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44話 長い夜の始まり
しおりを挟む完全に日が暮れて、ちょうど1時(2時間)ほど過ぎた頃。
オークたちが日中潜んでいた山に、最も近い場所に配置された騎士たち。
パダムたちの隊から、各々へと連絡用の幻鳥が放たれた。
暗闇の中でも目立つ、青い光の小鳥が救護所テントの中へ、スルりと消えて行くのを見つけ、アイルもテント内へ慌てて入ると…
青い小鳥は、青い魔石を埋め込んだ金属製の皿の上で、青い文字へと変化し、フジャヌが読み上げると、文字の端からじわじわと消えて行く。
「"左翼部、オークの先発部隊と遭遇" …叔父上始まりましたぞ!」
「うむ…!」
アイルはテントの外へ出て指を組み合わせて、神に祈りを捧げる。
<神様… どうかパダム様をお守りください! たくさんの善良な騎士たちをお守りください!!>
オークとは豚の顔に鋭い牙を持つ、亜人種で身長は人と変わらず、とても野蛮で悪臭を放つほど不潔だ。
武器を使いこなし、数で圧倒し力押しを好み極めて好戦的で、亜人種というだけあり、魔獣より、人に近い戦い方をする。
遭遇の一報が放たれてから、半時ほど経った頃、次々とテントへと怪我人が運ばれ…
テント内へ入らない怪我人、つまり身分の低い騎士たちを、苦い思いを抱きながら、アイルは重症者から順番に応急処置を施してゆく。
力及ばず、目の前で死んでゆく怪我人が増え…
涙に暮れる暇も無く、何とかならないかとテント内を見るが、中も同じ状態で、アイルはただひたすら止血し、傷を清潔にし、薬を塗る作業に没頭する。
…そして、ついに恐れていたコトが起きた。
護衛騎士だけでは手が回らず、数で圧倒するオークが、救護所テントの周りを取り囲み始めたのだ。
「これはマズイな! 見捨てるワケには行かないし」
護衛騎士たちがに緊張が走る。
「3人1組で応援に出よう」
怪我人同士が支え合って、何とか救護所の近くまで来るが、オークに阻まれ、もう少しと言う所で、息絶える姿を、アイルは何度も結界の中から、目の当たりにした。
護衛の騎士たちも、全力で怪我人を援護し、救護所まで連れ帰るが、騎士の数が足りないのだ。
「がんばってお願い!! …ああっ!!」
苦痛に耐え呻く騎士のお腹に、薬を塗り布で締め付けて圧迫しながら、アイルは横目で結界の外の地獄を見る。
無視するコトは到底出来ない。
パギとベソックも、2人で飛び出して行き、怪我人を援護しながら戻り、また飛び出して行く。
「2人とも、ムチャしないで!!」
「まだ、大丈夫だよアイルお姉様! でしょう、ベソック! 次行くよ?」
「良いよパギ!!」
騎士だからと言って、全員が魔法保持者では無い。
護衛騎士の中で魔法が使えるのはパギとベソックだけで、若くとも2人の強さは他の騎士に比べると別格に見える。
剣に魔法を乗せて、2人の剣がオークに触れた瞬間、武器ごとオークの胴体が真っ2つに斬れるのだ。
貴族(特に上位貴族)に強い魔法所持者が多いコトから、ニャムック叔父のしている、身分で治療の順番を決めるという、不公平が成り立ってしまう。
怪我人2人に肩を貸しながら、双子たちが戻って来るが…
魔法を使い過ぎて、息切れ寸前だった。
「どうパギ?」
ハァッ…ハァッ…ハァッ…ハァッ…ハァッ…
「待って… もう少し!」
ハァッ…ハァッ…ハァッ…ハァッ…ハァッ…
いくら魔法で強くなっても、限界がある。
魔法という負荷を身体に掛けながら、剣を振り回して戦うわけだから、体力の消耗も早くなる。
<早く朝よ来て!! 早く朝よ来て!!>
ただひたすら、アイルは祈る。
「よし、行こうか!」
ハァッ…フウッ…ハァッ~ッ…
「…ああ!」
フウッ…フウッ…フウッ…
「2人とも、フラフラだわ!! もう少し待って! お願いだから!1」
騎士の太腿から溢れる血を、ギュウギュウ布で縛り止血中で、アイルは手が離せない。
「待てないよ!」
「ゴメン!」
勇敢で無謀な、双子のパギとベソックは、アイルの制止を振り切り飛び出して行く。
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