王太子の秘密儀式~父王にはめられた⁉

金剛@キット

文字の大きさ
10 / 22

9話 昼も夜も無く アニマシオンside

しおりを挟む
 秘密の扉を通って、地下にある秘儀ひぎの間へ入ってから、どれだけ時間が過ぎたのか…? アニマシオンは時間の感覚がにぶくなっていた。 


「・・・・・・」
 ああ… 長い時間、窓の無い部屋にいるせいか… どうしても、息苦しさを感じてしまう… こんな環境の中で、カジェはよく平気でいられるな?

 食事を食べ終わり、石壁にきざまれた、照明や暖房用の簡単な魔法陣を、見つめていたアニマシオンは、視線を移し… 食べ残した料理を、丁寧に1つの皿にまとめるカジェを見た。
(普段の食事は、一日一回しか地上から転移されないため、残りは大切に保存している) 

 何年も地下で暮らすカジェは、アニマシオンが感じている、不快な息苦しさは感じていないように見えた。 


「カジェ、君はいつからこの地下で、暮らしているんだ?」

「え? はい… 僕が大賢者ピントゥラ様の未来視さきみの魔法で、継承者に選ばれて、この地下に呼ばれたのが、9歳になったばかりの頃でした」

 カジェはアニマシオンより2歳年下だが、オメガなら結婚して嫁入りしても良い年齢だった。

「9歳だって?! 10年ちかい月日をこの地下で過ごして来たのか?!」

「はい」

「嫌にならないか? ずっとこんな場所で暮らすのは?」
 きっとカジェだって、嫌に決まっているだろうけれど… あまりにも平気そうな顔をしているから、聞かずにはいられない。

 アニマシオンは、眉間にしわを寄せて、カジェにたずねた。


「確かに始めの頃は、とても辛かったけれど… 僕は元々孤児なので、ピントゥラ様が親代わりとなって、育ててくれましたし、食べ物や住むところにも困らないだけでも、幸せだと思っています… それに殿下の賢者に選ばれ、大切な役目をあたえられただけでも、とても光栄なことなので…」

 ニコニコと嬉しそうに語るカジェに、アニマシオンは複雑な気分になる。

「う~ん… そうか…」
 なるほど…! カジェは子供の頃はもっと、劣悪れつあくな環境で暮らしていたから、このような風通しの悪い地下でも、楽園のように感じているのかもしれないな? うう~ん…

 思わずアニマシオンはうなった。 


「それに殿下、ここは確かに地下ですが… 地上の様子を、いつでも見ることが出来るのですよ?」

「地上の様子を見る?!」

「はい! 広間の方に、それができる魔法文字が刻まれています… 殿下も地上の様子を、ご覧になられますか?」

「ああ、見せてくれ!」



 カジェと一緒に広間(秘儀の間)に戻ると…
 扉のわきの石壁に刻まれた、ベルの音を騒がしく鳴らした魔法陣の近くにある、ずらりと並んだ魔法文字の一行にカジェが触れる。

 カジェは魔法文字に、魔法を発動させるために、桃色の魔力を流す。

 ずらりと並んだ魔法文字が、順番に桃色に輝き、フッ… と広間全体が明るくなった。

 アニマシオンは壁の魔法文字から、明るくなった広間へと視線を移して、驚愕きょうがくする。

 いつの間にか自分たちが、王宮の中庭にいたからだ。


「これは… 転移魔法か?!」

「ふふふっ… いいえ、殿下! 床に触れて確かめて下さい」
 カジェは得意げに、アニマシオンに指示を出す。

「床だと?!」
 カジェは何を言っているんだ?!

 自分の足元の、綺麗に土をならされた中庭の歩道をながめながら、アニマシオンは言われた通り、身体をかがめて地面に触れる。

 昼間の陽光に温められた、土の感触がするに決まっていると思っていたら… アニマシオンの手のひらに感じたのは、ヒヤリと冷たい石床の感触だった。



「この魔法は転移魔法ではなく、映写えいしゃ魔法です!」






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】三度目の正直ってあると思う?

エウラ
BL
俺には今の俺になる前の記憶が二つある。 どういう訳かその二つとも18歳で死んでる。そして死に方もほぼ同じ。 もう俺、呪われてんじゃね? ---という、過去世の悲惨な記憶のせいで引きこもりがちな主人公の話。 三度目は長生き出来るのか? 過去の記憶のせいで人生を諦めている主人公が溺愛される話です。 1話1話が長いですが、3話で終わる予定です。 R18には*がつきます。 3話の予定でしたが番外編的な1話を足しました。これで完結です。

届かない「ただいま」

AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。 「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。 これは「優しさが奪った日常」の物語。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。

月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」 幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。 「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」 何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。 「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」 そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。 僕、殿下に嫌われちゃったの? 実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。

冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている

春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」 王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。 冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、 なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。 誰に対しても一切の温情を見せないその男が、 唯一リクにだけは、優しく微笑む―― その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。 孤児の少年が踏み入れたのは、 権謀術数渦巻く宰相の世界と、 その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。 これは、孤独なふたりが出会い、 やがて世界を変えていく、 静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

幸せな復讐

志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。 明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。 だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。 でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。 君に捨てられた僕の恋の行方は…… それぞれの新生活を意識して書きました。 よろしくお願いします。 fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

処理中です...