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5話 ゴロゴロ カレー。
しおりを挟む「美味!! 暖かいだし巻き卵を、実家以外で食ったの初めてだ!!」
ビールのつまみに、英俊は感動したようだ。
「意外と簡単だから作り方教えようか? オレが作るなんて言ったから、却って食べるのが遅くなってゴメンね?」
台所で鍋をかき混ぜながら、明穂は苦笑いを浮かべる。
結局スーパーまで、買い出しに行くことになり、時間がかかってしまった。
「大きな具がゴロゴロ入った、カレーが食べられるのなら、待てるさ!」
瞳を少年のように英俊はキラキラさせる。
「もう少し… 待…」
背後から明穂は長い腕で細い腰を抱かれ…
明穂の肩に甘えるように顎を乗せ、英俊は鍋の中を一緒に見る。
「・・・っ!!」
「昔… オレと薫が勉強している間に、こうやってカレー作ってくれたよな?」
小さくてスベスベな明穂の頬に、髭が少し伸びた英俊の、チクチクした顎が当たり…
顔を真赤に染めた明穂は、ドキドキと心臓を跳ねさせながら、心の中で絶叫する。
<最高、ぎゃああああああああ――――――っ!!!!!>
「母… 母さんは仕事で… 遅かったし… 姉ちゃんが作った方が、美味しかったけどね」
声が微妙に震わせ、明穂は緊張した。
「オレはさぁ、小学生が夕食作る姿に感動してさ… ソレもオレの分まで用意してあるし」
英俊と密着し恍惚とする明穂。
<…英さん!!! 僕も熱烈に感動しているよ!! 股間が猛り狂って、イケナイ蜜でヌルヌルだけどね!!>
明日の朝の分まで食べきった、英俊の胃袋に、驚きながらも嬉しかった。
「5皿分がペロリだ! ペロリ!! スゴイねぇ…」
空っぽの鍋を、明穂は目を丸くして見つめた。
「カレーは最強のパワーフードだから、無くなるのは当然だよな」
満足そうに腹を撫でながら、笑う英俊。
照明を消し、英俊のベッドの下に布団を敷いて、転がる明穂は、眠る前にポツポツと話しかけた。
「姉ちゃんのコト… ゴメンね… 浮気してデキちゃった婚なんて、最低だよね」
ずっと言いたかったコトを、明穂は口にする。
「彼女は高卒で、シビアに生きる社会人… オレは気楽な学生で… そのギャップがどうしても、埋められなかったのさ」
「ソレでも僕はさぁ… 英さんと結婚して欲しかった」
明穂の声が、寂しそうになってしまうのは仕方がない、本当に寂しかったのだから。
「…後、10年はオレ自身の地固めで精一杯だから、結婚で誰かの人生を背負う責任は、持てないよ」
「・・・ああ」
「薫はずっと、高校の時から結婚したがって居ただろう?」
「うん…」
<なんだ… そうだったのか… 元々ダメだったのか…>
明穂はほんの少しだけ泣きたくなった。
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