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11話 誘惑するもう一つの理由2
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「まったく、よりによって子種の提供者に、義兄のジェレンチ公爵を選ぶなんて… 父上もどうかしている! 私たちの夫婦仲を壊す気か?!」
「・・・・・・」
<子種…>
アディは黙りこんでしまった。
長兄ブラッソと義姉トルセール(女性オメガ)は、意外にも恋愛結婚で結ばれていた。
義姉トルセールは、エントラーダ伯爵家よりもはるかに家格が高い、ジェレンチ公爵家出身で、そのうえ持参金もたっぷりと多く…
父は反対するどころか、この縁組を大喜びで受け入れ、長兄と義姉の結婚を許可した。
長兄と義姉の夫婦仲は非常に良く…
義姉とジェレンチ公爵デスチーノとの兄妹の仲も良い。
愛する妻の機嫌を損ねはしないかと、長兄が心配するのも仕方の無いことだった。
「いや、違うか… 子種の父親を選んだのは、お前自身だったなアデレッソス、お前が我儘を言い張ったせいで、こんなに面倒なことになって…」
長兄は忌々しいとアディを睨み付けた。
「・・・・・・」
<結婚前の思い出をデスチーノと作りたい気持ちは… 僕の本心だけど…>
憧れの人、ジェレンチ公爵デスチーノを、アディが誘惑した理由はもう一つあった。
最初に誘惑しろとアディに命令したのは、父のエントラーダ伯爵である。
元婚約者、コスタ侯爵家の長男ヴィードロと、アディが正式に結婚していれば…
エントラーダ伯爵家は、手広く事業を営んでいるコスタ侯爵家と共に共同事業を立ち上げるはずだった。
だが、ヴィードロの裏切りで婚約解消となり、醜聞まみれのアディだけが残り…
困り果てたエントラーダ伯爵は、次にコンプラ―ル男爵に目を付け、アディを手土産に共同事業の話を持ちかけた。
その条件が、"アディにアルファを産ませる"ことだった。
若い頃のケガが原因で、子種が無いコンプラ―ル男爵は、養子では満足出来ず… 男のプライドを満たすために、自分の名を持つ子を、妻に産ませたかったのだ。
「…だってお長兄様、よりによって僕を捨てたヴィードロに子種を貰えと言われたのですよ?! そんなのとても受け入れられません!」
『ヴィードロならば私が説得すれば、快く引き受けてくれるはずだ』
侯爵家の直系である元婚約者ヴィードロは、強いアルファの血を持っていて… 次兄が自分の親友だから説得が可能だと、言い出したのだ。
「どうせヴィードロに何度かその身を許したのだから、もう一度ぐらい我慢すれば良かったのだ!」
イライラと長兄に説教をされ、アディの顔が青ざめて行く。
「そんな…」
「いつも子供のように、夢ばかり見ているから、ヴィードロにも飽きられて捨てられたのだ! お前はもっと現実を見ろ!」
「ですがお長兄様…」
「良いか、これでお前が失敗して、コンプラ―ル男爵との共同事業の話が流れれば、いよいよエントラーダ伯爵家は借金で家屋敷や領地全てを売り払わなければならなくなるのだ」
前エントラーダ伯爵が、ギャンブル狂だったために… アディの父が爵位と領地を継ぐ時、共に多額の借金まで背負うことになったのだ。
「分かっています…」
「その綺麗なレースのシャツもお前は着られなくなるのだぞ?!」
「分かっています…」
「大人になれ、アデレッソス!」
「・・・・・っ」
「・・・・・・」
<子種…>
アディは黙りこんでしまった。
長兄ブラッソと義姉トルセール(女性オメガ)は、意外にも恋愛結婚で結ばれていた。
義姉トルセールは、エントラーダ伯爵家よりもはるかに家格が高い、ジェレンチ公爵家出身で、そのうえ持参金もたっぷりと多く…
父は反対するどころか、この縁組を大喜びで受け入れ、長兄と義姉の結婚を許可した。
長兄と義姉の夫婦仲は非常に良く…
義姉とジェレンチ公爵デスチーノとの兄妹の仲も良い。
愛する妻の機嫌を損ねはしないかと、長兄が心配するのも仕方の無いことだった。
「いや、違うか… 子種の父親を選んだのは、お前自身だったなアデレッソス、お前が我儘を言い張ったせいで、こんなに面倒なことになって…」
長兄は忌々しいとアディを睨み付けた。
「・・・・・・」
<結婚前の思い出をデスチーノと作りたい気持ちは… 僕の本心だけど…>
憧れの人、ジェレンチ公爵デスチーノを、アディが誘惑した理由はもう一つあった。
最初に誘惑しろとアディに命令したのは、父のエントラーダ伯爵である。
元婚約者、コスタ侯爵家の長男ヴィードロと、アディが正式に結婚していれば…
エントラーダ伯爵家は、手広く事業を営んでいるコスタ侯爵家と共に共同事業を立ち上げるはずだった。
だが、ヴィードロの裏切りで婚約解消となり、醜聞まみれのアディだけが残り…
困り果てたエントラーダ伯爵は、次にコンプラ―ル男爵に目を付け、アディを手土産に共同事業の話を持ちかけた。
その条件が、"アディにアルファを産ませる"ことだった。
若い頃のケガが原因で、子種が無いコンプラ―ル男爵は、養子では満足出来ず… 男のプライドを満たすために、自分の名を持つ子を、妻に産ませたかったのだ。
「…だってお長兄様、よりによって僕を捨てたヴィードロに子種を貰えと言われたのですよ?! そんなのとても受け入れられません!」
『ヴィードロならば私が説得すれば、快く引き受けてくれるはずだ』
侯爵家の直系である元婚約者ヴィードロは、強いアルファの血を持っていて… 次兄が自分の親友だから説得が可能だと、言い出したのだ。
「どうせヴィードロに何度かその身を許したのだから、もう一度ぐらい我慢すれば良かったのだ!」
イライラと長兄に説教をされ、アディの顔が青ざめて行く。
「そんな…」
「いつも子供のように、夢ばかり見ているから、ヴィードロにも飽きられて捨てられたのだ! お前はもっと現実を見ろ!」
「ですがお長兄様…」
「良いか、これでお前が失敗して、コンプラ―ル男爵との共同事業の話が流れれば、いよいよエントラーダ伯爵家は借金で家屋敷や領地全てを売り払わなければならなくなるのだ」
前エントラーダ伯爵が、ギャンブル狂だったために… アディの父が爵位と領地を継ぐ時、共に多額の借金まで背負うことになったのだ。
「分かっています…」
「その綺麗なレースのシャツもお前は着られなくなるのだぞ?!」
「分かっています…」
「大人になれ、アデレッソス!」
「・・・・・っ」
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