呪われた騎士に贈られた花嫁

金剛@キット

文字の大きさ
44 / 86

43話 兄の本心

しおりを挟む


 救護所の前で火を焚き、昼間のように明るくする。

 魔力を封じ込めた魔石を使えば、もっと明るくなるのだが、あまり長持ちしないのだ。

 人の力で石に魔力を込めるのだから仕方ない。

 だから魔石を使う時は、ここぞという時だけにする。



「アイル、お前は救護所前に待機して、テントに入れない騎士の治療に当たれ!」

 フジャヌに指示され、アイルは一応うなずくが…

「お兄様は重症度ではなく、身分で治療の順番を決めたりして、治療師として恥かしく無いのですか?!」 

 どうしても納得が行かず、アイルは兄に食ってかかる。


「声を押さえろアイル! 私がそのやり方を拒めば、お前までこの場から追い出されるコトになるが、ソレで良いのか?」
 
 フジャヌはアイルの腕を掴み、冷淡に言い放つ。


「どうしてですか? お兄様も納得していないと言うコトですか?」

 兄の言葉に眉をひそめ、アイルは食い入るようにジッと見た。


「当然だ! だがここの長はニャムック叔父上だ、逆らえば治療師の職まで奪われるコトになる」

 フジャヌは声を押さえて、アイルにだけ聞こえるように話す。


「なぜ叔父様が、お兄様から職を奪うのですか?!」

「あの人は次男に生まれ、他家へ婿養子に出された人だ、オバット伯爵家を恨んでいる」

「そんな… あんなに親切にしてくれたのに」

「優しくしておけば、子供は言うコトを良く聞くと知っているからさ! 私にだってお前の治療は出来たのに、叔父の治療が良いと言い張ったのはお前だアイル」


 積もり積もった怒りと屈辱を、吐き捨てるように罵るフジャヌに、アイルは言葉を失う。

「・・・・・・」

 兄フジャヌは昔から優秀で、学園に在籍していた時から、魔獣の襲撃で父が呼ばれると、兄も一緒に襲撃の場へ治療師として参加していた。

 両親を暴漢に殺され、アイルが大怪我を負った時、父によく似た容姿の叔父に、父のように優しくされ…

 アイルは兄でなく、叔父の治療を選んだ。

『フジャヌは優秀だが、まだ未熟だからね… とても時間が掛かる治療だし、私の方が綺麗に直してやれる』

<お兄様は未熟ではなかったのに… お兄様が未熟だと、そう言い続けたのは叔父様では無かった?>

 

「私たちの両親が亡くなって、一番得をしたのは誰だ? 若い私に代わり、父が就いていた、治療師長を引き継いだのはニャムック叔父ではないか?」

「お兄様… ソレは…」

<叔父様が一番… 得をした?>


「パダム様に愛され、コレから王家に関わるコトになるのだから、お前もそろそろ、誠実さだけでは生きて行けぬことを学ぶべきだ」

「でも…」

 
「叔父の前で、余計なコトを話すな」

 フジャヌは怒りの表情を一瞬で消し、アイルを見つめる。


「…お兄様!」

 何年かぶりに兄フジャヌの本心を、アイルは聞いた。

 

「誰も信用するな」

 フジャヌはアイルの腕を放し、救護所テントへ入って行く。










しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している 【完結】

日下奈緒
恋愛
王家に仕える騎士の妹・リリアーナは、冷徹と噂される第3皇子アシュレイに密かに想いを寄せていた。戦の前夜、命を懸けた一戦を前に、彼のもとを訪ね純潔を捧げる。勝利の凱旋後も、皇子は毎夜彼女を呼び続け、やがてリリアーナは身籠る。正妃に拒まれていた皇子は離縁を決意し、すべてを捨ててリリアーナを正式な妃として迎える——これは、禁じられた愛が真実の絆へと変わる、激甘ロマンス。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

処理中です...