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46話 アイルの魔法
しおりを挟む最初が肝心で、まずは浄化で呪毒を一気に消し飛ばす。
少しでも呪毒が残っていたら、スグに傷の中から腐敗し、瘴気が発生するからだ。
綺麗に浄化出来たら、次は内部を一通り見る為に、瞳を閉じ掌から魔力を身体全体に流し、魔力の伝わり方で、損傷した場所とその重症度を読み取り、繋げる順番を決める。
パギのお腹の中の、太い血の道がいくつも途切れているから、道の端と端を活性化させ、少しづつ伸ばし、くっ付いたら、切れないように繋げる。
同時にお腹の中で溢れた血を、血の道に少しずつ戻す。
内臓の穴も同じように活性化させ、綺麗に埋めたら、砕けた骨を集めてくっ付ける。
身体を動かす筋は、太いのも細いのも全部見逃すことなく繋ぎ、回復が早くなるよう、細かな血の道もいくつか繋ぎ…
後はパギの生命力に任せる。
魔力を流すのを止めて、清らかな水色の瞳を開き、今度は自分の肉眼で確かめる。
<致命傷だったから、しばらくは安静が必要>
パギの頭の上に手をかざし…
「痛みで目が覚めないように、3日間深い眠りにつく魔法を掛けるわね、パギ」
フワリと薄い眠りの繭で、パギの頭から足先まで包むと… スグに繭は身体に吸収され消えて行く。
大きく息を吐き出し、治療を終える。
「なぜ… 私は魔法が使えるのかしら?」
ボンヤリと首を傾げるアイル。
アイルには、ニャムックに暗示を掛けられた記憶が無い。
ソレはつまり、解かれた、記憶も無いのだ。
「アイル!!」
ハッと我に返り、アイルは自分を呼んだフジャヌを見る。
「は…はい!?」
慌てて立ち上がるアイルに、フジャヌは何年振りかの、清々しい笑顔を向ける。
<あ!! …お兄様が笑ってる?!>
嘲笑ったりするのではなく、本当の笑顔だ。
「お前は外の怪我人を治療しろ! …久しぶりに魔法を使うのだから、調子に乗って、昔のように力配分を間違えて、昏倒するような醜態は、見せるなよアイル!!」
「お… お兄様! は… はい!」
ピシッと、アイルは背筋を伸ばし、返事をすると慌ててテントの外へ行く。
「おい! ソコの2人は、アイルの助手をしろ!!」
フジャヌは丁度、手の空いた2人にも命令を出す。
「え?」
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「父上… やっと本来のアイツが戻って来ましたよ」
人が生死を彷徨う、治療の場だというのに… 不謹慎にも、フジャヌは微笑まずにはいられなかった。
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