9 / 22
8話 大賢者の弟子 カジェside
しおりを挟む若く旺盛な食欲を満たすために、目の前にある大量の食事を2人でとりながら… カジェはアニマシオンの質問に答えた。
「未来視とは、何がどのように… 見えるのだ?」
「未来視の魔法は、万能ではありません… ですから国の未来という、大規模で漠然としたものは見れないのです… 依頼者個人が体験するであろう、近い未来という程度の範囲のことしか、見ることが出来ません」
だからこそ、他の誰でもなく… 王国の王が体験する未来を見ることで、王国に関連する未来を、より多く大賢者は予見することが出来るのだ。
大賢者が国王の“番”となり、王国ではなく… 国王ただ1人に忠誠を誓う理由が、ここにある。
「依頼者個人… つまり私の未来についてのみ、カジェは見ることが出来ると言うのだな?」
「はい、殿下! 未来視の魔法には僕の魔力だけでは不十分で、ええっとぉ… 依頼者である、殿下と僕の… 魔力を混ぜ合わせて… 融合させないと、上手く魔法が発動しないのです… 例えば、僕自身が僕の未来視をするのなら、僕の魔力だけでも未来視の発動条件は満たされますが…」
そして殿下の魔力と、僕の魔力を融合させるには、性行為が必要不可欠で… 未来視をするなら、殿下は毎回、僕と性交をしなくてはいけなくて…
どうしよう?! 本当にいろいろな意味で、殿下には僕を好きになってもらわないと、困るんだけど……
うう~ん… 今、そのことを殿下に伝えた方が、良いのかなぁ?!
でも、でもっ! 何か急に、恥ずかしくなって来たよぉ~?! それに… 未来を知りたければ、僕といっぱい、性交をしなければいけないのを知って、殿下が嫌がったらどうしよう?!
食べるそぶりも無く、皿の上のパンを弄ぶように、細かくちぎりながら… カジェはポッポッポッポッ… と頬をピンクに染めたり、急に青くなったりする。
「・・・・・・」
不作法に頬杖をつき、大粒のブドウを口の中に放り込みながら、アニマシオンは、動揺するカジェの様子をじっ… と見つめた。
カジェの口から『魔力の融合』という言葉を聞き、前夜の儀式の内容を照らし合わせて、聡明なアニマシオンは未来視の魔法に、性行為が必要なのだと自力で覚る。
「それで、あの… ですから僕は… “番”となった殿下の専属賢者となるのですが… それで未来視の魔法にはですねぇ………?」
どうしよう! 恥かしくて、やっぱり言えない! でも、すぐにわかることだし… でも、殿下に嫌な顔されたら、どうしよう?!
「なるほどなぁ~… ふむふむ… 面白い! それで私は、媚薬入りの薬酒を、父上に盛られたのか?! …まったく! はっはっはっはっは!」
何がおかしいのか、カジェには理解できなかったが、からからと明るい声を上げて、アニマシオンは笑った。
機嫌良く笑うアニマシオンの笑顔につられて、カジェは苦笑いを浮かべる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
77
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる