しかったか検証します。」
シュヴァリエはふうんと頷き、
「では俺のを食べるか…?」
と、フォークに苺を刺して、クラウディアの口元に持ってきた。
――――えっ!いやそれは…
途端に挙動不審になるクラウディア。
「ほら、口を開けろ。」
唇をツンツンと苺で突付くシュヴァリエ。
自分の顔が熱を持ち、真っ赤になって行くのが分かる。
「クラウディア、お前も苺みたいだぞ。…ほら、口に入れてやるから。食べないのか?」
――――前も思ったけど…この人、シュヴァリエ・ヴァイデンライヒですよね…
冷酷無慈悲で…恐れられた血濡れの皇帝。
その片鱗すらなく、ただひたすら甘く優しい兄だ。
超絶イケメンに苺…イケメンで…苺…
やめやめ!
沸騰した頭を振り、自分の苺にフォークを刺す。
「お兄様、お口を開けて下さい。今日はお兄様の誕生日です。苺、お兄様も好きですよね?どうぞ。」
シュヴァリエへの口に苺を差し出し、開けるように左右に小さく振る。
「え…何で知って…。」
キョトンとした顔になったシュヴァリエの唇が緩んだ隙に、グイッと苺を押し付けると、パクリと食べてくれた。
「知ってます、お兄様の好きな物。私だってお兄様の事知りたいのですから。」
――――よし!食べたね!
「さ、お兄様のフォークこちらへ。」
と手をのばしたのを、フイっと上に躱された。
「クラウディア、口を開けろ。お兄ちゃんが食べさせてあげような。」
ニヤリと笑ってクラウディアの唇に苺を押し当てた。
パパラチアサファイアの瞳は眩い程輝いている。
――――めちゃめちゃ楽しそうだね、シュヴァリエさん…
ギュッと目を閉じてパクリと苺を食べた。
途端に柔らかな果肉と甘酸っぱい味が口に広がる。
美味しい!
頬を染め、シュヴァリエを見る。
「お兄様、苺、とっても、美味しいです!」
美味しいものはやっぱり正義!照れとか一発で吹っ飛んだわ。
「………」
反応な無いシュヴァリエを見つめ首を傾げる。
一一一一どうしたの、シュヴァリエ、やっぱり苺食べたかったの?
そのまま見つめ続けていると、シュヴァリエの白い頬が内側から、ジワリジワリと朱に染まる。
「……あ、ああ、美味しいな。苺…」
少し挙動不審なシュヴァリエ。
「あ!お兄様、これ!」
突然クラウディアが大きな声を出し、シュヴァリエに手渡した。
それは昨日頑張って、誕生日プレゼントにと刺繍を施したハンカチだ。
「なんだ……?」
渡された物に目を向け、ハッとした様に凝視した。
白地の布に銀糸で縁取られたハンカチ、そこに銀糸でイニシャルが施してある。
それはシュヴァリエのイニシャルだ。
そして、そのイニシャルの横には…小さな紫色のスミレの花。
シュヴァリエは頬だけでなく顔全体を真っ赤にした。
「こ、これを俺に…?」
クラウディアに問いかける。
「勿論です。お兄様の為に私が刺繍を施しました。」
「えっ…凄いなクラウディア。見事な刺繍だ。」
5才のクラウディアが施したとは、にわかには信じられない程に綺麗な刺繍だ。
スミレの花の刺繍を親指でなぞりながら、ハンカチを持ってない方の手でシュヴァリエは左胸を押さえた。
「………有難う、クラウディア、大事にする。」
目を細め泣きそうな顔で、シュヴァリエは微笑んだのだった。
泣きそうな程喜んで貰えた事にクラウディアは大満足。
「また何か刺繍を施して欲しいものがありましたら、仰ってくださいね。」
と、気楽な気持ちで話すのだった。
それを聞いたシュヴァリエから、
翌日以降、次々に刺繍を施して欲しい物が、続々と持ち込まれるとも思わずに。
美味しそうな苺が乗った、生クリームたっぷりのケーキを目の前にしてクラウディアは悩む。
――――先に苺を食べるべきか、最後まで楽しみに残すべきか…
「どうした?食べないのか?好きなケーキだろう。」
うんうんと唸り悩むクラウディアを見兼ねて、シュヴァリエが食べるように促す。
「先に苺を食べるか最後まで残すかで悩んでるのです。お兄様」
その可愛い悩みにシュヴァリエは吹き出した。
「何だその可愛い悩みは。
…そうだな、今のケーキは苺から先に食べて、2個目のケーキで最後まで残したらどうだ?」
身も蓋もないアドバイスだった。
クラウディアに甘い対応をするのはいつもの事。
クラウディアを絶世の美女にする予定の者として、甘い物の取りすぎはどうかと思うアンナは、
明日のおやつの量を減らす事を決める。
――――アンナが良くない事を決定した気がするわ…。
「それはいい考えね!」と言う前にアンナの視線がギラリとした気がしたのだった。
「お兄様、甘い物の取りすぎはよくないので…今回は、先に苺を食べるでいいですわ。
次回このケーキを食べる時は、最後に残してみます。
そして、どちらが美味しかったか検証します。」
シュヴァリエはふうんと頷き、
「では俺のを食べるか…?」
と、フォークに苺を刺して、クラウディアの口元に持ってきた。
――――えっ!いやそれは…
途端に挙動不審になるクラウディア。
「ほら、口を開けろ。」
唇をツンツンと苺で突付くシュヴァリエ。
自分の顔が熱を持ち、真っ赤になって行くのが分かる。
「クラウディア、お前も苺みたいだぞ。…ほら、口に入れてやるから。食べないのか?」
――――前も思ったけど…この人、シュヴァリエ・ヴァイデンライヒですよね…
冷酷無慈悲で…恐れられた血濡れの皇帝。
その片鱗すらなく、ただひたすら甘く優しい兄だ。
超絶イケメンに苺…イケメンで…苺…
やめやめ!
沸騰した頭を振り、自分の苺にフォークを刺す。
「お兄様、お口を開けて下さい。今日はお兄様の誕生日です。苺、お兄様も好きですよね?どうぞ。」
シュヴァリエへの口に苺を差し出し、開けるように左右に小さく振る。
「え…何で知って…。」
キョトンとした顔になったシュヴァリエの唇が緩んだ隙に、グイッと苺を押し付けると、パクリと食べてくれた。
「知ってます、お兄様の好きな物。私だってお兄様の事知りたいのですから。」
――――よし!食べたね!
「さ、お兄様のフォークこちらへ。」
と手をのばしたのを、フイっと上に躱された。
「クラウディア、口を開けろ。お兄ちゃんが食べさせてあげような。」
ニヤリと笑ってクラウディアの唇に苺を押し当てた。
パパラチアサファイアの瞳は眩い程輝いている。
――――めちゃめちゃ楽しそうだね、シュヴァリエさん…
ギュッと目を閉じてパクリと苺を食べた。
途端に柔らかな果肉と甘酸っぱい味が口に広がる。
美味しい!
頬を染め、シュヴァリエを見る。
「お兄様、苺、とっても、美味しいです!」
美味しいものはやっぱり正義!照れとか一発で吹っ飛んだわ。
「………」
反応な無いシュヴァリエを見つめ首を傾げる。
一一一一どうしたの、シュヴァリエ、やっぱり苺食べたかったの?
そのまま見つめ続けていると、シュヴァリエの白い頬が内側から、ジワリジワリと朱に染まる。
「……あ、ああ、美味しいな。苺…」
少し挙動不審なシュヴァリエ。
「あ!お兄様、これ!」
突然クラウディアが大きな声を出し、シュヴァリエに手渡した。
それは昨日頑張って、誕生日プレゼントにと刺繍を施したハンカチだ。
「なんだ……?」
渡された物に目を向け、ハッとした様に凝視した。
白地の布に銀糸で縁取られたハンカチ、そこに銀糸でイニシャルが施してある。
それはシュヴァリエのイニシャルだ。
そして、そのイニシャルの横には…小さな紫色のスミレの花。
シュヴァリエは頬だけでなく顔全体を真っ赤にした。
「こ、これを俺に…?」
クラウディアに問いかける。
「勿論です。お兄様の為に私が刺繍を施しました。」
「えっ…凄いなクラウディア。見事な刺繍だ。」
5才のクラウディアが施したとは、にわかには信じられない程に綺麗な刺繍だ。
スミレの花の刺繍を親指でなぞりながら、ハンカチを持ってない方の手でシュヴァリエは左胸を押さえた。
「………有難う、クラウディア、大事にする。」
目を細め泣きそうな顔で、シュヴァリエは微笑んだのだった。
泣きそうな程喜んで貰えた事にクラウディアは大満足。
「また何か刺繍を施して欲しいものがありましたら、仰ってくださいね。」
と、気楽な気持ちで話すのだった。
それを聞いたシュヴァリエから、
翌日以降、次々に刺繍を施して欲しい物が、続々と持ち込まれるとも思わずに。
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