呪われた騎士に贈られた花嫁

金剛@キット

文字の大きさ
47 / 86

46話 アイルの魔法

しおりを挟む


 最初が肝心で、まずは浄化で呪毒を一気に消し飛ばす。

 少しでも呪毒が残っていたら、スグに傷の中から腐敗し、瘴気が発生するからだ。



 綺麗に浄化出来たら、次は内部を一通り見る為に、瞳を閉じ掌から魔力を身体全体に流し、魔力の伝わり方で、損傷した場所とその重症度を読み取り、繋げる順番を決める。

 パギのお腹の中の、太い血の道がいくつも途切れているから、道の端と端を活性化させ、少しづつ伸ばし、くっ付いたら、切れないように繋げる。

 同時にお腹の中で溢れた血を、血の道に少しずつ戻す。

 内臓の穴も同じように活性化させ、綺麗に埋めたら、砕けた骨を集めてくっ付ける。

 身体を動かす筋は、太いのも細いのも全部見逃すことなく繋ぎ、回復が早くなるよう、細かな血の道もいくつか繋ぎ… 

 後はパギの生命力に任せる。


 魔力を流すのを止めて、清らかな水色の瞳を開き、今度は自分の肉眼で確かめる。



 <致命傷だったから、しばらくは安静が必要>

パギの頭の上に手をかざし…


「痛みで目が覚めないように、3日間深い眠りにつく魔法を掛けるわね、パギ」

 フワリと薄い眠りの繭で、パギの頭から足先まで包むと… スグに繭は身体に吸収され消えて行く。


 大きく息を吐き出し、治療を終える。


「なぜ… 私は魔法が使えるのかしら?」

 ボンヤリと首を傾げるアイル。



 アイルには、ニャムックに暗示を掛けられた記憶が無い。

 ソレはつまり、解かれた、記憶も無いのだ。



「アイル!!」

 ハッと我に返り、アイルは自分を呼んだフジャヌを見る。


「は…はい!?」

 慌てて立ち上がるアイルに、フジャヌは何年振りかの、清々しい笑顔を向ける。

<あ!! …お兄様が笑ってる?!>

 嘲笑ったりするのではなく、本当の笑顔だ。



「お前は外の怪我人を治療しろ! …久しぶりに魔法を使うのだから、調子に乗って、昔のように力配分を間違えて、昏倒するような醜態は、見せるなよアイル!!」

「お… お兄様! は… はい!」
 
 ピシッと、アイルは背筋を伸ばし、返事をすると慌ててテントの外へ行く。


「おい! ソコの2人は、アイルの助手をしろ!!」

 フジャヌは丁度、手の空いた2人にも命令を出す。


「え?」

「で…でも、私たちは…」

 2人は床に寝かされた、ベソックの前に座り込む、ニャムックをチラリと見る。


 ニャムックを気にする助手たちに、フジャヌはイラダチが頂点に達し怒鳴り散らす。

「お前たちは外にサッサと行け!! 騎士たちを死なせたいのか、バカ者!!」

 助手たちにフジャヌは、圧力を掛ける。


「は、はい!!」

「分かりました!!」

 バタバタとアイルに続いて、助手たちも出て行く。


「叔父上も何時まで、ベソックにくっ付いて、グズグズしているのですか?! いい加減にしてください!!」
 
 容赦なくニャムックにも、フジャヌは怒鳴り散らす。


 アイルへの非道を、必ず断罪すると固く誓ったフジャヌには…

 ニャムックはもう、身内では無く、ただの犯罪者でしかなかった。



「それにしても、アイルの奴… 久しぶりだというのに、あの速さには我が目を疑うな!」


 一瞬とまでは行かないが、くしゃみを2,3回するぐらいの時間で、パギの治療を終えたのだ、
 
 豊富な魔力と、ソレを上手く調整し操る技が、常人離れしているのだ。



 ニャムックよりもフジャヌの方が治療師としてはずっと腕が良いが、そのずっと上を行くのがアイルである。


 もしかすると、亡くなった父よりも上かも知れない。


「父上… やっと本来のアイツが戻って来ましたよ」



 人が生死を彷徨う、治療の場だというのに… 不謹慎にも、フジャヌは微笑まずにはいられなかった。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している 【完結】

日下奈緒
恋愛
王家に仕える騎士の妹・リリアーナは、冷徹と噂される第3皇子アシュレイに密かに想いを寄せていた。戦の前夜、命を懸けた一戦を前に、彼のもとを訪ね純潔を捧げる。勝利の凱旋後も、皇子は毎夜彼女を呼び続け、やがてリリアーナは身籠る。正妃に拒まれていた皇子は離縁を決意し、すべてを捨ててリリアーナを正式な妃として迎える——これは、禁じられた愛が真実の絆へと変わる、激甘ロマンス。

敵将を捕虜にしたら夫になって、気づけば家族までできていました

蜂蜜あやね
恋愛
戦場で幾度も刃を交えてきた二人―― “赤い鷲”の女将軍イサナと、 “青狼”と恐れられたザンザの将軍ソウガ。 最後の戦いで、ソウガはイサナの軍に捕らえられる。 死を覚悟したその瞬間―― イサナは思わず、矢面に立っていた。 「その者は殺させない。命は……私が引き受けます」 理由などなかった。 ただ、目の前の男を失いたくなかった。 その報告を受けた皇帝エンジュは、 静かに、しかし飄々とした口調で告げる。 「庇いたいというのなら――夫として下げ渡そう」 「ただし、子を成すこと。それが条件だ」 敵国の将を“夫”として迎えるという前代未聞の処置。 拒否権はない。 こうしてソウガは、捕虜でありながら 《イサナの夫》としてアマツキ邸に下げ渡される。 武でも策でも互角に戦ってきた男が、 今は同じ屋根の下にいる。 捕虜として――そして夫として。 反発から始まった奇妙な同居生活。 だが、戦場では知り得なかった互いの素顔と静かな温度が、 じわじわと二人の距離を変えていく

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

処理中です...