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世話焼き侍従と訳あり王子 第二章
2-2 始まりは一粒の種
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そんなエリオットに花を育てようと提案したのは、祖父のマイルズだ。
セラピーのつもりだったのかもしれない。人を怖がってベッドからもろくにおりられない孫に一粒の種を与え、窓際に土を入れたポットを置いた。芽を出したら水をやって、ポットが狭くなってきたら鉢植えに移し、新しい種をまたポットに植える。
水と太陽の光だけでにょきにょきと伸び、それでいて近くで見つめる人間のことなど眼中にない。エリオットは物言わぬグリーンの虜になった。箱庭を思い出させる植物の生命力が、心の回復を助けたのだろう。窓辺にはどんどん鉢植えが増えていき、やがて「花壇を作ろうか」と誘われたのをきっかけに、屋敷の外に出ることができた。
「この花壇はお前の国で、お前は王だ。どんな花を植えてもいい。でもきちんと手入れをしてやらなければいけないよ。植物の召使になれる者しか、花壇の王になってはいけないからね」
マイルズはそう言って、屋敷の玄関前にあった大きな花壇をエリオットの自由にさせてくれたのだ。
自分の「国」を手に入れてから、エリオットは少しずつ世界を広げた。
広大な庭園を管理していた庭師に植物の世話を習い、使用人とも会話ができるようになった。王宮へは戻れなかったけれど、花の研究を始めて、成人を機に都心のフラットで一人暮らしをするまでになった。屋上に作った庭園は、王宮の箱庭を模した新しい国だ。
温室の隣に建てたプレハブの作業小屋へ入ると、エリオットは作業台にあった軍手をつけた。換気扇の音が響く室内はそんなに広くない。壁に作り付けた棚にはノートや書籍。この棚を机代わりに立ったまま書いたり読んだりするので、椅子は置いていない。道具箱が載った作業台、そして一段ずつにLEDランプが設置された、丈夫なラックが面積の半分ほどを占めている。自然光が入りづらい環境でも、十分な光を植物に与えることができる優れものだ。
「よいしょ……と」
一番上のラックからトレーを引き出す。
黒いポリポットが三ダースほど並び、ざらざらとした葉の上にボール状につぼみをつけた花を茂らせている。開花の時期を調整するため故意に時期をずらして種をまくから、ラックに並んだ花の成長はトレーによって違う。エリオットが引き出した中にはもう白い花弁がほころびかけている株もあるが、一番下の段はまだコウモリが羽を広げたような形の葉ばかりで茎も立ち上がっていなかった。
ここにあるものはすべてが同じ品種だ。満開になっても直径二センチほどしかない白い小さな花。これこそ、エリオットが唯一情熱を注ぐものだった。
室温、湿度、土の乾き具合から葉の裏側まで細かくチェックし、全てをノートへ記録する。
トレーに水をやるころには、気持ちは落ち着いていた。バッシュのことはしばらく様子見だ。最初にはっきり断っている以上、エリオットにできることはないし、言いつけを守れなくて衣装係に戻されたとしても知ったことではない。
セラピーのつもりだったのかもしれない。人を怖がってベッドからもろくにおりられない孫に一粒の種を与え、窓際に土を入れたポットを置いた。芽を出したら水をやって、ポットが狭くなってきたら鉢植えに移し、新しい種をまたポットに植える。
水と太陽の光だけでにょきにょきと伸び、それでいて近くで見つめる人間のことなど眼中にない。エリオットは物言わぬグリーンの虜になった。箱庭を思い出させる植物の生命力が、心の回復を助けたのだろう。窓辺にはどんどん鉢植えが増えていき、やがて「花壇を作ろうか」と誘われたのをきっかけに、屋敷の外に出ることができた。
「この花壇はお前の国で、お前は王だ。どんな花を植えてもいい。でもきちんと手入れをしてやらなければいけないよ。植物の召使になれる者しか、花壇の王になってはいけないからね」
マイルズはそう言って、屋敷の玄関前にあった大きな花壇をエリオットの自由にさせてくれたのだ。
自分の「国」を手に入れてから、エリオットは少しずつ世界を広げた。
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「よいしょ……と」
一番上のラックからトレーを引き出す。
黒いポリポットが三ダースほど並び、ざらざらとした葉の上にボール状につぼみをつけた花を茂らせている。開花の時期を調整するため故意に時期をずらして種をまくから、ラックに並んだ花の成長はトレーによって違う。エリオットが引き出した中にはもう白い花弁がほころびかけている株もあるが、一番下の段はまだコウモリが羽を広げたような形の葉ばかりで茎も立ち上がっていなかった。
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室温、湿度、土の乾き具合から葉の裏側まで細かくチェックし、全てをノートへ記録する。
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