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49話 黄色の聖女クニンの杖
しおりを挟む400年前に実在した伝説の聖女クニンは、当時の王太子ラウット王子と共に、巨大な魔獣ワームを倒した話は、あまりにも有名で…
その後、聖女クニンはラウット王子と結婚し、英雄王ラウットの王妃となる。
女の子にとって、胸躍るロマンスいっぱいの、活躍劇なのだ。
子供の頃から、黄色の聖女クニンのおとぎ話が、大好きだったアイルも、フジャヌが持つ杖を熱心に見つめ、興奮を隠せなくて頬を赤らめる。
「結界の外へ出ると言っても… この、聖女クニンの杖で、お兄様は何をする気ですか?」
おずおずと躊躇い、アイルは兄が持つ杖を、撫でながら尋ねる。
隣にいた、クルスイとブラットも、アイルの真似をして杖をマジマジと観察し撫で回す。
杖を興味津々で撫で回す3人を見下ろし、フジャヌは言い放つ。
「思い出してみろアイル、聖女クニンのおとぎ話の冒頭部分を!」
「おとぎ話の? ええっと… "月さえ隠す漆黒の闇を、黄色の聖女クニンは手に持つ杖を高く掲げ、真夏の真昼のように大地を照らした" …ああ! そう言うコトですか!」
アイルはパンッと、掌を打ち鳴らす。
「オークは陽光に弱い、恐らく… この杖で "真夏の真昼" のように照らせれば、近寄っては来ないだろう」
杖を使いフジャヌが、発光の魔法を使うと、おとぎ話の通り、辺り一面が明るくった。
竜輝石のおかげで魔力を込め続ける、必要もない。
単純な発光の魔法を制御する、少量の魔力と集中力があれば朝まで照らしていられる。
「…スゴイわ、お兄様!! 杖の周りに、光の結界を作るのですね? ソレなら外へ行けますわ!」
竜輝石に負けないぐらい、アイルは水色の瞳をキラキラ輝かせ、兄を尊敬の眼差しで見つめた。
試しに杖をかざし、フジャヌが結界の外へ出ると、オークたちは人間には理解できない、言語で荒々しく叫びながら、光が届く範囲からジリジリと後退って行く。
正にアイルの言う、光の結界が出来たのだ。
「よし!! この隙に、救護所テント周辺に倒れている騎士たちを、連れ帰るぞ! アイル、腕力の足りないお前は杖を持って照らせ!」
「は… はい!!」
慌ててアイルは、フジャヌから杖を受け取る。
オークが退いた後には、騎士たちが、何人も倒れていた。
「お兄様!!」
「ああ…」
陰鬱な表情でフジャヌが1人ずつ確認するが、ほとんどが息絶えていた。
何十人も倒れていて、生きていたのは2人ダケだった。
その2人も瀕死の状態で、救護所まで動かすのは危険だと判断し、その場で治療してから、救護所テントへ運んだ。
再び結界の中へ戻り、アイルは外を眺める。
「遺体は… どうするのですか?」
答えは分かっていたが、アイルはフジャヌに、尋ねずにはいられなかった。
「気の毒だが、朝までこのままにするしかない… オークは死んだ人間は連れて行かないからな」
「・・・・・・」
オークが人間を襲う理由は、オークを使役する、人間を食べる巨人族 "オーガ" の食料を確保する為だ。
"新鮮な食事" を好む "オーガ" の為に、人間は生きたまま連れ去られる。
だが、騎士たちは武器と魔法を駆使し、激しく抵抗をする為に、知能の低いオークたちは、抵抗する騎士たちに応戦し、ウッカリ殺してしまうのだ。
「やはり… 怪我人が自力で救護所へ来られないなら、我々が前線に移動した方が良さそうだな!」
フジャヌは最初にオークと遭遇した、左翼方面を睨んだ。
「はい!」
アイルもフジャヌと同じ方向を見る。
「クルスイ、ブラット… お間たちはどうする?」
2人は、救護所テントに居れば安全だ。
騎士ではない治療師の2人に、フジャヌたちがしようとしている、危険を伴う行動に付き合えとは、命令出来ない。
「お供します!!」
2人も迷わず同意したので、急遽4人で前線へと移動するコトに決めた。
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